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第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第008話 イストラ・スコエ料理長
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第5章第008話 イストラ・スコエ料理長
・Side:ツキシマ・レイコ
ユルガルム領に到着して。貴族と護衛の人達は領城の屋敷に、その他の方々も付属の寮社に案内されました。私は護衛枠です。よね?
さて。各自部屋を割り当てていただきましたので、私はまず料理長の方に会いに行きます。
エイゼルからけっこういろんなもの持ってきましたからね。夕飯にはまだ時間がありますので、いろいろ説明しに行きましょう。ハンマ親方、アイリさんとタロウさんも手伝ってくださいな。…エカテリンさんも、美味しいものの予感がしたのか付いてきましたね。
前に来たときには、ビザとかコロッケとかいろいろフットワークが軽い料理長でしたから。今回もこれらを物にしてくれるでしょう。
マーリアちゃんは、レッドさんを連れてリビングのベビーベットで寝ているシュバール様を見ています。バール君やセレブロさんも一緒。
「レイコ様! ユルガルムへ再度ようこそですな。醤油の方、届いておりますぞ! よくぞあれを送って下さったっ! 素晴らしい調味料ですなっ!あれは!」
ちなみに、料理長のお名前はイストラ・スコエさん。三十代後半のけっこうマッチョなおじ様です。テンション高いマッチョです。…エイゼル市でも思いましたけど、料理する人は結構筋肉付けますよね? カヤンさんとか料理騎士さんとか。
「食べる時のソースとしてだけではなく。焼くときに塗れば堪らない香ばしい香り。スープの隠し味としても侮れない。魚と相性が良いとは書かれていましたが、肉に野菜と使える範囲が凄く広いですな。万能すぎて、逆に全部醤油味にしてしまいそうですわ。はははは。」
全部醤油味、外国の人が日本の料理食べるときによく指摘するところですよね。逆に言えば、日本人は醤油味がすればなんでもOKという風潮がありますが。
持ち込んだパスタと挽肉の押し出し機を説明します。
…ハンバーグとミートソースパスタを作りますかね。一番わかりやすいですし。
適度に切り刻んだお肉でまずは挽肉。できるだけ冷やしておくのが焼いたときに美味しい挽肉のコツであります。
「なるほど。こりゃ柔らかい肉になるわな。冷やしておくのは、脂身が流れ出さないようにと言うことですな?」
「正解です。氷があれば良いんですけどね」
冷蔵庫。冷却の原理は分りますが… 最初はフロンよりアンモニアか。でも、順路が密閉されたポンプなんてどうやって作ったもんか…。硝石や塩を使った冷却もありますが、一時的な物ですしね。
挽肉作りながら、挽肉についての懸念も説明しておきました。例の低品質な肉を使うって話です。
「…なるほど。挽肉の中の肉の種類が分らなくなるのは、確かに問題ですな。大量に作る機械、ミンサーといいましたか。一般には簡単に卸せない機械ってのには同感ですな。この押し出し機を各家庭に普及させて、食べる人が使うのが理想でしょうな」
ミートソースと、焼く直前のハンバーグの種が出来たなら、次にパスタ作りです。
小麦粉と卵と適量の塩と水で捏ねたタネを、押し出し機でお湯が沸騰している鍋の上でグニ~っと。
「ふんぬっ!」
イストラ料理長が使うと、握力測定な雰囲気ですね。うん、良いガタイには訳がある、いい感じでパスタが出来ました。
ここにはクリームと卵もありますので、カルボナーラも作りましょう。
まぁここまでは簡単にできるレシピですね。
ついでにと言ってはなんですが。醤油の使い方として、平行して肉じゃがと照り焼きも試作してみました。
エイゼル市と根菜がちょっと違うので、そのへんはイストラ料理長にアドバイス貰いながら。ユルガルムの芋は煮崩れしやすいんですよね。
出汁は、厨房で用意されているものを使いました。こちらの世界の大抵の厨房では、その土地の物産を使ったスープ…というより出汁が用意されています。その土地その店その家の味です。うん、肉、魚、野菜の旨みのバランスが良いですね。とくに魚成分が良いです。これで煮ただけでも美味しくなりそうなくらいですね。
照り焼きは、醤油、お酒、砂糖のブレンドでタレを作って。ソテーしたお魚に仕上げにフライパンの上で絡めます。白身系のあっさりした魚に合っていますね。
では。夕食にはまだ早いですが、厨房の人達で試食を兼ねた賄い飯です。
「なるほど。ミートソースも、チーズとバターのコクを丁度良く盛り込むのがコツですな。さらにトマトの旨み…これはピザと同じ原理の味ですな?」
チーズとトマトの旨みは、相乗効果があります。イタリア人は偉いです。
ちなみにトマトと翻訳されていますけど。うーん、赤くて小さめのナス?って感じです。
「ハンバーグ、これもうまいですね。これにもトマトソースとチーズが合うのでは?」
「肉汁がこぼれないように野菜を敷いたパンで挟むってのはどうだ?」
お弟子さんの一人が提案してきます。…うーん、やっぱ美味しいものは収束しますね。まさに進化の収斂です。
あっと、ぜひピクルスも入れてください。私、あれ好きなんですよ。あるかな?キュウリの酢漬け。
「"にくじゃが"か。スープの一種だなこれは。派手さは無いが、醤油とスープが根菜に染みて、ホッとする味だな」
「照り焼きも良いですね。この醤油ってのは、肉とか魚という以前に脂と合うのかな? ボアや鳥の肉でもやってみたいですね」
あ。唐揚げ作るの忘れてた。レシピだけ伝えておきましょう。
あとはいろいろ研究していただくとして、厨房からは退散してきました。今食べ過ぎると、夕食が入らなくなりますからね。
などと思ってたら。なんと夕食にはロールキャベツが出てきましたよ。え?もうここまでアレンジしたんですか? 肉じゃがとハンバーグを見ていて思いついたとか。
肉の塊だと煮込んでも食べにくいけど、肉を小さく切ったら食べ応えが無い。そこで挽肉だったら柔らかくて食べやすいし、出汁も出るし、スープの具としても見栄えも良し。でもそのまま煮ると挽肉は崩れやすいよな? だったら葉物で包んでみるか …というのが着想点だそうです。
トマトスープやクリームシチューに入れても美味しそうですね。良い仕事しています、イストラ料理長!。
うーん。こういうスープの具なら、ワンタン的なものもアリですし。ワンタンが出来るのなら餃子もありでしょう。餃子はもうファルリード亭で作っていますので。明日にでもお教えしましょう。
到着した次の日は、皆が休憩日とされましたなりました。
相変わらず、マーリアちゃんはシュバール様に夢中です。なんかもう、母性本能鷲づかみされたようですね。オムツ交換とか湯浴みとかまでさせて貰っていますよ。
…休憩日のはずですが、私は今日とて朝食後から厨房に呼ばれていろいろレシピの改良にいろいろ付き合わされました。
うーん。イストラ料理長がいろいろ工夫してメニューを洗練してくれますので、ジャンクフードとはなりませんが。わかりやすく人気が出るメニューばかりになってしまいましたね。アイリさんがまた太ったと騒がないか心配です。
私は、和風の煮物とか葉物野菜のおひたしなんかも好きだったので。魚の煮付けと野菜のおひたしなんかも作ってみました。
出汁の関係でちょっと洋風ですが。
あとあれですね。豚の角煮。丁度良いボアの塊が厨房にあったので、少々拝借しました。煮るのにちょっと時間がかかりますけど、脂はほとんど煮出しちゃうので、見た目ほど脂は多くないんですよ?
一通り出来たところで、ちょっと遅いお昼も兼ねて実食です。
…エカテリンさんにアイリさんとタロウさんも、いつのまにか来ています。
厨房組が作ったのは、シーフードを使ったパスタとかグラタンですね。特に、貝類を使ったグラタンは絶品です。
あと。押し出し機を使っていろんな肉を挽肉にしていました。
「違う肉を混ぜて肉質を変える! 考えたことも無かったな。鳥や魚を混ぜたさっぱり味のハンバーグ、これも面白い。…若い奴らが多いと、どうしても重い料理が多くなるからな。揚げ物が続くとわしも辛い」
カロリー気になるお年頃の方々にも良いですよ。
「煮つけ、いいなこれ。魚は煮るとすぐ崩れるから、スープの具に使うときには割り切ってたけど。煮崩さないように綺麗に煮ると、これは一品の料理になるな」
「ボアの脂身を食うって発想はなかったな。見た目くどそうだけど、口の中でとろける…これは癖になりそうですね…」
「おひたしっての。添え物としていいんじゃないですかね。なんかホッとする味です」
あら。地味かな?と思ったけど、思ったより好評ですね。
「ふむ… なるほどなるほど…。若い者ってよりは、脂がキツくなった年頃の方々向け…って感じだな。なるほど、醤油には派手さは求めるもんじゃないんだな…滋味を地味に飽きさせず…なるほど」
イストラ料理長が、それぞれ摘まみながらの総評です。
「お歳を召した方々ってより、これはもう酒飲み向けじゃないんですか? ほら、料理長が魚の方に合うって酒、私物でキープしていたじゃないですか」
「…味見は料理人の義務だな。おい、ちょっと酒蔵から一本出してこい。…一本だけだぞ」
「「「やったーっ!!」」」
これにはエカテリンさんもにっこりです。
「角煮って、悪魔の食べ物に見えるわね。…これらも奉納かしら?」
「いや。醤油は既に押さえてあるから。普通に醤油の使い方として広めてしまえばいいんじゃないか?」
アイリさんとタロウさんが相談していますが。醤油が売れる方向でのレシピ公開は正解だと思います。
にしても…これだけの料理を目の前にして、いかんせん米が無いのが、私には辛いのです。
さて。お酒も来てちょっと一杯…と言うところで。厨房に入ってきたメイドさんが、一枚の伝言をイストラ料理長に渡しました。
「あの…リビングに居られる御館様からこれを…」
目を通したイストラ料理長が、あちゃーという顔をします。
「"お前たちだけズルいぞ"…だそうだ」
辺境候と伯爵らが寛いでいるリビングは、応接室などより厨房に近いのです。匂いが届いちゃってましたかね?
厨房の人達が慌て、既に作られたものを小鉢に一品ずつ盛り。
お? イストラ料理長が指示をだし、刺身みたいに切った魚の切り身を串を通して、醤油塗って焼いて…最後にチーズを乗せてもう一炙りとな? イカも焼きますか?。切り身ってところが時短ですね。しかも食べやすい。
これらをトレイに並べれば、なかなか豪華かなおつまみ膳の完成! さすが貴族の館で料理長やっているだけのことはあります。
それを人数分、さらにお酒ももう一本用意。メイドさんがワゴンで運んでいきました。
「…改めて。ワシらもいただこうか」
「「…はい」」
なんかちょっと疲れた返事をする厨房組でした。
明るい内からの酌ってのも、贅沢な話ですが。鳥や魚を使った挽肉料理…今夜にでも活躍しそうです。
・Side:ツキシマ・レイコ
ユルガルム領に到着して。貴族と護衛の人達は領城の屋敷に、その他の方々も付属の寮社に案内されました。私は護衛枠です。よね?
さて。各自部屋を割り当てていただきましたので、私はまず料理長の方に会いに行きます。
エイゼルからけっこういろんなもの持ってきましたからね。夕飯にはまだ時間がありますので、いろいろ説明しに行きましょう。ハンマ親方、アイリさんとタロウさんも手伝ってくださいな。…エカテリンさんも、美味しいものの予感がしたのか付いてきましたね。
前に来たときには、ビザとかコロッケとかいろいろフットワークが軽い料理長でしたから。今回もこれらを物にしてくれるでしょう。
マーリアちゃんは、レッドさんを連れてリビングのベビーベットで寝ているシュバール様を見ています。バール君やセレブロさんも一緒。
「レイコ様! ユルガルムへ再度ようこそですな。醤油の方、届いておりますぞ! よくぞあれを送って下さったっ! 素晴らしい調味料ですなっ!あれは!」
ちなみに、料理長のお名前はイストラ・スコエさん。三十代後半のけっこうマッチョなおじ様です。テンション高いマッチョです。…エイゼル市でも思いましたけど、料理する人は結構筋肉付けますよね? カヤンさんとか料理騎士さんとか。
「食べる時のソースとしてだけではなく。焼くときに塗れば堪らない香ばしい香り。スープの隠し味としても侮れない。魚と相性が良いとは書かれていましたが、肉に野菜と使える範囲が凄く広いですな。万能すぎて、逆に全部醤油味にしてしまいそうですわ。はははは。」
全部醤油味、外国の人が日本の料理食べるときによく指摘するところですよね。逆に言えば、日本人は醤油味がすればなんでもOKという風潮がありますが。
持ち込んだパスタと挽肉の押し出し機を説明します。
…ハンバーグとミートソースパスタを作りますかね。一番わかりやすいですし。
適度に切り刻んだお肉でまずは挽肉。できるだけ冷やしておくのが焼いたときに美味しい挽肉のコツであります。
「なるほど。こりゃ柔らかい肉になるわな。冷やしておくのは、脂身が流れ出さないようにと言うことですな?」
「正解です。氷があれば良いんですけどね」
冷蔵庫。冷却の原理は分りますが… 最初はフロンよりアンモニアか。でも、順路が密閉されたポンプなんてどうやって作ったもんか…。硝石や塩を使った冷却もありますが、一時的な物ですしね。
挽肉作りながら、挽肉についての懸念も説明しておきました。例の低品質な肉を使うって話です。
「…なるほど。挽肉の中の肉の種類が分らなくなるのは、確かに問題ですな。大量に作る機械、ミンサーといいましたか。一般には簡単に卸せない機械ってのには同感ですな。この押し出し機を各家庭に普及させて、食べる人が使うのが理想でしょうな」
ミートソースと、焼く直前のハンバーグの種が出来たなら、次にパスタ作りです。
小麦粉と卵と適量の塩と水で捏ねたタネを、押し出し機でお湯が沸騰している鍋の上でグニ~っと。
「ふんぬっ!」
イストラ料理長が使うと、握力測定な雰囲気ですね。うん、良いガタイには訳がある、いい感じでパスタが出来ました。
ここにはクリームと卵もありますので、カルボナーラも作りましょう。
まぁここまでは簡単にできるレシピですね。
ついでにと言ってはなんですが。醤油の使い方として、平行して肉じゃがと照り焼きも試作してみました。
エイゼル市と根菜がちょっと違うので、そのへんはイストラ料理長にアドバイス貰いながら。ユルガルムの芋は煮崩れしやすいんですよね。
出汁は、厨房で用意されているものを使いました。こちらの世界の大抵の厨房では、その土地の物産を使ったスープ…というより出汁が用意されています。その土地その店その家の味です。うん、肉、魚、野菜の旨みのバランスが良いですね。とくに魚成分が良いです。これで煮ただけでも美味しくなりそうなくらいですね。
照り焼きは、醤油、お酒、砂糖のブレンドでタレを作って。ソテーしたお魚に仕上げにフライパンの上で絡めます。白身系のあっさりした魚に合っていますね。
では。夕食にはまだ早いですが、厨房の人達で試食を兼ねた賄い飯です。
「なるほど。ミートソースも、チーズとバターのコクを丁度良く盛り込むのがコツですな。さらにトマトの旨み…これはピザと同じ原理の味ですな?」
チーズとトマトの旨みは、相乗効果があります。イタリア人は偉いです。
ちなみにトマトと翻訳されていますけど。うーん、赤くて小さめのナス?って感じです。
「ハンバーグ、これもうまいですね。これにもトマトソースとチーズが合うのでは?」
「肉汁がこぼれないように野菜を敷いたパンで挟むってのはどうだ?」
お弟子さんの一人が提案してきます。…うーん、やっぱ美味しいものは収束しますね。まさに進化の収斂です。
あっと、ぜひピクルスも入れてください。私、あれ好きなんですよ。あるかな?キュウリの酢漬け。
「"にくじゃが"か。スープの一種だなこれは。派手さは無いが、醤油とスープが根菜に染みて、ホッとする味だな」
「照り焼きも良いですね。この醤油ってのは、肉とか魚という以前に脂と合うのかな? ボアや鳥の肉でもやってみたいですね」
あ。唐揚げ作るの忘れてた。レシピだけ伝えておきましょう。
あとはいろいろ研究していただくとして、厨房からは退散してきました。今食べ過ぎると、夕食が入らなくなりますからね。
などと思ってたら。なんと夕食にはロールキャベツが出てきましたよ。え?もうここまでアレンジしたんですか? 肉じゃがとハンバーグを見ていて思いついたとか。
肉の塊だと煮込んでも食べにくいけど、肉を小さく切ったら食べ応えが無い。そこで挽肉だったら柔らかくて食べやすいし、出汁も出るし、スープの具としても見栄えも良し。でもそのまま煮ると挽肉は崩れやすいよな? だったら葉物で包んでみるか …というのが着想点だそうです。
トマトスープやクリームシチューに入れても美味しそうですね。良い仕事しています、イストラ料理長!。
うーん。こういうスープの具なら、ワンタン的なものもアリですし。ワンタンが出来るのなら餃子もありでしょう。餃子はもうファルリード亭で作っていますので。明日にでもお教えしましょう。
到着した次の日は、皆が休憩日とされましたなりました。
相変わらず、マーリアちゃんはシュバール様に夢中です。なんかもう、母性本能鷲づかみされたようですね。オムツ交換とか湯浴みとかまでさせて貰っていますよ。
…休憩日のはずですが、私は今日とて朝食後から厨房に呼ばれていろいろレシピの改良にいろいろ付き合わされました。
うーん。イストラ料理長がいろいろ工夫してメニューを洗練してくれますので、ジャンクフードとはなりませんが。わかりやすく人気が出るメニューばかりになってしまいましたね。アイリさんがまた太ったと騒がないか心配です。
私は、和風の煮物とか葉物野菜のおひたしなんかも好きだったので。魚の煮付けと野菜のおひたしなんかも作ってみました。
出汁の関係でちょっと洋風ですが。
あとあれですね。豚の角煮。丁度良いボアの塊が厨房にあったので、少々拝借しました。煮るのにちょっと時間がかかりますけど、脂はほとんど煮出しちゃうので、見た目ほど脂は多くないんですよ?
一通り出来たところで、ちょっと遅いお昼も兼ねて実食です。
…エカテリンさんにアイリさんとタロウさんも、いつのまにか来ています。
厨房組が作ったのは、シーフードを使ったパスタとかグラタンですね。特に、貝類を使ったグラタンは絶品です。
あと。押し出し機を使っていろんな肉を挽肉にしていました。
「違う肉を混ぜて肉質を変える! 考えたことも無かったな。鳥や魚を混ぜたさっぱり味のハンバーグ、これも面白い。…若い奴らが多いと、どうしても重い料理が多くなるからな。揚げ物が続くとわしも辛い」
カロリー気になるお年頃の方々にも良いですよ。
「煮つけ、いいなこれ。魚は煮るとすぐ崩れるから、スープの具に使うときには割り切ってたけど。煮崩さないように綺麗に煮ると、これは一品の料理になるな」
「ボアの脂身を食うって発想はなかったな。見た目くどそうだけど、口の中でとろける…これは癖になりそうですね…」
「おひたしっての。添え物としていいんじゃないですかね。なんかホッとする味です」
あら。地味かな?と思ったけど、思ったより好評ですね。
「ふむ… なるほどなるほど…。若い者ってよりは、脂がキツくなった年頃の方々向け…って感じだな。なるほど、醤油には派手さは求めるもんじゃないんだな…滋味を地味に飽きさせず…なるほど」
イストラ料理長が、それぞれ摘まみながらの総評です。
「お歳を召した方々ってより、これはもう酒飲み向けじゃないんですか? ほら、料理長が魚の方に合うって酒、私物でキープしていたじゃないですか」
「…味見は料理人の義務だな。おい、ちょっと酒蔵から一本出してこい。…一本だけだぞ」
「「「やったーっ!!」」」
これにはエカテリンさんもにっこりです。
「角煮って、悪魔の食べ物に見えるわね。…これらも奉納かしら?」
「いや。醤油は既に押さえてあるから。普通に醤油の使い方として広めてしまえばいいんじゃないか?」
アイリさんとタロウさんが相談していますが。醤油が売れる方向でのレシピ公開は正解だと思います。
にしても…これだけの料理を目の前にして、いかんせん米が無いのが、私には辛いのです。
さて。お酒も来てちょっと一杯…と言うところで。厨房に入ってきたメイドさんが、一枚の伝言をイストラ料理長に渡しました。
「あの…リビングに居られる御館様からこれを…」
目を通したイストラ料理長が、あちゃーという顔をします。
「"お前たちだけズルいぞ"…だそうだ」
辺境候と伯爵らが寛いでいるリビングは、応接室などより厨房に近いのです。匂いが届いちゃってましたかね?
厨房の人達が慌て、既に作られたものを小鉢に一品ずつ盛り。
お? イストラ料理長が指示をだし、刺身みたいに切った魚の切り身を串を通して、醤油塗って焼いて…最後にチーズを乗せてもう一炙りとな? イカも焼きますか?。切り身ってところが時短ですね。しかも食べやすい。
これらをトレイに並べれば、なかなか豪華かなおつまみ膳の完成! さすが貴族の館で料理長やっているだけのことはあります。
それを人数分、さらにお酒ももう一本用意。メイドさんがワゴンで運んでいきました。
「…改めて。ワシらもいただこうか」
「「…はい」」
なんかちょっと疲れた返事をする厨房組でした。
明るい内からの酌ってのも、贅沢な話ですが。鳥や魚を使った挽肉料理…今夜にでも活躍しそうです。
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