上 下
27 / 334
第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第025話 魔獣です。フラグ回収です

しおりを挟む
第1章第025話 魔獣です。フラグ回収です

・Side:ツキシマ・レイコ

 「レッドさんが警告出してます!前の方に警告を!」

 この馬車の御者は、タロウさんがやってます。すぐさま、警笛を長く吹き、馬車を停止させました。
 あとで聞いたけど。吹き方で停止と全速力とかの支持が出せるんだそうです。

 近くを馬に乗って並走していた騎士が近づいてきます。

 「何事だ?」

 昼食休憩が済んで再出発。馬車の御者席でまったりしていると、肩のレッドさんがそわそわし出した。
 マナの濃い動物が五頭ほど左前方から急接近のイメージ。そのうち一体はけっこうでかい。

 「レッドさんが、左前方から五頭ほどなにか急接近しているって言ってます」

 「小竜様が?」

 その騎士は、指摘された方向に目を凝らすが、立ち木と茂みが多くて遠くまでは見渡せない。
 本当か?という表情をする。まぁドラゴンではあるけど、サイズは愛玩動物ですからね。

 「ともかく。前方に伝令してくる」

 可能性があるのなら、疑うよりはまず警戒。正解ですね。
 キャラバンは、先ほど警笛で停止してます。騎士が馬に早足をさせて前の方に向かう。
 ただ、それでもちょっとのんびりしすぎだ。警笛が鳴らされたのに、臨戦態勢になっているのは護衛隊の人だけ。護衛騎士の人達はふらふらしている。

 そのとき、前方の茂みから茶色い固まりが飛び出してきた。

 「うわーっ!」「ボアだっ!」

 見た目はイノシシの亜種って感じの生き物が、茂みから飛び出してきた。ものすごい速度で突っ込んでくる。あ、一頭が馬を下りていた騎士に突っ込んで、騎士が吹っ飛んだ。

 四頭のイノシシが、キャラバンの左舷を護衛隊と騎士達をかき回すように走り回る。護衛騎士達はほとんど対応できていない。
 そこに、茂みから最後の一頭が飛び出してきた!。

 それもイノシシの格好はしているが。大きさが全然違う。体が大きくなるなんてもんじゃない。動物園でサイを見たことあるけど、それくらいの大きさ。サイはでかいぞ、まじでライトバンか?というくらいある。当然中身が詰まっているのだから、体重何トンあるの?というレベルだ。

 そのまま速度を殺さずにキャラバンに横から突っ込んでくる。狙いは…アイズン伯爵の馬車?
 その色か形が、他の馬車より華奢そうに見えたのか。最初にぶっ飛ばす獲物として見定めたようだ。

 私は、慌てて御者の席から飛び降りたが、瞬間に冷静になる。
 赤井さんところでの訓練時、一番やっかいなのが地面とのグリップだった。いくらパワーがあっても、摩擦が足りずに、俊敏に動けないのだ。
 今からアイズン伯爵の馬車に向かって走り出しても、間に合わない!

 ふと。視界の隅に岩が見えた。数メートルのところに岩がある。形からして、地面に埋まっている部分も大きそうだ。まずその岩にダッシュして、その岩の横に"乗り"、思いっきりジャンプする、横方向に! 全身全力でクラウチングスタートだ!。

 しかし。思ったより埋まっていなかったのか、岩が後ろに飛んだ。そのせいで想定より速度が出なかった。地面の上を低空飛行する感じで、接地する瞬間に手足を使って地面を蹴ってできるだけさらに加速する。間に合って!
 …目測だが、魔獣が伯爵の馬車まで十メートルを切ったところでなんとか魔獣の前にたどり着きそうだ。体をくるっと反転させて、馬車の前で地面を両足で思いっきり蹴ることで、ブレーキと方向転換を試みる。
 ところが、地面を蹴ったはいいが、今度は片足が斜めにめり込んだ! 地面柔らかすぎ!

 魔獣には、突然前に現れた私が見えているようだが、脚が地面にめり込んだまま体勢を整えようとしているそこに、そのまま突っ込んできた!私は無視して踏み潰すつもりのようだ。
 しかし私は、魔獣の頭が上を通過するその瞬間に、掌底を掲げて全力で体を上に伸ばす!

 ボグンッ

 動画投稿サイトで、通行禁止のために打たれた杭に、自動車が高速で突っ込んで宙を舞うという…動画を見たことがあるが。まさにあんな感じ。思いっきり私に"ひかかった"魔獣は、宙をひっくり返りながら舞って伯爵の馬車を飛び越した。
 魔獣が馬車にぶつかることは無かったが。…衝撃で飛ばされた杭よろしく、私の方が馬車に突っ込んでしまった。

 馬車のドアに穴を開けて上半身突っ込んでいる私。びっくりした顔で見下ろしているアイズン伯爵とジャック会頭。

 「…怪我は無いですか?」

 「お前こそ大丈夫なのかっ?!」

 幸い、着ている物は無事だった。さすが赤井さん謹製。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...