19 / 334
第1章 エイゼル領の伯爵
第1章第017話 メニューの追加です
しおりを挟む
第1章第017話 メニューの追加です
・Side:ツキシマ・レイコ
全部の馬と、食事の準備などに使う水を合わせて、結局5往復ほどした。
結構綺麗な川だけどそこは用心して、飲む分に関しては一度湧かしたものが用意されているそうだ。このレベルの衛生の知識はあるのね。
水を汲んでいる最中に気がついたけど。鮎だか鮭みたいな魚の影がある。鱗の輝く感じから、鯉には見えないな。結構大きいですぞ。
「川魚を取ったりはしないんですか?結構大きいのがいましたけど」
エカテリンさんに聞いてみた。
「時間ができたら釣りをしている奴もいるけど。数匹釣れたところで皆に行き渡らないからねぇ」
たしかに。全員の食事に出すのなら、そこそこの数は必要かな? 試してみましょう。
川辺で靴と靴下を脱いで、浅いところを進む。エカテリンさんが付いてこようとしたけど、水面から離れて待ってもらった。
頭を出している岩にひょいっと飛び移ってから両手を水に浸し、ビッと電気を流してみた。せいぜい数百ボルトくらいで、手の近くしか効果無いかな?と思ったけど。岩陰に隠れていた魚が何匹が浮いてきた。
気絶したそれらを、流されないうちに水くみの桶に入れた。最初の一発で3匹ほど取れた。
いくつかの岩に飛び移りつつ、同じ事を繰り返して、大小二十匹くらいがとれた。
「マナ術で麻痺させるってのは聞いたことがあるけど。それみたいなもんかい?」
「同じかどうかは知らないけど。多分似たようなものじゃないかな?」
両手の人差し指の間で、パチパチとスパークさせてみた。
「ああ、たぶん麻痺系のマナ術と同じだな…そんなに強い光のは見たこと無いけど。上手い奴はな、殴った瞬間とか、剣で組み合った瞬間に、その技をちょこっと使うんだよ。大して威力は無いけど、相手の隙を作るには十分って感じでな。私も鍛錬でやられたことあるけど、うおってなった瞬間に追撃入れられるからな、それ」
感電とか失神とか、そこまでできる人はほとんどいないとのこと。やっぱ私が規格外ってとこなんでしょうね。
採ってきた鮭っぽい魚は、料理担当の人に喜ばれた。大きい方からさっそく腑を取って三枚に下ろしていた。
「今夜は豪華に一品増えるな」
料理担当の人も騎士である。料理は本来持ち回り当番なのだそうだが。隊の中に料理が得意な者がいる場合、他の作業を免除して料理に専念してもらうんだそうな。食事は美味しい方が皆が幸せだからね。
下ろした方の魚はソテーのような料理にするようです。
小さい魚は、開いて塩を振って串に刺しておく。そもそも川魚は保存が効くものでも無いので、そのまま今夜の不寝番の夜食にするそうです。
騎士隊長のダンテさんと料理番の騎士の間では、赤竜神の巫女様に何をお出しして良いのか…ということで一悶着ありました。とは言っても、野営の場でそうそう特別な料理など出せるものでも無く。
そこは、私が皆と一緒のものを食べてみたいと要望したことにして、治めて貰いました。
「満腹かアレルギーでも無ければ、出された物は黙って喰えってお母さんが言ってた。おもてなしにケチ付けちゃだめだって」
「アレルギー?」
料理騎士さんが聞く。
「人によって、ある食べ物が体に合わないことがあるんです。それをアレルギーって言います」
「あまり聞いたことないが…古いものを食べたらお腹壊すのとは違うのか?」
「それとは別ですね。普通は毒にならないものが、人によって毒になるってことですから。酷いのになると、麦が毒になるなんて話もあります」
「麦が毒なんて、どうやって生きていけば…って。ああ、そういうことか」
料理騎士さんが発言の途中で納得していた。
そこまでのアレルギーだと、麦が主食の世界では生き残ることもままならないはず。周知されること自体がないのだ。
地球では、そういう体質でも生き残れる。だから、そういう体質が人類に溜まっていく。
突然変異と自然淘汰は進化の原動力だが、自然淘汰が働かなくなった人類は生物としては劣化していく…ってお父さんが言ってたな…
「食わず嫌いは損している。一度は口にしておけ。ってのも、お父さんが言ってました」
まずいと思っている物をわざわざ出すところはないのだから。もしかしたら美味しいものかもしれないものを食べ逃すのは勿体ないと、父は何でも食べていた。私も好き嫌いは無いほうだ。
そもそも、特別扱いされると居心地が悪いと感じる、心は小市民だから。皆と同じ物を戴きたいですと、正直に告げました。
野営地の真ん中に薪を焚いたが。煮炊き自体は簡易な調理場でやっていた。マナを使った可搬式コンロみたいなものがこの世界にはあるらしい。
焚木は、灯りと暖を取るためだそうで。さらになにか香草のようなものを燻していた。これの煙が虫除けになるんだそうな。
荷馬車にかけてあった板と、折りたたんでしまってあった木足を組み立てて、簡易テーブルを組んで。私は、ジャックさんや隊長さんたちと同じ卓にて席に着くきます。
芋、野菜、保存肉のスープとパン、そして川魚のソテーが並びます。他の人たちも、トレーとカップに同じメニューをもち、岩やら丸太やらに腰かけて食べ始めた。
西の空はまだ赤いが、天頂はすでに夜の色。焚木からの火の粉が、煙と共に上っていき、瞬き始めた星に混ざっていく。
夜の帳が降りつつある宿営地で、和やかな感じで食事は進んでいった。
ソースが面白い味かな? 見た目は茶色で、味もウスターソースよりのお好み焼きソースって感じ。お肉に合う味ですね。港ソースって言うんですか。
レッドさんの分は、私と同じ物をお願いしました。もちろん、量は減らしているけどね。ただ、私たちはフォークとスプーンで食べるのですが、この子には無理なので。パンに挟んでミニサンドイッチにしてもらいました。
器用に掴んで、喜んで食べています。アイリさんもエカテリンさんも、それをニコニコして見ています。ほんとこの子は行儀が良い。猫食いもしないし、起用に食べますね。
「ク~」
「うん。美味しいね」
料理騎士の人が、軽くガッツポーズしていました。
・Side:ツキシマ・レイコ
全部の馬と、食事の準備などに使う水を合わせて、結局5往復ほどした。
結構綺麗な川だけどそこは用心して、飲む分に関しては一度湧かしたものが用意されているそうだ。このレベルの衛生の知識はあるのね。
水を汲んでいる最中に気がついたけど。鮎だか鮭みたいな魚の影がある。鱗の輝く感じから、鯉には見えないな。結構大きいですぞ。
「川魚を取ったりはしないんですか?結構大きいのがいましたけど」
エカテリンさんに聞いてみた。
「時間ができたら釣りをしている奴もいるけど。数匹釣れたところで皆に行き渡らないからねぇ」
たしかに。全員の食事に出すのなら、そこそこの数は必要かな? 試してみましょう。
川辺で靴と靴下を脱いで、浅いところを進む。エカテリンさんが付いてこようとしたけど、水面から離れて待ってもらった。
頭を出している岩にひょいっと飛び移ってから両手を水に浸し、ビッと電気を流してみた。せいぜい数百ボルトくらいで、手の近くしか効果無いかな?と思ったけど。岩陰に隠れていた魚が何匹が浮いてきた。
気絶したそれらを、流されないうちに水くみの桶に入れた。最初の一発で3匹ほど取れた。
いくつかの岩に飛び移りつつ、同じ事を繰り返して、大小二十匹くらいがとれた。
「マナ術で麻痺させるってのは聞いたことがあるけど。それみたいなもんかい?」
「同じかどうかは知らないけど。多分似たようなものじゃないかな?」
両手の人差し指の間で、パチパチとスパークさせてみた。
「ああ、たぶん麻痺系のマナ術と同じだな…そんなに強い光のは見たこと無いけど。上手い奴はな、殴った瞬間とか、剣で組み合った瞬間に、その技をちょこっと使うんだよ。大して威力は無いけど、相手の隙を作るには十分って感じでな。私も鍛錬でやられたことあるけど、うおってなった瞬間に追撃入れられるからな、それ」
感電とか失神とか、そこまでできる人はほとんどいないとのこと。やっぱ私が規格外ってとこなんでしょうね。
採ってきた鮭っぽい魚は、料理担当の人に喜ばれた。大きい方からさっそく腑を取って三枚に下ろしていた。
「今夜は豪華に一品増えるな」
料理担当の人も騎士である。料理は本来持ち回り当番なのだそうだが。隊の中に料理が得意な者がいる場合、他の作業を免除して料理に専念してもらうんだそうな。食事は美味しい方が皆が幸せだからね。
下ろした方の魚はソテーのような料理にするようです。
小さい魚は、開いて塩を振って串に刺しておく。そもそも川魚は保存が効くものでも無いので、そのまま今夜の不寝番の夜食にするそうです。
騎士隊長のダンテさんと料理番の騎士の間では、赤竜神の巫女様に何をお出しして良いのか…ということで一悶着ありました。とは言っても、野営の場でそうそう特別な料理など出せるものでも無く。
そこは、私が皆と一緒のものを食べてみたいと要望したことにして、治めて貰いました。
「満腹かアレルギーでも無ければ、出された物は黙って喰えってお母さんが言ってた。おもてなしにケチ付けちゃだめだって」
「アレルギー?」
料理騎士さんが聞く。
「人によって、ある食べ物が体に合わないことがあるんです。それをアレルギーって言います」
「あまり聞いたことないが…古いものを食べたらお腹壊すのとは違うのか?」
「それとは別ですね。普通は毒にならないものが、人によって毒になるってことですから。酷いのになると、麦が毒になるなんて話もあります」
「麦が毒なんて、どうやって生きていけば…って。ああ、そういうことか」
料理騎士さんが発言の途中で納得していた。
そこまでのアレルギーだと、麦が主食の世界では生き残ることもままならないはず。周知されること自体がないのだ。
地球では、そういう体質でも生き残れる。だから、そういう体質が人類に溜まっていく。
突然変異と自然淘汰は進化の原動力だが、自然淘汰が働かなくなった人類は生物としては劣化していく…ってお父さんが言ってたな…
「食わず嫌いは損している。一度は口にしておけ。ってのも、お父さんが言ってました」
まずいと思っている物をわざわざ出すところはないのだから。もしかしたら美味しいものかもしれないものを食べ逃すのは勿体ないと、父は何でも食べていた。私も好き嫌いは無いほうだ。
そもそも、特別扱いされると居心地が悪いと感じる、心は小市民だから。皆と同じ物を戴きたいですと、正直に告げました。
野営地の真ん中に薪を焚いたが。煮炊き自体は簡易な調理場でやっていた。マナを使った可搬式コンロみたいなものがこの世界にはあるらしい。
焚木は、灯りと暖を取るためだそうで。さらになにか香草のようなものを燻していた。これの煙が虫除けになるんだそうな。
荷馬車にかけてあった板と、折りたたんでしまってあった木足を組み立てて、簡易テーブルを組んで。私は、ジャックさんや隊長さんたちと同じ卓にて席に着くきます。
芋、野菜、保存肉のスープとパン、そして川魚のソテーが並びます。他の人たちも、トレーとカップに同じメニューをもち、岩やら丸太やらに腰かけて食べ始めた。
西の空はまだ赤いが、天頂はすでに夜の色。焚木からの火の粉が、煙と共に上っていき、瞬き始めた星に混ざっていく。
夜の帳が降りつつある宿営地で、和やかな感じで食事は進んでいった。
ソースが面白い味かな? 見た目は茶色で、味もウスターソースよりのお好み焼きソースって感じ。お肉に合う味ですね。港ソースって言うんですか。
レッドさんの分は、私と同じ物をお願いしました。もちろん、量は減らしているけどね。ただ、私たちはフォークとスプーンで食べるのですが、この子には無理なので。パンに挟んでミニサンドイッチにしてもらいました。
器用に掴んで、喜んで食べています。アイリさんもエカテリンさんも、それをニコニコして見ています。ほんとこの子は行儀が良い。猫食いもしないし、起用に食べますね。
「ク~」
「うん。美味しいね」
料理騎士の人が、軽くガッツポーズしていました。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
私のスローライフはどこに消えた?? 神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!
魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。
なんか旅のお供が増え・・・。
一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。
どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。
R県R市のR大学病院の個室
ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。
ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声
私:[苦しい・・・息が出来ない・・・]
息子A「おふくろ頑張れ・・・」
息子B「おばあちゃん・・・」
息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」
孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」
ピーーーーー
医師「午後14時23分ご臨終です。」
私:[これでやっと楽になれる・・・。]
私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!!
なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、
なぜか攫われて・・・
色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり
事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!!
R15は保険です。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる