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閑話 〜教皇の夢〜
しおりを挟む~教皇の夢~
私は幼い頃から『魔法』というものに大いなる憧れを持っていた。
代々由緒正しき家柄の我が家には、たくさんの書物があり私はその中の『魔法の歴史』という本が大好きで宝物であった。
その昔、賢者はその魔法で身体の欠損までを治し、そして『転移』をし『魔王』を倒し大地の形まで変えたという。
大人たちはこんなものはお伽噺だというけれど、私は信じていた。確かに現在は、聖女でも骨折治療が出来れば良い方であるし、魔法も単体の魔物を退治する時に使う火風雷土……などだ。
転移をしたり魔王を倒したり大地の形を変えるなんて、夢物語でしかない。
諦めきれない私はもしもそのような『魔法使い』が現れたら真っ先に会うことが出来るようにと、最高権力者である『教皇』の座にのぼり詰めた。
……本当は、私自身がそのような魔法を使いたかったのだが、それは叶わなかったので。
そんな私ももう齢70。教皇となってから早20年が経とうとしている。
ここまでくると、流石にそのような『魔法使い』など居ないのだろうと諦めの日々だった。
……そんなある日。
「……む。今日のマダムミーシャの占いは……、なに! 百年に一度の幸運日!? 『運命的な出逢いがある』とな!?」
私は早速側近を呼び、今日は休むと宣言したのだが……アッサリと却下された。泣く泣く執務室で山の様に積まれた書類仕事をしていると……。
……それは…………『その方』は、淡い光と共に現れた。
私は目を見張った。その神々しい姿に、その輝かしい程の魔力に。……知らず、手が震えた。
コレは……コレは、何度も擦り切れる程読んだあの宝物の本に書かれていた『転移』!?
そして、教皇である私の人生の転機は訪れた。
私はこの時から、その素晴らしい魔法に驚きつつ、あの時神の如くに私の前に出現された『魔法使い』セリ様を我が子のように可愛がる事になる。
私は今初めて本当に子や孫を可愛がる世の父親達の気持ちが分かったのだと思う。おそらくこれは神の代理人となって久しい私への神からの褒美なのであろう。
そして、マダムミーシャの占いは当たったのである……。
教皇、謁見の間にて……
「これは珍しい東の国のお菓子……! セリ様、喜ぶかのう?」
近頃は美味しそうな食べ物、特に甘い食べ物を渡すととても嬉しそうな様子の教皇に、人々は『どうやら教皇様は甘いものがお好きらしい』と噂するようになっていた。
そして最近は教皇への捧げ物は甘い物を中心とした美味しそうな食べ物が多くなった。
それから美味しい物や珍しい物をゲットした教皇からのセリへの連絡は益々増え、せっせと可愛い孫娘(仮)への餌付けは続くのだった……。
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