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11 魔王の正体

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 大切な幼馴染で仲間であるレオンに喧嘩を売られ平常心でいられない時に凶悪なヒュドラ。ヒュドラは複数チームのAランク冒険者か騎士団でないと退治は難しい。例え勇者のパーティーでもヒュドラ相手にしかもそんな最悪な2人の状況では厳しかっただろう。……2人?


「ライナー。その喧嘩した時は2人きりだったの? 近くに仲間は居なかったの?」

 そんな時に、どうして仲間は近くに居なかったのだろう?

「……ああ。聖女マリアは近くの教会に用事があるとかでもう1人の仲間を護衛代わりにして行ってたから。多分マリアがいない時を狙ってレオンも俺にあんな話をしてきたんだろうけど……」

「……そう、なんだ……。他に仲間が側にいればまた少し違ったのかもね。それでパーティーは解散になったんだね。その後聖女マリアはどうしたの?」

 恋人だった勇者レオンが死んで、その理由が自分を取り合っての喧嘩の最中魔物に襲われただなんて、結構ショックだったんじゃないだろうか?

「マリアは教会に戻り、そのあとすぐに現れた新たな『勇者』のパーティーに入ったと聞いた。あれから5年も経つがまだ魔王の所にたどり着けないでこんな所にいるんだな……」

「それでライナーに誘いをかけてくるって事は、また勇者のパーティーは上手くいっていないのかな?」

「そういう事になるよな。……だけど、そんな上手くいっていないパーティーに前回の勇者のメンバーなんか入れたら、余計にこじれるとしか思えねーんだが。アイツはとことんそういうとこが分かってねーよな。何よりチームワークが大事だってのに」

 そう。確かに今の4人で冒険者をしているとチームワークの大切さをとても感じる。互いを知り思い合い、状況を見て最善の行動を取れているからだ。

「そうだよね。私も今の4人でいるとチームワークの大切さを感じるよ。……ねえ。それで『聖女』の魔法ってどういうものなの? 聖魔法でどのくらいの治療が出来るの?」

「ん? ああ、その点はアイツはやっぱり『聖女』なんだよな。手をかざし魔法を唱えると骨折や酷い傷が嘘みたいに治って……」

 ……やはりこの国々の教会の聖女の力では、もしもレオンやライナーの喧嘩の時にその場にいたとしても治せなかったかもしれない。そうセリは落胆してつい言った。

「ライナー。……私は1年前に前世を思い出すまで『レーベン王国』で生まれ育ったの。あの国は普段他国と関わりを持たない……というか自分達の魔法が凄すぎるから相手にしてないっていうのが正しいんだけど、とにかくあの国の高位の『治療魔法』使いは……、身体の欠損まで治せるの。だから、その場にその『聖女』がいてもレオンは助からなかったのよね……」


「へっ!?」


 ライナーが言葉を失った……。



「あ、勿論私も出来ないわよ? 初めに言ったでしょう、「治療魔法の力は弱い」って。だけどレーベン王国では普通の魔法使いでも骨折くらいは治せるわ。……私は特に力が弱かったの」


「ああ、そういえば最初そんな事言ってたよな……。てか、レーベン王国凄すぎるだろ!? あの国のヤツが勇者やった方がいいんじゃねーのか?」

 レーベン王国では独自の宗教を持っている。世界のその他の国々はほぼ全て同じ宗教。『勇者』を決定する世界の教会はレーベン王国の人間を選ぶ事はない。

 そしてセリはふと気付いた。

「……ねえ。そもそも魔王ってどこにいるの? 教会に勇者が選ばれて旅立つっていうけれど、近隣の魔物退治をするだけで永遠に勇者が旅をし続けているみたいに思えるんだけど」

「……いや、大昔には勇者が魔王を倒したと教会に記録が残ってるそうだ。その後に魔王は復活したんだと。そこからは住処を替える魔王の、手先の魔物を退治していってるだけの状況だからなんとか魔王の所へ辿り着かないとって……。勇者の選定や魔王の情報管理は教会がしてるから、俺たちの時は聖女マリアからその情報を聞いていたんだが……」

「ふーん……。レーベン王国では聞いた事なかったなぁ。エレナだった時も、お話としては『勇者』や『魔王』の存在を知っていたけど一般人には殆ど関わりがなかったよね? 魔物がたくさん出る地域に勇者達が来てくれたって話は実際に聞いた事あったけど、およそ魔王と戦うって現実離れしてるよね。というか『魔王』っていうならそれこそ世界一の魔法の国と自負するレーベン王国を狙ってくるのが普通じゃない? まあ1年前に魔物が溢れた件はまた違うだろうけど。今まで魔王はどの国を襲ったの?」


 どの国を? ……ライナーは考え込んだ。

「いや……。直接どこを襲ったとかは聞いた事がない。魔王はどこからか世界各地の魔物達を操り世界を混沌に落とそうとしている、としか聞いていなかった。……それで教会は勇者を送り、その為の寄付を各国に求めて……」

 そこまで言ってライナーはハッとしたようにセリを見た。

「……まあ、『勇者』が各地の魔物退治をしてくれるのは皆有り難いと思ってると思う。けど、『魔王』云々は多分……」

「……そう、だよな。教会の権威と寄付集めの為、って事だよな。……確かにレオンが勇者に選ばれた時もその少し前に近くの教会でその力を認められたんだ。そして前勇者が死んだら『勇者』だって発表されたんだった。各地の教会でそれらしい強者の候補を挙げておいて、前勇者が死ねばその中から新たな勇者を選んでいくだけだった、ってことか……」

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