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「ふわぁーっ」

 セリが伸びをして目を覚ました。

 ……ああ。そうだ。昨日はライナーと……あの3人組と仲間になったんだ。そして飲み会をして……。そのまま寝ちゃったのか。

 むくり。
 セリは起き上がり、肩までかけてくれてあった毛布を感謝を込めて丁寧に畳む。

 キッチンに行くと、3人は朝御飯の支度をしてくれていた。急いで少し手伝い皆で食卓を囲む。
 ……何故かライナーとアレンが何やら恥ずかしげにしていたのが気になった。寝起きすぐに顔を合わすのが、恥ずかしいのかな?


「さあさあ! 今日はダリル姉さんがこの街のオススメのお店を案内してあげちゃうからね!」

 セリはダリルと一緒に買い物に出掛けた。残る2人は部屋を片付けてくれるらしい。
 勿論自分で片付けると言ったのだが、明日から早速ダンジョンに軽く潜るから、段取り良くセリの準備をしてしまいたいらしい。「あんな力仕事は大男どもにやらせとけばいいのよー」と言うダリルになんとも言えずに苦笑するセリだった。

 そして向かった先は。

「えと……。ダリルさん? ここって……」

 ある程度必要な物を買い揃えた後ダリルが連れて来てくれたのは、明らかに女性向けの服の店。

「うふ。このお店はお手頃に可愛い服がいっぱい揃ってるって評判なのよ~。さあ入って! ダリル姉さんが見立ててあげるからねー!」

 え? え? と思っている間に、見事に女の子用の色んな衣装から下着まで買っていたのだった。

「やっぱり、可愛い子の服を揃えるって楽しいわよね! セリも普段は可愛い服を着て大丈夫よ? 流石にダンジョンへは動き易いものや防御性のあるものの方がいいけれど」

 ウィンクしながらそう言ったダリルに、セリはため息を吐いた。

「気付いて、いらっしゃったんですね……。あ……、それで朝にあの2人の様子が……?」

「ふふ。私は一目見て分かったわよ? 別にあの2人も怒ってる訳でもなんでもないのよ。驚いて戸惑ってただけ。このご時世に1人で旅するのに可愛い女の子の姿じゃ危険だからだろうって分かってるから」

「ダリルさん……。すみません、黙ってて。昨晩にでもお話ししておくべきでしたよね。……あの、帰ったら皆にお話しさせてもらっていいですか?」

 ダリルは笑顔で頷いてくれた。




「はぁ。やっぱりそうなのか。……ごめん。ダリルから聞いても半信半疑だったよ。まあそりゃ女の子の一人旅なんて危険だからね」

 そう納得していたのはアレン。

「スマン! 俺昨日、一緒に寝ようとか……! 悪気とか変な気はなかったんだ! 気を悪くしないでくれ」

 そう謝ってきたのはライナー。
 セリはクスリと笑った。

「気を悪くなんて、するはずありません。僕……私の方こそ、きちんとお話ししなくてすみません」

 そこにダリルが助け舟を出す。

「そりゃ言えなかったんじゃない? 旅をするのに男の子の格好で来てて更に男3人のところに来るのに余計に今更言えなかったのよねぇ。セリは悪くないわよ。まあ私達は大丈夫だけど、あんまり男どもばかりの場所では気を付けてあげた方がいいわね」

 セリはそんな3人に感謝しながら、軽く事情を話す事にした。

「私は……、この国から少し離れたレーベン王国の出身で15歳。本当の名はセリーナといいます。実は一年程前祖国では魔物が溢れて……。私は家族を失い……国を出る事にしたんです。少しなら、魔法も使えましたし……」

「レーベン王国は魔法が随分発達してるって聞くものね。そしてこの国じゃセリのその『治療魔法』は結構優秀よ? 周りから変に目をつけられると困るし、私達からなるべく離れない方がいいわね」

 誰かさんがギルドで公表しちゃうから! とライナーを睨みながらダリルは言った。

「いえ。私もここまで国によって違いがあるなんて思わなかったので、いずれは周りに知られていたと思います。だからライナーさんを責めないでください」

「セリ……」

 感動したようにライナーはセリを見詰めた。

「で、明日からだけど、セリはどうする? いきなり魔物退治が辛そうだったら暫くはここで慣れるまで居てもいいよ」

 アレンは……、いやこの3人はとても優しい。おそらくセリの国が魔物に襲われた事や、まだこの国に来たばかりの年頃の女の子である事から随分と気遣ってくれているのだ。

「いえ、大丈夫です。早くここでの生活に慣れていきたいですし。……それに3人から離れない方がいいでしょう?」


 そう悪戯っぽく笑って言うと、3人は「そりゃそうだ!」と笑いあった。そうして次の日からこの4人でダンジョンに潜る事になったのだった。


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