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二章:二度目の幽世
19:左耳に聞こえる息遣い
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(ずっと見てただけなのにっ!なんで急にこんなにも接近してくるんだ!)
ぞくぞくとした心地悪さを感じながら住宅街を抜けた渉の視界に、高台の神社へと続く鳥居と階段が映る。
(あと少し……あと少しだっ!)
鳥居が見え、渉は一瞬安堵した。
「っあ……!」
だが、その瞬間。渉は左足首を掴まれたような感覚と共に転倒する。
「ぐっ……!」
両手を着いて倒れた為、顔や頭を拭つける事は無かった。
だが走っている最中に転倒した為に、勢いよく倒れたのは、言うまでもない。アスファルトについた両手の痛み、胸を腕で圧迫した息苦しさに渉は息を詰まらせた。
「っ……はっ、ぁ……ぐ……ぅ……」
(足を、掴まれた……)
痛みと苦しさに呻きながらも渉は体を横向きに横たえ、掴まれた左足へと視線を向ける。すでに掴まれている感覚はなくなっているが、確かに掴まれと渉は認識していた。
(触れてくるなんて……早く、神社に……っ⁉)
「ひぃっ⁉」
息苦しさを堪えながらも、なんとか起き上がろうとした渉だったが、体を硬直させる。
『はぁ……はぁ……』
先ほどと同じように、耳に唇が触れるのではないかというほどの近さで聞こえる呼吸音。それは生暖かさを加えたような温度と湿り気を感じさせるものだった。
転倒し、痛みを抱える自身の後ろに……触れるのではないかと錯覚する距離になにかがいる。
渉はその得たいのしれない何かからの恐怖に……自身の乱れた息がより早くなっていくのを感じた。
「はっ、はっ、はっ……っ!」
『はぁ……はぁ……』
二つの呼吸音が混じる気持ち悪さに渉は青ざめ、逃げようとするが気がつけば体は凍り付いたかのように動かない。
(う、動かないっ!ウソだろっ⁉)
これが恐怖から起こったものなのか、それとも渉の背後にいるモノによって起こされたものなのか……渉にはその判断がつかなかったが、動けないという事だけは確かだった。
(あともう少し、もう少しなのに……)
視線の先には、大きな通りを挟んで神社の鳥居と階段が見えている。
見えているにもかかわらず、渉は動く事ができない。その事実が渉を深く絶望させた。
「ひっ⁉や、やめろっ!!」
動けない事を絶望していた渉だったが、耳に生暖かく僅かに湿った何かを押し付けられた事により悲鳴を上げる。
生温かく、僅かに湿ったそれ。左耳に聞こえる息遣いの近さがそのままな事を考えると押し付けられたそれはおそらくは唇だと渉は気づく。
そして、それが渉の左耳を食むようになぞる感覚に渉はぞわりとした気色悪さを感じた。
ぞくぞくとした心地悪さを感じながら住宅街を抜けた渉の視界に、高台の神社へと続く鳥居と階段が映る。
(あと少し……あと少しだっ!)
鳥居が見え、渉は一瞬安堵した。
「っあ……!」
だが、その瞬間。渉は左足首を掴まれたような感覚と共に転倒する。
「ぐっ……!」
両手を着いて倒れた為、顔や頭を拭つける事は無かった。
だが走っている最中に転倒した為に、勢いよく倒れたのは、言うまでもない。アスファルトについた両手の痛み、胸を腕で圧迫した息苦しさに渉は息を詰まらせた。
「っ……はっ、ぁ……ぐ……ぅ……」
(足を、掴まれた……)
痛みと苦しさに呻きながらも渉は体を横向きに横たえ、掴まれた左足へと視線を向ける。すでに掴まれている感覚はなくなっているが、確かに掴まれと渉は認識していた。
(触れてくるなんて……早く、神社に……っ⁉)
「ひぃっ⁉」
息苦しさを堪えながらも、なんとか起き上がろうとした渉だったが、体を硬直させる。
『はぁ……はぁ……』
先ほどと同じように、耳に唇が触れるのではないかというほどの近さで聞こえる呼吸音。それは生暖かさを加えたような温度と湿り気を感じさせるものだった。
転倒し、痛みを抱える自身の後ろに……触れるのではないかと錯覚する距離になにかがいる。
渉はその得たいのしれない何かからの恐怖に……自身の乱れた息がより早くなっていくのを感じた。
「はっ、はっ、はっ……っ!」
『はぁ……はぁ……』
二つの呼吸音が混じる気持ち悪さに渉は青ざめ、逃げようとするが気がつけば体は凍り付いたかのように動かない。
(う、動かないっ!ウソだろっ⁉)
これが恐怖から起こったものなのか、それとも渉の背後にいるモノによって起こされたものなのか……渉にはその判断がつかなかったが、動けないという事だけは確かだった。
(あともう少し、もう少しなのに……)
視線の先には、大きな通りを挟んで神社の鳥居と階段が見えている。
見えているにもかかわらず、渉は動く事ができない。その事実が渉を深く絶望させた。
「ひっ⁉や、やめろっ!!」
動けない事を絶望していた渉だったが、耳に生暖かく僅かに湿った何かを押し付けられた事により悲鳴を上げる。
生温かく、僅かに湿ったそれ。左耳に聞こえる息遣いの近さがそのままな事を考えると押し付けられたそれはおそらくは唇だと渉は気づく。
そして、それが渉の左耳を食むようになぞる感覚に渉はぞわりとした気色悪さを感じた。
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