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本編

17:魔王の食べ物

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 部屋の案内も一通り終わったところで、ヒルドが考え込むように立ち止まる。

「部屋の外も案内したい所だが……そうだ、食事がまだだろう?空腹を感じてはいないか?」
「……空いたと言えば空いたかも」

 目覚めてからずっとヒルドと一緒なので、そこまで空腹を感じてはいなかったのだが……最後に食べたのが朝で、昼前に魔王城に乗り込んだ。……今がいつかはわからないが空腹でもおかしくはない時間だろう。

「ならば、厨房に向かいながら道中の事を説明しよう」

 妙案だと言うようにヒルドは言って、部屋の外へと足を進める。

 ……厨房に行くまでの間、抱っこされたまま?この供給量に耐えられるか俺!?

 ヒルドの付属品みたいに抱っこされている状況に耐えながら、絢爛豪華な廊下を運ばれる。

 禍々しい玉座の間に比べるとここの廊下は明るい。

 それでも、壁は黒っぽい重厚な石造りだし、どことなく威圧感のある作りだ。たぶん、全体的な作りはこんな感じで、玉座の間は、照明を絞って居るのだろう。

 白を基調とした人間側の王宮に比べるとザ・魔族の城!って感じではある。

 ……男子心には、こっちの方がかっこいいと思うが。

 白でキラキラした王宮もロマンあるけど、黒の魔王城はこう……なんかグッとくるんだ!

 あ、もちろん重厚な雰囲気の廊下に男子心を擽られつつも、ヒルドの説明にも耳を傾けている。

 ヒルドが俺の為に説明してくれているのに、聞き漏らすわけにはいかないからな。

「そこが、我の部屋……正面が母の部屋だ」

 廊下に出て、左手側にヒルドの部屋への扉があり、その正面がメディの部屋らしい。

 メディがヒルドの母親で俺の仲間だったとはいえ、女性の部屋にお邪魔する事はないだろう。でも、ヒルドには相談しづらい事を相談したくなったりするかもしれない。

 訪ねる時に間違える事はないだろう配置に安心しつつ、ヒルドの足で厨房へ向かう。

 俺達の部屋がある階は、四階。普段食事する食堂もここにあるみたいだけど、今日は料理人も配膳係もいないから、厨房のある一階へ向かうとの事だった。

 何か作るつもりなのだろうか……。だけど、ヒルドって何食べるんだ?

「……ヒルドって普段なに食べてるんだ?」

 気になるままに思った事を尋ねる。正直、何かを食べるという姿を想像できなかったのだ。

「基本的には、液体だな。固形物は食べられない」

 あ、やっぱりそうなんだ。顔の穴は、穴でしかないようだし納得の答えだ。

「真水であれ、果汁であれ、魔素が含まれているのであれば糧になる」

 果汁って、ジュースってこと?見かけによらず可愛いもの食べてるなぁ……。ビジュアル的には、生き血を啜っててもおかしくないのに。

「へー……じゃあ、生き物の体液は?」
「……」

 直接、血とか飲むの?って聞くのもちょっと変かも……と、思ってぼかしてきいてみたのだけど……その言葉にヒルドが固まった。
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