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本編

13:帰れない故郷

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 あれ? 俺、今……熱烈な告白したようなものじゃない!?

 勇者は俺だけど、魔王なヒルド相手に、俺にとっての勇者ってすっごい告白!

 ボボッ、ボボッって、段階的に顔が熱くなる。

 ホント、今日何度目だよ!

 ヒルドの膝の上で、ヒルドの手を持ったままなんだけど、落ち着かない。

 というか、この状態でよく楽しんでたな! さっきまでの俺!

 ヒルドの膝から降りるべきか、ヒルドの手を下ろすのが先か……と、悩んでいたらヒルドが口を開く。

「しかし、ダークヒーローか……ヒカルの世界には、面白い概念があるのだな」

 ヒルドの右手が俺の手から抜け出し、自身のあごを撫でる。

 その事にホッとしつつもあり、名残惜しくもあった。

「他にも聞かせて貰えないか?ヒカルの世界の事を」

 考え込むように、うつむいていた深淵が、向きを変えて俺を覗き込む。

 深く、暗い闇なのに、どこかあたたかくもあり、親しみを感じるから不思議だ。

「うん、いいよ。どんなとこだったか……いっぱい聞いてほしい」

 この世界で二年も生きていたら、忘れている事も多いけど、それでも大事な故郷。俺を構築した世界の事を知ってほしかった。

 薄れかけた記憶を思い出しながら、ぽつり、ぽつり……と、語っていく。

 地球には、人種の差はあれど、人間しかいない事。動物はいても、魔物は空想上の生物でしかない事……とか、いろいろ。

「――だから、俺の住んでいた日本は比較的安全な国だった」
「そうか……では、なおのこと、この世界では苦労したのだな」

 犯罪はあれど、長らく戦争をしていない国から来た事を話せば、ヒルドの声色が沈んだものになる。

「まあ……それなりには」

 自ら命を奪う事とは、無縁の世界に生きてきた。釣りをした事も、猟をした事もない。

 だけど、生きるためには奪うしかなかった。

「帰りたいとは思わないのか?」
「んー……最初の頃は? ……でも、もう帰っても前の生活には戻れないよ」

 視線をヒルドから逸らして呟く。

 この世界に来て、この手で命を奪う事が普通になって、魔物も人も屠った俺が元の世界に馴染める事はないだろう。

 きっとどこかで思い出す。人を切った感触を。吹き出した血の温さを。

 あの平穏な世界で思い出したら、俺は俺でいられなくなるかもしれない。

「だから、帰れなくていい。それに、ヒルドの側に居たいから帰れたとしても帰らない」

 ヒルドへと視線を戻して笑う。

 帰れない。そして、ヒルドの側に居ることが幸せさと思うから……追い出されない限りは、ここに居たかった。
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