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本編
7:母子
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俺が安堵していると、メディが自身の後ろに控えていた魔王へと振り向く。
「ほれ、お前も突っ立っておらんで話さんか!」
玉座の間では、敬っている感じだったのにまるで引っ込み思案の子供を叱咤する母親のようだ。
……養母だからそりゃそうだ。
「話の邪魔をしたら怒るのは母上でしょうに」
「……じゃな!」
メディの言葉に困ったように答える魔王と確かに邪魔されたら怒るわ。とでも言うように頷くメディ。
母子だ……。
「じゃが、お主ら互いの名前も知らぬのだからさっさと自己紹介くらいしたらどうじゃ。それともなんじゃ? 母として仲間として仲人でもすればいいのかえ?」
ん? ん? と魔王に圧をかけるメディ。厄介な母親だ。
「いえ、結構です。幼子ではないので」
そんなメディの圧すら受け流す魔王。息子も息子で強い。
というか……魔王然とした武骨な口調もかっこいいけど、丁寧な口調もかっこいい……。
知れば知るほど、トキメキが膨れあがる。
なんて、魔王にときめいていたら、魔王が俺の座るベッドに近づいてきて、ベッドの横にひざまづいた。
「先ほどは、庇う為とはいえその身に触れてすまなかった。我が名はヒルドリーチ。異なる世界より訪れた勇者よ。名を聞かせてくれるだろうか?」
視線を合わせるように俺を見つめる魔王……ヒルドリーチ。
深淵のような闇が俺に向いている事にドキドキしながら口を開く。
「雨野の……雨野光。光って、呼んでくれると嬉しい」
「わかった。では、我の事もヒルドと呼んでくれ。親しき者はそう呼ぶ」
ヒルドの表情は、変わらない。
変わらないけど、笑みを浮かべているのだろうと思える柔らかい声で俺へと手を差し出してきた。
「う、うん……よろしくヒルド」
差し出された手に手を重ね、握る。つるりとした質感の冷たい手。庇われた時の温もりは感じなかったが、俺の熱が伝わってあたたかくなっていく。
熱が伝わっていくその感覚にただ握手してるだけなのに、心臓がドキドキと高鳴った気がした。
「求婚の勢いが嘘のように初々しいのう」
「し、仕方ないだろ! 好きな人に触れられるんだから!」
俺の様子に肩を竦めたメディに俺は声をあげる。
「それが初々しいと言っとるんじゃ。勢いのままにベッドインして、孫の一人や二人……」
「ま、孫っ!? い、いくらなんでも早いって! そ、それに俺……産めるかどうか……」
ヒルドに惚れたとはいえ、俺は男だし……でも、ヒルドは触手だし……エロ同人的に男でも孕ませられるとか!?
もし、ヒルドが男でも孕ませられると言うのなら、が……頑張ってのいいかもしれない。だって、ヒルドの子供絶対可愛いし。
「ひ、ヒルド……子供……ほしい?」
顔が赤くなるのを感じながら、ヒルドの様子を伺う。
「……先も言ったように今はヒカルを知る時間が欲しい。互いの心を通わす時間を大切にしたいのだ」
握手したままの俺の手を、ヒルドは反対の手で優しく撫で、顔の中央に空いた穴の淵でキスをするように手の甲へと触れた。
「あわわわわわわっ……!」
まるで王子の様な仕草に頭が茹であがる。
体は、触手で作られた武神像のような厳つさなのに所作の一つ一つが洗礼されていて育ちの良さがわかる。
こんなヒルドがメディに育てられたってのが不思議なくらいに。
「我が子のくせにキザで堅物だのう」
「母上の子だからこう育ったのです」
「ぐぬぬ……」
ヒルドを比喩したメディが言い返されて唸っている。
二人がどんな親子か気になるが……メディの知る幼い頃のヒルドの話が一番気になるかもしれない。
「じゃ、じゃが……母がここにいては、進むものも進まぬかもしれぬな! 妾は、退室させてもらおう! 後は、若い二人でゆっくりすると良いぞ!」
そんな事を言って、メディが出ていく。
若い二人でゆっくりって本当に言う人いるんだな。創作上のお見合いでしか聞くことないと思ってた。
「ほれ、お前も突っ立っておらんで話さんか!」
玉座の間では、敬っている感じだったのにまるで引っ込み思案の子供を叱咤する母親のようだ。
……養母だからそりゃそうだ。
「話の邪魔をしたら怒るのは母上でしょうに」
「……じゃな!」
メディの言葉に困ったように答える魔王と確かに邪魔されたら怒るわ。とでも言うように頷くメディ。
母子だ……。
「じゃが、お主ら互いの名前も知らぬのだからさっさと自己紹介くらいしたらどうじゃ。それともなんじゃ? 母として仲間として仲人でもすればいいのかえ?」
ん? ん? と魔王に圧をかけるメディ。厄介な母親だ。
「いえ、結構です。幼子ではないので」
そんなメディの圧すら受け流す魔王。息子も息子で強い。
というか……魔王然とした武骨な口調もかっこいいけど、丁寧な口調もかっこいい……。
知れば知るほど、トキメキが膨れあがる。
なんて、魔王にときめいていたら、魔王が俺の座るベッドに近づいてきて、ベッドの横にひざまづいた。
「先ほどは、庇う為とはいえその身に触れてすまなかった。我が名はヒルドリーチ。異なる世界より訪れた勇者よ。名を聞かせてくれるだろうか?」
視線を合わせるように俺を見つめる魔王……ヒルドリーチ。
深淵のような闇が俺に向いている事にドキドキしながら口を開く。
「雨野の……雨野光。光って、呼んでくれると嬉しい」
「わかった。では、我の事もヒルドと呼んでくれ。親しき者はそう呼ぶ」
ヒルドの表情は、変わらない。
変わらないけど、笑みを浮かべているのだろうと思える柔らかい声で俺へと手を差し出してきた。
「う、うん……よろしくヒルド」
差し出された手に手を重ね、握る。つるりとした質感の冷たい手。庇われた時の温もりは感じなかったが、俺の熱が伝わってあたたかくなっていく。
熱が伝わっていくその感覚にただ握手してるだけなのに、心臓がドキドキと高鳴った気がした。
「求婚の勢いが嘘のように初々しいのう」
「し、仕方ないだろ! 好きな人に触れられるんだから!」
俺の様子に肩を竦めたメディに俺は声をあげる。
「それが初々しいと言っとるんじゃ。勢いのままにベッドインして、孫の一人や二人……」
「ま、孫っ!? い、いくらなんでも早いって! そ、それに俺……産めるかどうか……」
ヒルドに惚れたとはいえ、俺は男だし……でも、ヒルドは触手だし……エロ同人的に男でも孕ませられるとか!?
もし、ヒルドが男でも孕ませられると言うのなら、が……頑張ってのいいかもしれない。だって、ヒルドの子供絶対可愛いし。
「ひ、ヒルド……子供……ほしい?」
顔が赤くなるのを感じながら、ヒルドの様子を伺う。
「……先も言ったように今はヒカルを知る時間が欲しい。互いの心を通わす時間を大切にしたいのだ」
握手したままの俺の手を、ヒルドは反対の手で優しく撫で、顔の中央に空いた穴の淵でキスをするように手の甲へと触れた。
「あわわわわわわっ……!」
まるで王子の様な仕草に頭が茹であがる。
体は、触手で作られた武神像のような厳つさなのに所作の一つ一つが洗礼されていて育ちの良さがわかる。
こんなヒルドがメディに育てられたってのが不思議なくらいに。
「我が子のくせにキザで堅物だのう」
「母上の子だからこう育ったのです」
「ぐぬぬ……」
ヒルドを比喩したメディが言い返されて唸っている。
二人がどんな親子か気になるが……メディの知る幼い頃のヒルドの話が一番気になるかもしれない。
「じゃ、じゃが……母がここにいては、進むものも進まぬかもしれぬな! 妾は、退室させてもらおう! 後は、若い二人でゆっくりすると良いぞ!」
そんな事を言って、メディが出ていく。
若い二人でゆっくりって本当に言う人いるんだな。創作上のお見合いでしか聞くことないと思ってた。
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