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本編

6:天蓋付きベッドでの目覚め

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 起きたらなんだか豪華なベッドだった。

 天蓋付きベッドって初めて。

 しかも今、体を包むシーツの手触りは滑らかで、たぶんシルクとかそんなの。

 上にかけられた掛け布団も滑らかなのでカバーシーツがシルクかもしれない。

 だから、たぶんこのふかふかの枕の枕カバーもシルク的なものだと思う。首にあたる生地がつやつやだから。

 一式シルク。天蓋といい、めっちゃ豪華。

 召喚された最初の頃の王宮の部屋もダブルベッドサイズではあったけど……今考えると、シンプルなベッドだったんだな。

 シーツとかも、地球で使っていたものと変わらなかった感じがしたし。

 王宮の装飾にはシルクっぽいなにかがぶら下がってたから、たぶん俺の使うものの質がケチられてた。

 俺、勇者なのに。勇者なのに。

 そして、旅中はいわずもがな。中世風ファンタジー世界の宿屋の質はお察しレベルだったのだ。

 最高級品質のベッドにこのまま二度寝をキメたい……と、思ってたところで扉の開く音がする。

「なんじゃ、起きておったのか」

 体を起こせば、メディが魔王を連れて扉の向こうに立っていた。

 というか魔王デカイ。

 座って抱えられてた時もたくましいと思ったけど、俺と変わらない身長のメディより頭二つ分くらいデカイ。

 でも、その大きさもかっこいい……。

 禍々しい雰囲気の玉座の間とは違い、明るい場所で見る魔王は新鮮だ。

 触手で編みこまれた体は、理科の教科書で見た人体解剖図を黒い風船で作ったかのような雰囲気を放っている。

 生物的でありながらもどことなく無機質な体は、機械的にも見えて男の子心をくすぐる様な姿だった。

「突然、気絶するから心配したぞ」

 魔王にうっとりしてたら、メディから心配される言葉をかけられる。

 まあ、突然気絶したから心配されるのは当たり前か。

「それは、その……魔王の過剰供給で……」

 気絶した理由を素直に告げる。ついでに膝の上で抱き抱えられていた時の濃厚な接触を思い出して照れてしまう。

「乙女かお主は」
「かもしれない……」

 自覚はある。だって、好きだもん。

「重症じゃのう」

 呆れた様な楽しむ様なメディの声。彼女の性格的には、呆れ二割、面白さ八割くらいだと思う。

 彼女が俺に見せていた性格が本性だとしたら……だけど。

 魔王は、彼女を魔女と言ったし、彼女は魔王の命に従った。

 仲間だと思っていたメディは、魔族で敵だったのである。

「……メディって、魔族だったんだな」
「さよう。魔王の養母としては、我が子を倒す為に召喚された勇者を一目見ておきたくてな。……なぜだか、仲間になっておったのだがのう……」

 酒場で出会って意気投合したメディ。二人でアルコールサイコー! とかやってたら、仲間になってた。

 だって、カルラもアンヌも酒嫌いだったから飲み友が欲しかったんだよ。

 ……って、養母?

 メディが……魔王の?

「お、お義母様……」
「妾は、まだ認めておらぬぞ! ……と、でも言えば満足か?」

 俺、渾身のボケにメディはニヤリと笑う。

 あ、メディはメディだわ。

 グラマラス美女なのにどこかノリのいいメディに、騙し打つつもりでパーティーに入った訳じゃ無さそうだと、どこか安心した。
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