42 / 114
書籍化記念SS
側妃の誕生日1(書籍化記念&ディロスの誕生日記念・二章以前のお話)※2/29PM16:00修正
しおりを挟む
「とうさま!」
「ディロス!」
「「(おたんじょうび)誕生日おめでとー!」」
四年に一度の僕の誕生日。
去年祝い損ねた事を後悔していたようで今年の誕生日は、本当に覚えていた全員から朝一でお祝いされた。
しかも、一ヶ月前からソワソワしているアグノスとティグレのおまけつきだ。
そんな二人を一ヶ月微笑ましく見ていた今日。
朝食だとは、思えないほどに豪勢に飾り付けられた食堂へと二人に手を引かれ、本日何度目になるかわからない祝いの言葉を述べられた。
「ありがとう、アグノス。ティグレ」
昨日の夜から朝一番に祝うんだと言われて共に寝て……本当に先に起きて待機していた二人だから子供の行動力というのは、凄まじい。
今日は、朝からお祝いだと言って朝食からものすごく豪華だ。
「おめでとうディロス」
「おめでとうございますディロス様」
「シュロムも、イデアルもありがとう」
アグノス達に続き、先に食堂で待っていた二人にも祝いの言葉をもらう。
もう二十八にもなるというのに……少し照れ臭いけど嬉しい事には、間違いない。
「とうさま!たんじょうびケーキ、ポールががんばってくれたんだよ!あぐのすと兄様もアイディア出したの!」
朝食の席なのに、テーブルの上に鎮座するケーキをアグノスが笑顔で指差した。
この中で誰よりも嬉しそうにしているのは、アグノスだ。
僕の誕生日を自分の事のように喜んでくれるアグノスが愛おしくて堪らない。
「おひるも、おやつも、ゆうしょくもケーキあるからね!」
それはそれとして、愛情が物理的に重いのだけど。
この歳に四食ケーキは……ちょっとね。
アグノス達からは、見えないけどシュロムもちょっと顔をひきつらせている。
だけど、食べないという選択肢は、僕らにはない。子供達からの特大の愛情なのは間違いないから。
「それは、楽しみだね」
アグノスの言葉に笑顔で答えて、朝食の席につく。
内容は、ケーキ以外さっぱりとしたものにしてくれているのは、料理人達の心遣いだろう。
ケーキもフルーツが多めに見えるので、そこも製作を任されたであろうポールの思いやりを感じる。
料理人ゆえにあまり顔を会わせる事はないが、本当に欠かせない人だ。
「おいしいねとうさま!」
「美味いだろディロス!」
「そうだね」
朝食を食べ、デザートとしてのケーキを頬張るアグノスとティグレに頷く。
祝えることが嬉しいと全身で表す二人が本当に可愛い。
僕が前世の知識から持ち込んだイベントだけど……持ち込んで良かったな。と、誰かの誕生日を過ごす毎に思う。
「ご歓談中失礼します。ディロス様、ご実家からとマリカ様。それにエリーから祝いのお手紙が届いております」
ケーキを食べながらおしゃべりしていた僕の元に、ロンが手紙を持ってくる。
皆に断って風を開けると各々から祝いの言葉が書かれた手紙が入っていた。
「父様、お手紙?」
「うん。皆から誕生日おめでとうって」
「そっかぁ、うれしいねぇ」
僕の言葉にくふくふ笑うアグノスが可愛くて思わず笑みが溢れる。
実家の家族とは違って、マリカ様やエリーとは、妃教育で会えるけど……こうやって誕生日に合わせて手紙を貰えるのは嬉しい。
もちろん実家の家族から祝って貰えるのも嬉しい。
新しいイベントでは、あるけど、初めてアグノスの誕生日を祝った事を手紙で伝えたら離宮の誰かが誕生日を迎える度に祝いの手紙をくれるようになったのだ。
そして、初めてのアグノスの誕生日を伝えた手紙の返事では、その年僕の誕生日を祝えなかった後悔が綴られていた。
なんだかんだこの歳になっても子供として愛されているなと気恥ずかしくなるが嬉しくもある。
そんな両親とも離宮暮らしで最後に顔を会わせたのは、アグノスを連れて帰ったあの時。長兄に関しては、領地にいる事もあり、話を伝え聞くばかりでもっと長い間会っていない。
次に会えるのは、アグノスのお披露目時期あたりになるだろう。残念ながらまだまだ先の話だ。
「ごちそーさまー!」
「ごちそうさまー! あー、美味かったー!」
僕が読み終わった手紙をモリーに渡すと、お腹いっぱいケーキを食べ終えた二人がアグノスとティグレが声をあげる。
……本当に良く食べてるな。
僕やシュロムは、ともかく……成長期真っ盛りのイデアルよりケーキを食べているかもしれない。
「ぷはぁーっ! なぁ、ディロス! この後、どうするんだ⁉」
食後のジュースをゴクゴクと飲み終えたが僕へと視線を向けてくる。
「そうだね……日食まで時間があるし……皆でボードゲームでもする?」
「するー!」
「やるー!」
僕の提案にティグレとアグノスが元気良く答える。
「シュロムとイデアルもいい?」
「構わないぞ」
「もちろん」
僕達の様子を眺めていた二人にも尋ねれば、二人も頷いてくれた。
場所を談話室に移り、できるだけ公平を期すために僕とアグノス、シュロムとティグレ、イデアルの三組に別れて陣取り合戦のようなボードゲームに勤しむ。
「イデアル、いつも一人でさせてごめんね」
「いえ、父上もディロス様もお強いので参考になります」
やや不利な状況に追い込まれたイデアルに謝るもイデアルは、気にした様子もなく真剣に盤を見つめる。
まだ幼くも兄という立場から、チーム訳をすると不利な条件になってしまうもそれを逆境ととらえ、打開する為に策を練る姿は、どこかシュロムに似ている。
穏やかな子だけど、こういうところはシュロムの子供でティグレの兄なのだなぁと実感するんだよね。
「あ、とうさま! くらくなってきた!」
イデアルが長考している間に窓の外が薄暗くなる。
前世の知識でいう閏年の今日は、この世界で四年に一度の日食が起きる日だ。
天体については、詳しく明かされていない為、原理が前世と同じものであるかはわからないが、四年に一度……太陽が隠れる日を閏日として制定されている。
国によっては、神の隠れる日だとか、神に見捨てられる日だとか言われるが……このシィーズ国では、神が休まれる安息日とされ、国民だけでなく、神の加護を持つ王も休むべきとされている日だ。
普段、なかなか休めない……休まないシュロムでも素直に休んでくれると臣下からは評判の日らしい。
まあ、それでも離宮に勤める侍女や従者は、働いてくれているので代休やら特別手当てで補っているらしいのだけど。
「まっくらねぇ」
「昼なのに不思議だよなぁ」
金環を浮かぶ薄暗くなった空を眺めるべく、アグノスとティグレが窓へ駆け寄っていった。
それを見て、僕らも一時対戦の手を止めて窓の外へと視線を向ける。
「……神も今はお休みなのでしょうか」
「短い時間だが、きっと休まれているんだろう」
ポツリと溢したイデアルにシュロムが頷く。
王であり、王になる二人が敬う唯一の存在。
この国の始まりの王に加護を与えた存在に思いを馳せる二人はどこか神秘的だった。
「あっ……あるくなっちゃった」
時間にすると一時間ほど。前世の知識と比べたら、長いが人であったらうたた寝くらいの休憩だろう神の安息が終わる。
世界が違えば、摂理も変わるとはいえ不思議なものだった。
「かみさま起きるの早いよなーもっと寝てたらいいのに」
「ねー! あぐのすのおひるねよりずっとはやいもん」
窓の側から戻ってきた二人がそんな事を言いながら、僕とシュロムの側に別れて座る。
幼い二人の優しさにシュロム達と小さく笑みを浮かべながら、ボードゲームの続きを始めるのであった。
ボードゲームを遊び、昼食を食べ、睡魔に襲われたアグノスとティグレを寝かしつけ、シュロムと二人で書斎で過ごす。
イデアルは、アグノス達を見ていると子供部屋に残ってしまった。たぶん、気を使わせたのだと思う。
敏い子だけど、そこまで気を遣わなくてもいいと思うものの……その気遣いはありがたく受け取っておく。
なぜなら、今くらいしか時間がないから。夜も夜でアグノス達は一緒に寝るというと思うからね。
「イデアルに気を遣わせちゃったね」
「そうだな。だが、そのお陰でお前とゆっくり過ごせる」
「うん」
書斎のソファーで二人で寄り添い、シュロムの肩に頭を預ける。
隣から伝わる温もりは、心地よく、子供達ほどでもないが睡魔が緩やかに襲ってきそうだ。
「眠るか?」
「ううん……そんなもったいないことできないよ」
せっかくの誕生日。
せっかくシュロムが一日休める日。
どうせなら心行くまで共に過ごしたい。
「無理は、するなよ?」
「うん。でも、眠気覚ましに……キスしてもらってもいい?」
自分から言い出すのは恥ずかしいが、少しでも触れ合いたいとシュロムへと視線を向ける。
「可愛いおねだりだな。もちろんいいとも」
「ん……」
肩を抱き寄せられ、顔を上げれば、屈んできたシュロムと唇が重なった。
「っ、ぁ……んん……」
最初は浅く、徐々に深く。唇を食まれ、下を絡める度に逆上せていくような感覚に陥る。
「ぁ……シュロム……」
「そんな熱っぽい視線を向けられたら、俺の方が堪えられなくなりそうだ」
離れた唇が恋しくてシュロムを見つめるが、これで終わりだというように額にキスを落とされた。
確かにいつ子供達が起きてくるかわからないからこれ以上の行為は、難しいけど……ここで止められるシュロムの理性が憎たらしい。
「……」
「拗ねないでくれ。埋め合わせは……明日にでもしよう」
ぽすんとシュロムの胸に額を押し付ければ、上から降ってきた言葉に顔をあげる。
「え、ぁ……」
自分からキス以上の行為を欲したとはいえ、予想外のお誘いに真っ赤になっているのがわかった。
「そういう顔だっただろう?」
「そ、う……だけど……」
「早く帰ってくるから……楽しみにしておけ」
「……はい」
これ以上真っ赤な顔を見せ続ける余裕はなく、またシュロムの胸に額を押し当てる。
上から聞こえてくる笑い声と抱き寄せる腕の力に抗議するように僕はただただグリグリとシュロムの胸に額を押し付けて抗議するのであった。
「ディロス!」
「「(おたんじょうび)誕生日おめでとー!」」
四年に一度の僕の誕生日。
去年祝い損ねた事を後悔していたようで今年の誕生日は、本当に覚えていた全員から朝一でお祝いされた。
しかも、一ヶ月前からソワソワしているアグノスとティグレのおまけつきだ。
そんな二人を一ヶ月微笑ましく見ていた今日。
朝食だとは、思えないほどに豪勢に飾り付けられた食堂へと二人に手を引かれ、本日何度目になるかわからない祝いの言葉を述べられた。
「ありがとう、アグノス。ティグレ」
昨日の夜から朝一番に祝うんだと言われて共に寝て……本当に先に起きて待機していた二人だから子供の行動力というのは、凄まじい。
今日は、朝からお祝いだと言って朝食からものすごく豪華だ。
「おめでとうディロス」
「おめでとうございますディロス様」
「シュロムも、イデアルもありがとう」
アグノス達に続き、先に食堂で待っていた二人にも祝いの言葉をもらう。
もう二十八にもなるというのに……少し照れ臭いけど嬉しい事には、間違いない。
「とうさま!たんじょうびケーキ、ポールががんばってくれたんだよ!あぐのすと兄様もアイディア出したの!」
朝食の席なのに、テーブルの上に鎮座するケーキをアグノスが笑顔で指差した。
この中で誰よりも嬉しそうにしているのは、アグノスだ。
僕の誕生日を自分の事のように喜んでくれるアグノスが愛おしくて堪らない。
「おひるも、おやつも、ゆうしょくもケーキあるからね!」
それはそれとして、愛情が物理的に重いのだけど。
この歳に四食ケーキは……ちょっとね。
アグノス達からは、見えないけどシュロムもちょっと顔をひきつらせている。
だけど、食べないという選択肢は、僕らにはない。子供達からの特大の愛情なのは間違いないから。
「それは、楽しみだね」
アグノスの言葉に笑顔で答えて、朝食の席につく。
内容は、ケーキ以外さっぱりとしたものにしてくれているのは、料理人達の心遣いだろう。
ケーキもフルーツが多めに見えるので、そこも製作を任されたであろうポールの思いやりを感じる。
料理人ゆえにあまり顔を会わせる事はないが、本当に欠かせない人だ。
「おいしいねとうさま!」
「美味いだろディロス!」
「そうだね」
朝食を食べ、デザートとしてのケーキを頬張るアグノスとティグレに頷く。
祝えることが嬉しいと全身で表す二人が本当に可愛い。
僕が前世の知識から持ち込んだイベントだけど……持ち込んで良かったな。と、誰かの誕生日を過ごす毎に思う。
「ご歓談中失礼します。ディロス様、ご実家からとマリカ様。それにエリーから祝いのお手紙が届いております」
ケーキを食べながらおしゃべりしていた僕の元に、ロンが手紙を持ってくる。
皆に断って風を開けると各々から祝いの言葉が書かれた手紙が入っていた。
「父様、お手紙?」
「うん。皆から誕生日おめでとうって」
「そっかぁ、うれしいねぇ」
僕の言葉にくふくふ笑うアグノスが可愛くて思わず笑みが溢れる。
実家の家族とは違って、マリカ様やエリーとは、妃教育で会えるけど……こうやって誕生日に合わせて手紙を貰えるのは嬉しい。
もちろん実家の家族から祝って貰えるのも嬉しい。
新しいイベントでは、あるけど、初めてアグノスの誕生日を祝った事を手紙で伝えたら離宮の誰かが誕生日を迎える度に祝いの手紙をくれるようになったのだ。
そして、初めてのアグノスの誕生日を伝えた手紙の返事では、その年僕の誕生日を祝えなかった後悔が綴られていた。
なんだかんだこの歳になっても子供として愛されているなと気恥ずかしくなるが嬉しくもある。
そんな両親とも離宮暮らしで最後に顔を会わせたのは、アグノスを連れて帰ったあの時。長兄に関しては、領地にいる事もあり、話を伝え聞くばかりでもっと長い間会っていない。
次に会えるのは、アグノスのお披露目時期あたりになるだろう。残念ながらまだまだ先の話だ。
「ごちそーさまー!」
「ごちそうさまー! あー、美味かったー!」
僕が読み終わった手紙をモリーに渡すと、お腹いっぱいケーキを食べ終えた二人がアグノスとティグレが声をあげる。
……本当に良く食べてるな。
僕やシュロムは、ともかく……成長期真っ盛りのイデアルよりケーキを食べているかもしれない。
「ぷはぁーっ! なぁ、ディロス! この後、どうするんだ⁉」
食後のジュースをゴクゴクと飲み終えたが僕へと視線を向けてくる。
「そうだね……日食まで時間があるし……皆でボードゲームでもする?」
「するー!」
「やるー!」
僕の提案にティグレとアグノスが元気良く答える。
「シュロムとイデアルもいい?」
「構わないぞ」
「もちろん」
僕達の様子を眺めていた二人にも尋ねれば、二人も頷いてくれた。
場所を談話室に移り、できるだけ公平を期すために僕とアグノス、シュロムとティグレ、イデアルの三組に別れて陣取り合戦のようなボードゲームに勤しむ。
「イデアル、いつも一人でさせてごめんね」
「いえ、父上もディロス様もお強いので参考になります」
やや不利な状況に追い込まれたイデアルに謝るもイデアルは、気にした様子もなく真剣に盤を見つめる。
まだ幼くも兄という立場から、チーム訳をすると不利な条件になってしまうもそれを逆境ととらえ、打開する為に策を練る姿は、どこかシュロムに似ている。
穏やかな子だけど、こういうところはシュロムの子供でティグレの兄なのだなぁと実感するんだよね。
「あ、とうさま! くらくなってきた!」
イデアルが長考している間に窓の外が薄暗くなる。
前世の知識でいう閏年の今日は、この世界で四年に一度の日食が起きる日だ。
天体については、詳しく明かされていない為、原理が前世と同じものであるかはわからないが、四年に一度……太陽が隠れる日を閏日として制定されている。
国によっては、神の隠れる日だとか、神に見捨てられる日だとか言われるが……このシィーズ国では、神が休まれる安息日とされ、国民だけでなく、神の加護を持つ王も休むべきとされている日だ。
普段、なかなか休めない……休まないシュロムでも素直に休んでくれると臣下からは評判の日らしい。
まあ、それでも離宮に勤める侍女や従者は、働いてくれているので代休やら特別手当てで補っているらしいのだけど。
「まっくらねぇ」
「昼なのに不思議だよなぁ」
金環を浮かぶ薄暗くなった空を眺めるべく、アグノスとティグレが窓へ駆け寄っていった。
それを見て、僕らも一時対戦の手を止めて窓の外へと視線を向ける。
「……神も今はお休みなのでしょうか」
「短い時間だが、きっと休まれているんだろう」
ポツリと溢したイデアルにシュロムが頷く。
王であり、王になる二人が敬う唯一の存在。
この国の始まりの王に加護を与えた存在に思いを馳せる二人はどこか神秘的だった。
「あっ……あるくなっちゃった」
時間にすると一時間ほど。前世の知識と比べたら、長いが人であったらうたた寝くらいの休憩だろう神の安息が終わる。
世界が違えば、摂理も変わるとはいえ不思議なものだった。
「かみさま起きるの早いよなーもっと寝てたらいいのに」
「ねー! あぐのすのおひるねよりずっとはやいもん」
窓の側から戻ってきた二人がそんな事を言いながら、僕とシュロムの側に別れて座る。
幼い二人の優しさにシュロム達と小さく笑みを浮かべながら、ボードゲームの続きを始めるのであった。
ボードゲームを遊び、昼食を食べ、睡魔に襲われたアグノスとティグレを寝かしつけ、シュロムと二人で書斎で過ごす。
イデアルは、アグノス達を見ていると子供部屋に残ってしまった。たぶん、気を使わせたのだと思う。
敏い子だけど、そこまで気を遣わなくてもいいと思うものの……その気遣いはありがたく受け取っておく。
なぜなら、今くらいしか時間がないから。夜も夜でアグノス達は一緒に寝るというと思うからね。
「イデアルに気を遣わせちゃったね」
「そうだな。だが、そのお陰でお前とゆっくり過ごせる」
「うん」
書斎のソファーで二人で寄り添い、シュロムの肩に頭を預ける。
隣から伝わる温もりは、心地よく、子供達ほどでもないが睡魔が緩やかに襲ってきそうだ。
「眠るか?」
「ううん……そんなもったいないことできないよ」
せっかくの誕生日。
せっかくシュロムが一日休める日。
どうせなら心行くまで共に過ごしたい。
「無理は、するなよ?」
「うん。でも、眠気覚ましに……キスしてもらってもいい?」
自分から言い出すのは恥ずかしいが、少しでも触れ合いたいとシュロムへと視線を向ける。
「可愛いおねだりだな。もちろんいいとも」
「ん……」
肩を抱き寄せられ、顔を上げれば、屈んできたシュロムと唇が重なった。
「っ、ぁ……んん……」
最初は浅く、徐々に深く。唇を食まれ、下を絡める度に逆上せていくような感覚に陥る。
「ぁ……シュロム……」
「そんな熱っぽい視線を向けられたら、俺の方が堪えられなくなりそうだ」
離れた唇が恋しくてシュロムを見つめるが、これで終わりだというように額にキスを落とされた。
確かにいつ子供達が起きてくるかわからないからこれ以上の行為は、難しいけど……ここで止められるシュロムの理性が憎たらしい。
「……」
「拗ねないでくれ。埋め合わせは……明日にでもしよう」
ぽすんとシュロムの胸に額を押し付ければ、上から降ってきた言葉に顔をあげる。
「え、ぁ……」
自分からキス以上の行為を欲したとはいえ、予想外のお誘いに真っ赤になっているのがわかった。
「そういう顔だっただろう?」
「そ、う……だけど……」
「早く帰ってくるから……楽しみにしておけ」
「……はい」
これ以上真っ赤な顔を見せ続ける余裕はなく、またシュロムの胸に額を押し当てる。
上から聞こえてくる笑い声と抱き寄せる腕の力に抗議するように僕はただただグリグリとシュロムの胸に額を押し付けて抗議するのであった。
62
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説
転生したいらない子は異世界お兄さんたちに守護られ中! 薔薇と雄鹿と宝石と
夕張さばみそ
BL
旧題:薔薇と雄鹿と宝石と。~転生先で人外さんに愛され過ぎてクッキーが美味しいです~
目が覚めると森の中にいた少年・雪夜は、わけもわからないままゴロツキに絡まれているところを美貌の公爵・ローゼンに助けられる。
転生した先は 華族、樹族、鉱族の人外たちが支配する『ニンゲン』がいない世界。
たまに現れる『ニンゲン』は珍味・力を増す霊薬・美の妙薬として人外たちに食べられてしまうのだという。
折角転生したというのに大ピンチ!
でも、そんなことはつゆしらず、自分を助けてくれた華族のローゼンに懐く雪夜。
初めは冷たい態度をとっていたローゼンだが、そんな雪夜に心を開くようになり――。
優しい世界は最高なのでクッキーを食べます!
溺愛される雪夜の前には樹族、鉱族の青年たちも現れて……
……という、ニンゲンの子供が人外おにいさん達と出逢い、大人編でLOVEになりますが、幼少期はお兄さん達に育てられる健全ホノボノ異世界ライフな感じです。(※大人編は性描写を含みます)
※主人公の幼児に辛い過去があったり、モブが八つ裂きにされたりする描写がありますが、基本的にハピエン前提の異世界ハッピー溺愛ハーレムものです。
※大人編では残酷描写、鬱展開、性描写(3P)等が入ります。
※書籍化決定しました~!(涙)ありがとうございます!(涙)
アルファポリス様からタイトルが
『転生したいらない子は異世界お兄さんたちに守護られ中!(副題・薔薇と雄鹿と宝石と)』で
発売中です!
イラストレーター様は一為先生です(涙)ありがたや……(涙)
なお出版契約に基づき、子供編は来月の刊行日前に非公開となります。
大人編(2部)は盛大なネタバレを含む為、2月20日(火)に非公開となります。申し訳ありません……(シワシワ顔)
※大人編公開につきましては、現在書籍化したばかりで、大人編という最大のネタバレ部分が
公開中なのは宜しくないのではという話で、一時的に非公開にさせて頂いております(申し訳ありません)
まだ今後がどうなるか未確定で、私からは詳細を申し上げれる状態ではありませんが、
続報がわかり次第、近況ボードやX(https://twitter.com/mohikanhyatthaa)の方で
直ぐに告知させていただきたいと思っております……!
結末も! 大人の雪夜も! いっぱいたくさん! 見てもらいたいのでッッ!!(涙)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。