お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

第二部：王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

70：子供達を挟んだ二人の時間

「それで……お前とアグノスはどうだった？」
「……僕達？」
「ああ、ティグレを見ていたようだが……楽しめたか？」

　ずっとティグレの特訓を眺めていたのを聞いていたのか、シュロムがそんな事を告げる。

「僕は、微笑ましく見ていたけど……アグノスは、少し寂しそうだったと思う。それに、エクス様とテオドーロ様の手合わせの少し怖かったみたいだし」

　昼間の事を思い出しながら、シュロムの言葉に答える。

「イデアルも、ティグレも……自分のやりたい事を見つけたから、アグノスにも何か目標を見つけてほしいと思うけど……まだ早いのかもね……」
「目標を見つけるのに早いも遅いもない。アグノスにも、いつかやりたい事が見つかるはずだ。俺達は、ゆっくりと見守ってやろう」
「そうだね」

　微笑むシュロムに、ほんの少しだけ心が軽くなる。

　シュロムが一緒に見守ってくれるなら安心だ。僕だけで導けなかったとしても……シュロムなら一緒に導いてくれると思うから。

「笑ってくれて良かった」

　表情が緩んでいたのか、シュロムがそんな事を溢す。

　……そんなに固い顔してたかな？

「悩むのもいいがあまり一人で抱え込むな。俺が寂しいだろう？」
「ふふっ、そんな事言って……」

　茶化すように笑うシュロムに小さく笑って重なった手の……僕の手を包む指に指を絡める。

「寂しいのは、事実なんだがな」

　苦笑したシュロムが重なった手を引いて、手を繋ぐように遊ぶ。

　手の甲に重なっていた手が手のひらを重ね合わせるように繋がり、指が絡み合う。

「もう、シュロム」
「駄目か？」
「駄目じゃ、ないけど……」

　子供達を挟んで行われた動きに気恥ずかしさを込めながら名前を呼ぶも、余裕のある笑みに何も言えなくなった。

「本当は、二人でも過ごしたいんだが……まだ、子供達を優先したいだろう？　これくらいは、許してくれないか？」
「……うん」

　甘い言葉に繋いだ手から伝わる体温。

　二人で過ごしたいと言うシュロムの言葉は、嬉しいし……僕も、余裕があるのならシュロムに甘えたい。

「シュロム……」
「どうした？」
「……大好きだよ」

　ポツリと溢した言葉に、シュロムが珍しく呆気にとられた表情を浮かべる。

　前世的には、鳩が豆鉄砲をくらった。とか、言われる様な表情だ。

　おそらく、二人で過ごしているわけでもないのに僕から珍しく好きだと言葉にしたからだろう。

「ああ、俺も愛している」

　柔らかく微笑んだシュロムが、手を繋いだまま僕の手の甲を指で優しく撫でる。

　当たり前に返してくれるシュロムからの言葉に僕も笑みを浮かべた。