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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

69:寝台で語り合う王と子

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 ティグレと話しながらシュロムを待っていると、寝室の扉の開く音がする。

「待たせたな」
「父上!」

 寝室に入ってきたシュロムにティグレが両手を突っ張って体を起こし、ベッドに腰かけたシュロムがその頭を撫でた。

「さぁ、今日の鍛練について聞かせてくれ。アグノスを起こさない様に静かにな」
「はい!」

 シュロムの言葉に笑みを浮かべたティグレが今日の特訓の事を楽しそうに語り出す。

 エクス様に柔軟の仕方や体の動かし方、木剣の振り方を教えてもらった事。

 剣の振り方を教えてもらった後、防御するエクス様に打ち込みをさせてもらった事。

 そして、やはりエクス様とテオドーロ様の手合わせが凄かった事を隣で横になったシュロムへと一生懸命話していた。

「それで……それで……すごくて……」

 だけど、どれだけ興奮して目が覚めていたと言えど、ティグレはまだ子供で、今日は特訓したからかある程度話したところでうつらうつらとし始める。

「そろそろ眠ったらどうだ? まだ話したければ明日の朝食でも話したらいい」
「う~……でも……うぅ……」

 眠そうなティグレにシュロムが苦笑しながらティグレの頭を撫で、その心地よさに抗うようにティグレが呻く。

 でも、その抵抗も長くは続かず、ティグレはシュロムの夜着にすがりつくように眠ってしまった。

「今日は、とても楽しく過ごしたようだな」
「うん。すごく楽しそうだった」

 ティグレを撫でるシュロムに僕もアグノスを抱き寄せながら笑みを浮かべる。

「動きを見ているとさすがシュロムの子っていうか……動きに鋭さがあって、かっこよかったよ」
「暗部からも報告を聞いたが……筋は良いようだな」
「運動も得意な子だし、流石だよね」
「運動ができたとしても、剣術の才能があるかは、別の問題だぞ? まあ……運動ができた方がいいのは間違いないがな」

 僕から見た感想を告げれば、シュロムが笑う。

 運動が得意ではない僕からしたら運動ができるのも、剣術の才能があるのも同じように感じるけどどうやら違うらしい。

「だが、やる気が続くならティグレは良い将になるのだろう。……お前の記憶の通りにな」
「うん、そうだね……」

 記憶の通りになると決まっているわけではないけど、今のティグレを見ていたら原作と変わらずに立派な軍人になると思う。

 できるなら原作のような内戦が起きる事はない方がいいし、隣国との戦争も、大陸を巻き込む大戦だって起きずに済んでほしかった。

「……ディロス」
「なに?」
「お前の心配するような事は、起きない。俺が防いで見せる」

 僕の不安を感じ取ったのか、シュロムがティグレを撫でていた手を伸ばし、アグノスを抱き締める僕の手に重なる。

 暖かな優しい手。全てを背負う覚悟を決めた手だった。

「ありがとう……」

 全部シュロムに頼りきりなのが不甲斐ない。

 でも、だからこそ。僕にできる事だけでも頑張らないと。と、思った。
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