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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

65:目標

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 結局モリーの抗議は、マリーに却下され、また特訓を開始したティグレとエクス様の声が庭に響く。

 護衛騎士長二人の一流の剣技を見て触発されたのか、一生懸命に木剣を振るティグレの表情は、休憩前よりイキイキとしていた。

「……兄様、たのしそう……」

 一生懸命剣を振るティグレにアグノスがポツリと呟く。

 最初は、ティグレの様子を楽しそうに見ていたアグノスだけど、手合わせを見てから少し落ち込んでいるようにも見える。

 手合わせの迫力に怯えていたのもあるけど、いつも仲良く遊んでいたティグレと同じ気持ちで楽しめなかったのもアグノス的にはショックだったのかもしれない。

 普段は、ティグレやイデアルは、年下のアグノスにあわせてくれるし……アグノスにとっては、ああやって楽しそうに頑張っているティグレの様子に寂しさを感じている様にも思えた。

「そうだね。人は、目標があると頑張る事も楽しくなるから」
「……父様も?」

 寂しそうなアグノスに頷くと、アグノスは眉を下げて、僕を見上げる。

「うん、そうだよ。僕もよく本を読んでいるよね?」
「うん」
「僕は、歴史や戦術を学ぶのが好きだから、難しい本を読むのも楽しいんだ。運動は、苦手だからティグレの様に剣術はできないし、イデアルの様に様々な事を頑張るのは得意ではないけどね。でも、目標があって頑張れるのはすごい事なんだよ」

 まだ、目標に向けて頑張るという事を理解しきれていないアグノスへと言葉を向ければ、アグノスは僕から視線を逸らすように俯いた。

「アグノス……兄様たちみたいに、もくひょうない……」
「今は、なくても……いつか、アグノスが頑張りたい事が見つかるよ。僕の子供だもの……アグノスが頑張りたいものが見つかったらなんでも応援してあげる」
「……うん」

 落ち込むアグノスの体を抱き寄せて、ふわふわの金髪を撫でる。

 まだ、幼いアグノス。その将来は、王族ゆえに、反逆者の血を引く子供ゆえに、他の貴族の子供達より制限のあるものかもしれないけど、アグノスがやりたい事は応援してあげたい。

 イデアルの手伝いとして内政に関わったり、ティグレと共に軍に所属したり、僕の仕事を手伝ったり……もちろん、それ以外でやりたい事があれば、親としていくらでも協力しよう。

「でも、焦らなくていいからね。ゆっくりアグノスの好きな事、やりたい事を探していこう」
「ん……」

 抱き締めた僕にぎゅっと抱きついてきたアグノス。

 僕も忙しくなったし、上二人が目標を見つけて頑張っているから寂しいとは思う。

「皆で過ごせる時は、皆で過ごすようにしようね」

 でも、決してアグノスをのけ者にしているわけではないと伝えたかった。
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