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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

64:お転婆な侍女

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 手合わせが終わってからもティグレの興奮は冷め止まず、両手を握りしめながら言葉を続ける。

「エクスがいっぱい攻撃するのも、テオドーロが一撃で倒すのもどっちもかっこよかった!」
「そうですねぇ、やっぱり騎士様は一撃が重くてかっこいいですよねぇ」

 そんなティグレに同意するのは、モリーで表面上は、貞淑な侍女のまま先程までの手合わせに感心していた。

「モリーもそう思うか!」

 モリーが同意したからか、ティグレがモリーへとキラキラした視線を向ける。同じ意見の人間がいるのが嬉しいのだろう。

「そりゃあ、そうですよ!……女の私だとどうしても一撃が軽くてですねぇ……あの力強さが羨ましくて羨ましくて……。父様やお養父様からは、自分にあった戦い方を極めろと言われてますが……どうやればエクス様の連擊を避けきるか、テオドーロ様の防御をどうやって打ち崩すか……悩ましい問題です」

 真剣な表情で悩むモリーにティグレがキョトンとして、マリーが笑みを浮かべたまま頭を痛そうにし、護衛騎士長の三人が苦笑いを浮かべている。

 僕の侍女は、あまりにも思考が好戦的である。実父は、そうでもないのに……おそらく養父なロンのせい……というよりは、本人の資質かな……。

「……モリーは、侍女なのになんで二人と戦おうとするんだ?」
「侍女でも戦えた方がかっこいいじゃありませんか!」
「……その通りだな!」

 戦えた方がかっこいいと胸を張るモリーにティグレがハッとした様子で頷く。

「モリーは、雪合戦も強かったし、戦える侍女なんだな!」
「そうです、そうです。私は、強くて可憐な侍女なんです!」

 二人できゃっきゃと盛り上がるティグレとモリーにマリーがため息をついている。

 姉としては、モリーの侍女らしくない態度が頭の痛い問題なのだろう。

「モリー……もう少し淑女らしくしなさい」
「そう言われてもお姉様……ディロス様は、今のままでいいって言ってくれるのよ? ねぇ、ディロス様?」

 マリーからの注意に少し拗ねた様子を見せながら僕へと訪ねてきたモリーに小さく笑う。

 侍女ではあるけど、甘え方を知っている問いかけだ。そう言うところも妹がいたらこんな感じなのだろうかと微笑ましいだけなのだけど。

「うん、モリーはモリーのままでいいと思うよ。それに、ロンに比べたら可愛いものだし」
「あの方を基準にしないでください」

 僕がロンを例えに出したら、マリーは僕の言葉をバッサリと切る。

 マリー、ロンの立場や仕事振りは尊敬してるみたいだけど、性格には一言申したいみたいだからちょっと当たりがキツい時があるんだよねぇ……。

 真面目な性格のマリーとあのロンの性格だから 仕方ないと言えば仕方ないんだけど。

「お姉様は、真面目すぎるのよ」
「あなたは、参考にする方が極端すぎるの」

 そこは、マリーに同意したくもなるのだが、モリーもロンも仕事はちゃんとするので、多少の気安さは目こぼししてもいいと思うのだ。

 まあ……ロンは、僕でも頭を抱えたくなる時があるのだけど。

「でも、ああいう戦い見ると、いつか騎士様とも手合わせしたくなっちゃいますね!……父様達に頼んでみようかな」
「モリー……さすがに立場をわきまえなさい」
「すみません、モリー嬢。さすがに女性騎士でもない方との手合わせは……ちょっと……」

 ポツリと呟かれたモリーの言葉に、マリーが注意し、エクス様が控えめに断っていた。

 ……元気なところがモリーの良いところだと思うけど……ちょっとお転婆すぎるかもしれない。

 そんな事を考えながら、抗議し始めたモリーを眺めつつ、僕はお茶を口に含みながらその様子を見守った。
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