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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

59:穏やかな寝顔[シュロム視点]

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 眠りについたディロスの頬を撫でる。その寝顔は、隣で寝ているアグノスと似ていて、心から安堵して眠っている様に見えた。

「お前達に困難ばかり与える男でしかないのに……こうも心を許してくれるとはな」

 二人を起こさぬ様に呟いた言葉。愛し合っているとはいえ、王族として慣れぬ二人に無理を強いているのはわかっていた。

 ディロスを俺の唯一として扱いたいというのは、俺の我が儘だ。

 側妃でありながら唯一という利点はあれど、この歳から妃教育を施されるという辛さはどれほどのものだろうか。

 アグノスもまだ甘えたい年頃だろう。

 イデアルやティグレは、幼くして母親でるレーヌを亡くし、早くから王子として自立を強いてきた。

 その事を後悔しているにも関わらず、改めてアグノスへも強いている事実は俺を苛む。

 王族として、扱うのだから王族としての自覚は早い方がいい。

 それにアグノスは、出生でも苦労するのがわかっているのだ。

 いずれ、アグノスは真実を知る。それに耐えられる心を養わせなければならない。

 だが、こうしてディロスと離れるだけで不安定になる幼子にその真実が堪えられるか……いくら考えても悩ましい事だった。

「はぁ……」

 思わずため息が漏れる。

 視界には、穏やかに眠るディロスとアグノスの姿。

 せめて、眠っている間だけでも二人の心が平穏である事を願う。

 ディロスを撫で、アグノスを撫で、静かにディロスの部屋を後にする。

「浮かない顔ですねぇ」

 背後から扉の閉まる音を聞きながら、廊下を歩いているといつの間にか後ろにいたローランが声をかけてきた。

「……お前の勤務時間は終わったはずだが?」

 すでに他の者と警護を交換してるにも関わらず、当たり前のように現れたローランに額を押さえる。

「モリーと鍛錬した帰りです」
「使用人棟は、別だろう……」

 俺達家族の住む棟と使用人の住む棟は、繋がった建物ではあるが、位置は真逆。

 外で鍛錬したとしても、ここを通るのはあり得なかった。

「まぁまぁ、良いじゃないですか。陛下の居るところに俺が居るのは当たり前なんですから」
「休める時は休め」

 飄々とするローランに言っても無駄だと思いながらため息を吐く。

「それより、悩んでるなら話し聞きますよー?」

 俺の隣へと歩を進め、覗き込むように笑うローラン。

 俺より年上のくせに、その行動が似合っている事が少し腹立たしかった。

「……一杯だけ付き合え。そして、飲んだら休め」
「はいはーい。陛下の仰せのままに」

 断ったら断ったで面倒臭いのは、わかっている。

 自分の時間を割いてまで、臣下として奉仕するというのなら、こちらが相手してやろう。

 そんな事を考えながら、自室へと足を進めた。
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