102 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
59:穏やかな寝顔[シュロム視点]
しおりを挟む
眠りについたディロスの頬を撫でる。その寝顔は、隣で寝ているアグノスと似ていて、心から安堵して眠っている様に見えた。
「お前達に困難ばかり与える男でしかないのに……こうも心を許してくれるとはな」
二人を起こさぬ様に呟いた言葉。愛し合っているとはいえ、王族として慣れぬ二人に無理を強いているのはわかっていた。
ディロスを俺の唯一として扱いたいというのは、俺の我が儘だ。
側妃でありながら唯一という利点はあれど、この歳から妃教育を施されるという辛さはどれほどのものだろうか。
アグノスもまだ甘えたい年頃だろう。
イデアルやティグレは、幼くして母親でるレーヌを亡くし、早くから王子として自立を強いてきた。
その事を後悔しているにも関わらず、改めてアグノスへも強いている事実は俺を苛む。
王族として、扱うのだから王族としての自覚は早い方がいい。
それにアグノスは、出生でも苦労するのがわかっているのだ。
いずれ、アグノスは真実を知る。それに耐えられる心を養わせなければならない。
だが、こうしてディロスと離れるだけで不安定になる幼子にその真実が堪えられるか……いくら考えても悩ましい事だった。
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
視界には、穏やかに眠るディロスとアグノスの姿。
せめて、眠っている間だけでも二人の心が平穏である事を願う。
ディロスを撫で、アグノスを撫で、静かにディロスの部屋を後にする。
「浮かない顔ですねぇ」
背後から扉の閉まる音を聞きながら、廊下を歩いているといつの間にか後ろにいたローランが声をかけてきた。
「……お前の勤務時間は終わったはずだが?」
すでに他の者と警護を交換してるにも関わらず、当たり前のように現れたローランに額を押さえる。
「モリーと鍛錬した帰りです」
「使用人棟は、別だろう……」
俺達家族の住む棟と使用人の住む棟は、繋がった建物ではあるが、位置は真逆。
外で鍛錬したとしても、ここを通るのはあり得なかった。
「まぁまぁ、良いじゃないですか。陛下の居るところに俺が居るのは当たり前なんですから」
「休める時は休め」
飄々とするローランに言っても無駄だと思いながらため息を吐く。
「それより、悩んでるなら話し聞きますよー?」
俺の隣へと歩を進め、覗き込むように笑うローラン。
俺より年上のくせに、その行動が似合っている事が少し腹立たしかった。
「……一杯だけ付き合え。そして、飲んだら休め」
「はいはーい。陛下の仰せのままに」
断ったら断ったで面倒臭いのは、わかっている。
自分の時間を割いてまで、臣下として奉仕するというのなら、こちらが相手してやろう。
そんな事を考えながら、自室へと足を進めた。
「お前達に困難ばかり与える男でしかないのに……こうも心を許してくれるとはな」
二人を起こさぬ様に呟いた言葉。愛し合っているとはいえ、王族として慣れぬ二人に無理を強いているのはわかっていた。
ディロスを俺の唯一として扱いたいというのは、俺の我が儘だ。
側妃でありながら唯一という利点はあれど、この歳から妃教育を施されるという辛さはどれほどのものだろうか。
アグノスもまだ甘えたい年頃だろう。
イデアルやティグレは、幼くして母親でるレーヌを亡くし、早くから王子として自立を強いてきた。
その事を後悔しているにも関わらず、改めてアグノスへも強いている事実は俺を苛む。
王族として、扱うのだから王族としての自覚は早い方がいい。
それにアグノスは、出生でも苦労するのがわかっているのだ。
いずれ、アグノスは真実を知る。それに耐えられる心を養わせなければならない。
だが、こうしてディロスと離れるだけで不安定になる幼子にその真実が堪えられるか……いくら考えても悩ましい事だった。
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
視界には、穏やかに眠るディロスとアグノスの姿。
せめて、眠っている間だけでも二人の心が平穏である事を願う。
ディロスを撫で、アグノスを撫で、静かにディロスの部屋を後にする。
「浮かない顔ですねぇ」
背後から扉の閉まる音を聞きながら、廊下を歩いているといつの間にか後ろにいたローランが声をかけてきた。
「……お前の勤務時間は終わったはずだが?」
すでに他の者と警護を交換してるにも関わらず、当たり前のように現れたローランに額を押さえる。
「モリーと鍛錬した帰りです」
「使用人棟は、別だろう……」
俺達家族の住む棟と使用人の住む棟は、繋がった建物ではあるが、位置は真逆。
外で鍛錬したとしても、ここを通るのはあり得なかった。
「まぁまぁ、良いじゃないですか。陛下の居るところに俺が居るのは当たり前なんですから」
「休める時は休め」
飄々とするローランに言っても無駄だと思いながらため息を吐く。
「それより、悩んでるなら話し聞きますよー?」
俺の隣へと歩を進め、覗き込むように笑うローラン。
俺より年上のくせに、その行動が似合っている事が少し腹立たしかった。
「……一杯だけ付き合え。そして、飲んだら休め」
「はいはーい。陛下の仰せのままに」
断ったら断ったで面倒臭いのは、わかっている。
自分の時間を割いてまで、臣下として奉仕するというのなら、こちらが相手してやろう。
そんな事を考えながら、自室へと足を進めた。
45
お気に入りに追加
5,700
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
召喚された聖女の兄は、どうやら只者ではないらしい
荷稲 まこと
BL
国にほど近い魔境に現れた魔王に対抗するため、国に古くから伝わる"聖女召喚の儀"が行われた。
聖女の召喚は無事成功した--が、聖女の兄だと言う男も一緒に召喚されてしまった。
しかもその男、大事な妹だけを戦場に送る訳にはいかない、自分も同行するから鍛えてくれ、などと言い出した。
戦いの経験があるのかと問えば、喧嘩を少々したことがある程度だと言う。
危険だと止めても断固として聞かない。
仕方がないので過酷な訓練を受けさせて、自ら諦めるように仕向けることにした。
その憎まれ役に選ばれたのは、王国騎士団第3隊、通称『対魔物隊』隊長レオナルド・ランテ。
レオナルドは不承不承ながら、どうせすぐに音を上げると隊員と同じ訓練を課すが、予想外にその男は食いついてくる。
しかもレオナルドはその男にどんどん調子を狂わされていきーーー?
喧嘩無敗の元裏番長(24) × 超鈍感初心嫌われ?隊長(27)
初投稿です!温かい目で見守ってやってください。
Bたちは初めからLし始めていますが、くっつくまでかなり長いです。
物語の都合上、NL表現を含みます。
脇カプもいますが匂わせる程度です。
2/19追記 完結まで書き終わっているので毎日コンスタントに投稿していこうと思っています。
思ってたよりずっと多くの人に読んでもらえていて嬉しいです!引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
2/25 追記 誤字報告ありがとうございました!承認不要とのことで、この場でお礼申し上げます。
ちょっと目を離した隙にエラいことになっててひっくり返りました。大感謝!
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。