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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
53:離れない子供
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「ご歓談中、失礼致します。夕食の準備が整いました」
アグノスを抱き締めたまま、家族で過ごしていると夕食の準備が整ったようでメリーが声をかけてきた。
「わかった」
シュロムが頷き、立ち上がるとティグレとイデアルもそれに続く。
「アグノス、歩ける?」
「んーん……」
未だひっつき虫のアグノスに声をかけてみるが駄目なようだ。
いやいや。と首を横に振るアグノスに立ち上がれなくて困ってしまう。
「アグノス、俺では駄目か?」
「や……」
僕の様子にシュロムが助け船を出してくれるが……それも駄目で。さらに僕に抱きつく力が強くなるだけだった。
時間が経って落ち着いたかな?と思ったけど……まだまだ駄目そう。
「シュロム、今日は食事別にしてもいい?僕は、ここでアグノスと食べるから……イデアルとティグレの話を聞いてあげて」
「お前からの話も聞きたかったのだが……そうだな、そうしよう」
僕としてもお茶会でのイデアルの様子やノウリッジ様達との話をしたかったのだけど、ここはアグノスを優先してあげた方がいいと判断した。
幼い頃の反抗期らしい反抗期もなかったアグノスがここまで自分の意思を示しているのだ。
ここで時間を取ってあげるのがアグノスの為だろう。
「ありがとうシュロム」
「気にするな。お前は、アグノスの父親なんだから」
シュロムは僕の肩を軽く叩き、アグノスの頭を撫でてから、ティグレ達へと向き直る。
「さあ、行こうか」
「はい、父上」
「ディロス! アグノス! また後でな!」
「うん、また後でね」
談話室を出ていく三人を見送りながら、アグノスの頭を撫でた。
これは、今日一日はアグノスにつきっきりかな。
そんな事を思いながら、食事の準備をしてくれる侍女達を眺める。
長椅子とティーテーブルでは食べにくいから、倉庫から持ち出してきたのであろうテーブルと椅子がセッティングされていく。
「……モリー。椅子を肘掛けのない椅子に変えてもらえるかな?」
「わかりました」
設置された椅子が肘掛けのあるタイプなのを見て、モリーに変えてもらうように頼む。
この状態だとアグノスが自分で食べるかもわからない。それならば最初から膝に乗せて食べさせられるようにした方がいいだろう。
「お待たせいたしました」
僕の指示にあわせて、椅子が変更され、モリーから声がかかる。
「アグノス、あそこまでなら一緒に歩いてくれる?」
「ん……」
抱きつくアグノスにセッティングされたテーブルを指差せば、小さく頷いて膝から降りてくれた。
若干、痺れた感じのする足を伸ばしながらアグノスとテーブルに向かえば、アグノスは僕の隣から動こうとしない。
……予想は当たったようだ。
「アグノス、おいで」
「ん」
椅子に座り、膝を叩けばアグノスは僕の膝によじ登ってくる。
今日の食事は時間がかかりそうだ。
「モリー、厨房に料理を二人分一つのお皿に盛ってほしいって伝えてほしいんだけど……」
「手配済みですのでご安心ください」
すでに準備されてるだろうと思って申し訳なく頼めば、モリーは笑みを浮かべて答える。
「いつの間に……」
「椅子を変えるように言われた時には。一応、アグノス様がご自身で食べる場合も考えて二通り用意してもらいました」
驚く僕にモリーは胸を張る。侍女としての経験はまだ三年目な彼女だけど……僕の考えを読んで行動してくれる所はプロの動きだと思う。
実家のエリーやメリーだけでなく、養子先であるロンからもみっちりと教育を受けた成果だろうか……。
親しみやすいのに仕事は完璧ってすごいよね。
「ありがとうモリー」
「私は、ディロス様の侍女ですから」
ニッコリと笑うモリーの笑みは、ロンのよく浮かべる笑みによく似ていた。
アグノスを抱き締めたまま、家族で過ごしていると夕食の準備が整ったようでメリーが声をかけてきた。
「わかった」
シュロムが頷き、立ち上がるとティグレとイデアルもそれに続く。
「アグノス、歩ける?」
「んーん……」
未だひっつき虫のアグノスに声をかけてみるが駄目なようだ。
いやいや。と首を横に振るアグノスに立ち上がれなくて困ってしまう。
「アグノス、俺では駄目か?」
「や……」
僕の様子にシュロムが助け船を出してくれるが……それも駄目で。さらに僕に抱きつく力が強くなるだけだった。
時間が経って落ち着いたかな?と思ったけど……まだまだ駄目そう。
「シュロム、今日は食事別にしてもいい?僕は、ここでアグノスと食べるから……イデアルとティグレの話を聞いてあげて」
「お前からの話も聞きたかったのだが……そうだな、そうしよう」
僕としてもお茶会でのイデアルの様子やノウリッジ様達との話をしたかったのだけど、ここはアグノスを優先してあげた方がいいと判断した。
幼い頃の反抗期らしい反抗期もなかったアグノスがここまで自分の意思を示しているのだ。
ここで時間を取ってあげるのがアグノスの為だろう。
「ありがとうシュロム」
「気にするな。お前は、アグノスの父親なんだから」
シュロムは僕の肩を軽く叩き、アグノスの頭を撫でてから、ティグレ達へと向き直る。
「さあ、行こうか」
「はい、父上」
「ディロス! アグノス! また後でな!」
「うん、また後でね」
談話室を出ていく三人を見送りながら、アグノスの頭を撫でた。
これは、今日一日はアグノスにつきっきりかな。
そんな事を思いながら、食事の準備をしてくれる侍女達を眺める。
長椅子とティーテーブルでは食べにくいから、倉庫から持ち出してきたのであろうテーブルと椅子がセッティングされていく。
「……モリー。椅子を肘掛けのない椅子に変えてもらえるかな?」
「わかりました」
設置された椅子が肘掛けのあるタイプなのを見て、モリーに変えてもらうように頼む。
この状態だとアグノスが自分で食べるかもわからない。それならば最初から膝に乗せて食べさせられるようにした方がいいだろう。
「お待たせいたしました」
僕の指示にあわせて、椅子が変更され、モリーから声がかかる。
「アグノス、あそこまでなら一緒に歩いてくれる?」
「ん……」
抱きつくアグノスにセッティングされたテーブルを指差せば、小さく頷いて膝から降りてくれた。
若干、痺れた感じのする足を伸ばしながらアグノスとテーブルに向かえば、アグノスは僕の隣から動こうとしない。
……予想は当たったようだ。
「アグノス、おいで」
「ん」
椅子に座り、膝を叩けばアグノスは僕の膝によじ登ってくる。
今日の食事は時間がかかりそうだ。
「モリー、厨房に料理を二人分一つのお皿に盛ってほしいって伝えてほしいんだけど……」
「手配済みですのでご安心ください」
すでに準備されてるだろうと思って申し訳なく頼めば、モリーは笑みを浮かべて答える。
「いつの間に……」
「椅子を変えるように言われた時には。一応、アグノス様がご自身で食べる場合も考えて二通り用意してもらいました」
驚く僕にモリーは胸を張る。侍女としての経験はまだ三年目な彼女だけど……僕の考えを読んで行動してくれる所はプロの動きだと思う。
実家のエリーやメリーだけでなく、養子先であるロンからもみっちりと教育を受けた成果だろうか……。
親しみやすいのに仕事は完璧ってすごいよね。
「ありがとうモリー」
「私は、ディロス様の侍女ですから」
ニッコリと笑うモリーの笑みは、ロンのよく浮かべる笑みによく似ていた。
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