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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
52:第二王子の覚悟
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「イデアルが子を成すまで軍に所属せずに過ごす事もできるが……お前の性格ではそれは望まんだろう」
ほんの少し諦めたような表情で息を吐いたシュロム。
僕の知る未来を少し話してあるから……その世界の自分が同じように諦めたのを想像しているのかもしれない。
「もし、イデアルが子を成す前に軍に所属するというのなら……お前は、部下だけでなく、国も家族も守り、自分を生かさねばならない。いや、死ぬ事は許されない」
憧れ。それだけで、成せる夢ではない。
他の軍人以上に、王族以上に重いものを背負う覚悟が必要なものだった。
だから、シュロムは問う。
「それもお前は理解しているか? それを果たす覚悟はあるか?」
と。
いつも以上に険しい真剣な表情のシュロムに見ているだけの僕ですら息が詰まりそうになった。
だけど、ティグレは視線を逸らさない。
幼くも決意を秘めた目でシュロムを見つめていた。
「……俺は、父上や兄上を守りたい。兄上は、絶対に父上のような良い王様になるって信じてるから。想像したくないけど……父上の言う俺が王位を継ぐ可能性もなんとなくわかってる……でも、俺は守られるんじゃなくて! 守れる男になりたいんだ! 家族だけじゃなくて、国も、国民も……全部!」
胸の前でぎゅっと拳を握り叫ぶティグレにシュロムの表情が緩む。
「そうか……」
そう言ってティグレの肩にシュロムは手を置いた。
「今のお前の覚悟は理解した。お前の望む道は、お前が想像するより困難な道だ。だが、その覚悟に俺も応えよう」
「じゃあ!」
シュロムの言葉にティグレの表情が輝く。
「護衛騎士に鍛練をつけてもらえるように、イロアスに話を通しておこう。体を鍛えるのに軍人も護衛騎士も差はないからな」
「はい!」
「鍛練を続けて……成人を迎える頃にその覚悟がかわらなかったら軍にも話をつけるとしよう」
「お願いします!」
やる気に満ちたティグレの顔にシュロムの表情が慈しむようなものに変わった。
父親として、ティグレの成長が嬉しいんだろうなぁ……。
イデアルも、ティグレも……僕達の知らないところで成長している。
置いていかれるような気持ちもあるけど……それすらも嬉しかった。
「……父様」
「なぁに、アグノス?」
「……なんでもない」
ティグレを眺めているとアグノスが僕を呼んだが、すぐに僕の胸へと顔を埋めてしまう。
……アグノスには、このままもう少し甘えん坊でいてほしい。
そんな事を思いながら、まだまだ幼い体を抱き締めた。
ほんの少し諦めたような表情で息を吐いたシュロム。
僕の知る未来を少し話してあるから……その世界の自分が同じように諦めたのを想像しているのかもしれない。
「もし、イデアルが子を成す前に軍に所属するというのなら……お前は、部下だけでなく、国も家族も守り、自分を生かさねばならない。いや、死ぬ事は許されない」
憧れ。それだけで、成せる夢ではない。
他の軍人以上に、王族以上に重いものを背負う覚悟が必要なものだった。
だから、シュロムは問う。
「それもお前は理解しているか? それを果たす覚悟はあるか?」
と。
いつも以上に険しい真剣な表情のシュロムに見ているだけの僕ですら息が詰まりそうになった。
だけど、ティグレは視線を逸らさない。
幼くも決意を秘めた目でシュロムを見つめていた。
「……俺は、父上や兄上を守りたい。兄上は、絶対に父上のような良い王様になるって信じてるから。想像したくないけど……父上の言う俺が王位を継ぐ可能性もなんとなくわかってる……でも、俺は守られるんじゃなくて! 守れる男になりたいんだ! 家族だけじゃなくて、国も、国民も……全部!」
胸の前でぎゅっと拳を握り叫ぶティグレにシュロムの表情が緩む。
「そうか……」
そう言ってティグレの肩にシュロムは手を置いた。
「今のお前の覚悟は理解した。お前の望む道は、お前が想像するより困難な道だ。だが、その覚悟に俺も応えよう」
「じゃあ!」
シュロムの言葉にティグレの表情が輝く。
「護衛騎士に鍛練をつけてもらえるように、イロアスに話を通しておこう。体を鍛えるのに軍人も護衛騎士も差はないからな」
「はい!」
「鍛練を続けて……成人を迎える頃にその覚悟がかわらなかったら軍にも話をつけるとしよう」
「お願いします!」
やる気に満ちたティグレの顔にシュロムの表情が慈しむようなものに変わった。
父親として、ティグレの成長が嬉しいんだろうなぁ……。
イデアルも、ティグレも……僕達の知らないところで成長している。
置いていかれるような気持ちもあるけど……それすらも嬉しかった。
「……父様」
「なぁに、アグノス?」
「……なんでもない」
ティグレを眺めているとアグノスが僕を呼んだが、すぐに僕の胸へと顔を埋めてしまう。
……アグノスには、このままもう少し甘えん坊でいてほしい。
そんな事を思いながら、まだまだ幼い体を抱き締めた。
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