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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

37:離宮観光

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「普段学友と学ぶ時はこの部屋に招いて……休憩する時は隣の談話室でお茶をしたりします」

 案内されたイデアルの離宮は、家族の離宮やシュロムの離宮よりは小さく、以前僕に与えられていた離宮よりは大きなものだった。

 談話室の内装は、華美ではあるものの白を貴重とした落ち着きのあるもので、学友との勉強部屋は装飾を最低限にされ、中央に大きなテーブルが鎮座し、黒板や本棚で囲まれている様子は、軍部などの作戦会議室のような雰囲気がある。

 イデアルの離宮も二年前に住んでいた所から変わり、イデアル自身が気に入った離宮と内装を選んでいるからどれもイデアルの趣味なのだろう。

 シュロムも王として、それらしい内装にしているけど、自室は以外とシンプルだったりするからこの辺りの趣味は二人とも似てるのだと思う。

「ディロス様?」
「あ……ごめんね。イデアルらしい内装だと思って……それに、シュロムの好みとも似てるから、やっぱり親子なんだなって」

 二人の親子らしい共通点が微笑ましくて笑っていたらしく、正直に答える。

「そ、そうでしょうか……? でも、父上の自室や書庫に憧れていたので……その影響、ですかね」

 シュロムと好みが似ていると言われて、照れながらもそう答えたイデアルが可愛い。

 シュロムの真似だとしたら、イデアルのような大人びた子でも親の真似をしたくなるのだと思うと微笑ましいからだ。

「シュロムを呼んだ事ってあったけ?」
「いえ……父上はお忙しいですから」

 となると、家族でここに来たのは僕が初めてか……。

 ティグレもアグノスも今の離宮からほとんど出ないからなぁ……。

 出ても庭園の散歩くらいだし、イデアルが離宮にいる時は、学友が来てるから訪ねると邪魔になっちゃうし……。

 僕を嬉しそうに案内するくらいだから、皆の事を案内させると喜びそうなんだよね。

「……今度、シュロム達も呼んでみない? イデアルが家族でのお茶会を主催する形でさ」

 僕の言葉にイデアルが目を瞬かせながら、頬を紅潮させる。

「い、良いのでしょうか?」
「シュロムもティグレ達も喜ぶと思うよ。イデアルも自分で選んだ離宮見せたいでしょう?」
「はい……!」

 シュロムも自分の趣味に影響を受けた内装見るのは嬉しいと思う。

 ティグレもあと二年で自分で離宮を選ぶ事になるし……参考になるだろう。

 あんまり飾りたてるの好きじゃないから一人で決めさせると殺風景になりそうなんだよね……。

 最近、王族としての飾りたてた服を面倒臭そうに着るようになったティグレを思い出して、内心苦笑する。

 まあ……ティグレは、イデアルも大好きだからイデアルが自分で決めた内装を見せたら真似すると思う。

 性格的にもっとシンプルになりそうだけども。

「今日の夕食で報告が終わったら、シュロムにもお願いしてみよう」
「はい!」

 僕の言葉にご機嫌で頷くイデアル。

 これからマリカ嬢達とのお茶会があるけど、良い感じにリラックスできたようだ。

 僕も少しリラックスできた気がする。

「ディロス様、イデアル様。そろそろお時間です」
「うん、ありがとうモリー」

 側で控えていたモリーにそう声をかけられ、もうそんな時間かと思う。

「それじゃあ、イデアル。庭までのエスコートお願いできる?」
「お任せください!」

 繋いだままの手に導かれながら、マリカ嬢達を迎えるべく庭へと向かう。

 いい気分転換になったけど……やっぱり時間が近づくと改めて緊張するのだった。
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