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一部番外編
他視点3-2:王としての覚悟[シュロム視点]
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ディロスとアグノスが悪用されない為に、忠誠の誓いのような王家の秘術を用いる事もできるが……それが発動した時二人に訪れるのは死だ。
王族の姫や貴族の令嬢達が攫われた際、自身の尊厳を守る為の毒に近い物しかないので俺の望む効果のあるものではなかった。
どうにか魔法や魔道具の類で身を守るものも考えねばならないが……まずは、立場か。
ディロスに与えられるのは今の側妃の立場が最高のものだが、アグノスは違う。
現状ディロスの連れ子という立場ではあるが、王族を表す特徴を持っているがゆえにディロスの血を引いていない事はすでに知られている。
グラオザーム侯爵の夫であったディロスの連れ子と言う事はグラオザーム侯爵の子である事に間違いはなく、恋多き侯爵が産み落とした子となれば当てはまる愛人はイリスィオしかいない。
事実、すでにその噂は貴族間に広まっているし、ディロスの側妃入りの為に俺が意図して広めたようなものだ。
だが騒動の後、改めて調査した結果、イリスィオが今回の事に関与していた事が発覚している。
紛失していた魔道具以外にも離宮群の見取り図。王家の隠し通路を記した地図。水門の警備体制についての記述。それらを記した文字は王宮に残されたイリスィオの筆跡と同一のもので、それらすべてはイリスィオが関係を持っていた令嬢達の家から新たに発見された。
イリスィオも、グラオザーム侯爵も、派手に遊んでいるように見えて、その大部分は反乱の為の行動だったというわけだ。
イリスィオには暗部もつけていたが……流石に耳元でささやかれる睦言や恋文に潜められた独自の暗号にまで気づくのは至難の業だとしか言いようがない。
俺の前では、愚弟としか言いようがない女好きで仕事のできない男だった癖に……爪を隠してここまでしてやられたのが腹立たしくて仕方がないな。
生まれを恨むことなく、正しく生きていれば王弟として十分な地位につけたものをと思いつつも、あれが王家を恨むのも仕方がないという気持ちもわからなくはない。
互いに母が違うというだけで、政敵のように扱われていたし、幼少期の交友などなかった。あれがどのような環境にいたかはわからないが……俺の予備として扱われていたあいつが、母親である側妃やその親族、父王にどのように扱われていたのか、母上やエリーに守られていた俺には想像もつかないほどに酷い環境にいた可能性だってあるのだから。
そんな事を考えながら、ため息を吐き、思考をアグノスの事へと戻す。
最初はその存在を疎ましく思ったアグノスだが、今ではもう一人の息子のように思っている。
自身の立場を理解するにはまだ幼く、今はまだすべてを伝える事は出来ないが……それでもイデアルやティグレと変わらぬ愛情を注げたらいいと考えていた。
それで、俺の罪が許されるとは思わないがな。
アグノスが成長し、どのような選択を下すか。それは予想もできない。
それでも、十を迎えて正式にお披露目することになったら正式に俺の養子として迎えようと思っている。
王位継承権を与える事はできないが……王族として、正式に王子と名乗れるようになれば、その立場も安定したものになるはずだ。
……万が一にでもイリスィオと同じ道を辿るとしたら、その時は俺がその首を落とす覚悟を決めなければならないのだが……ディロスにも、子供達にも恨まれる事だろうな。
王族の姫や貴族の令嬢達が攫われた際、自身の尊厳を守る為の毒に近い物しかないので俺の望む効果のあるものではなかった。
どうにか魔法や魔道具の類で身を守るものも考えねばならないが……まずは、立場か。
ディロスに与えられるのは今の側妃の立場が最高のものだが、アグノスは違う。
現状ディロスの連れ子という立場ではあるが、王族を表す特徴を持っているがゆえにディロスの血を引いていない事はすでに知られている。
グラオザーム侯爵の夫であったディロスの連れ子と言う事はグラオザーム侯爵の子である事に間違いはなく、恋多き侯爵が産み落とした子となれば当てはまる愛人はイリスィオしかいない。
事実、すでにその噂は貴族間に広まっているし、ディロスの側妃入りの為に俺が意図して広めたようなものだ。
だが騒動の後、改めて調査した結果、イリスィオが今回の事に関与していた事が発覚している。
紛失していた魔道具以外にも離宮群の見取り図。王家の隠し通路を記した地図。水門の警備体制についての記述。それらを記した文字は王宮に残されたイリスィオの筆跡と同一のもので、それらすべてはイリスィオが関係を持っていた令嬢達の家から新たに発見された。
イリスィオも、グラオザーム侯爵も、派手に遊んでいるように見えて、その大部分は反乱の為の行動だったというわけだ。
イリスィオには暗部もつけていたが……流石に耳元でささやかれる睦言や恋文に潜められた独自の暗号にまで気づくのは至難の業だとしか言いようがない。
俺の前では、愚弟としか言いようがない女好きで仕事のできない男だった癖に……爪を隠してここまでしてやられたのが腹立たしくて仕方がないな。
生まれを恨むことなく、正しく生きていれば王弟として十分な地位につけたものをと思いつつも、あれが王家を恨むのも仕方がないという気持ちもわからなくはない。
互いに母が違うというだけで、政敵のように扱われていたし、幼少期の交友などなかった。あれがどのような環境にいたかはわからないが……俺の予備として扱われていたあいつが、母親である側妃やその親族、父王にどのように扱われていたのか、母上やエリーに守られていた俺には想像もつかないほどに酷い環境にいた可能性だってあるのだから。
そんな事を考えながら、ため息を吐き、思考をアグノスの事へと戻す。
最初はその存在を疎ましく思ったアグノスだが、今ではもう一人の息子のように思っている。
自身の立場を理解するにはまだ幼く、今はまだすべてを伝える事は出来ないが……それでもイデアルやティグレと変わらぬ愛情を注げたらいいと考えていた。
それで、俺の罪が許されるとは思わないがな。
アグノスが成長し、どのような選択を下すか。それは予想もできない。
それでも、十を迎えて正式にお披露目することになったら正式に俺の養子として迎えようと思っている。
王位継承権を与える事はできないが……王族として、正式に王子と名乗れるようになれば、その立場も安定したものになるはずだ。
……万が一にでもイリスィオと同じ道を辿るとしたら、その時は俺がその首を落とす覚悟を決めなければならないのだが……ディロスにも、子供達にも恨まれる事だろうな。
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