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一部番外編
他視点2-1:ディロス様という人[イデアル視点]
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ディロス様は不思議な方だ。
最初は、父上に取り入ろうとする忌々しい男だと思っていたのだけど、話してみれば慎ましく優しい方だった。
いや、最初から知っていた。父上とティグレが楽しそうに話す内容はどれもその人柄を感じ取れるものだったにも関わらず、私の関わらぬ所で二人と仲を深めていくディロス様への嫉妬心からその全てを悪しき物だと捕らえていただけの事だった。
抱えていた嫉妬心と自身に課せられた責務により、精神的に限界になった私がティグレ達に八つ当たりをした時も、叱るわけでもなく、諭すだけだったのだから……。
泣きながら言葉を零す私の話を静かに聞いてくれて、優しく諭すその人柄に、父上やティグレが惹かれるのも仕方がないと思った。
泣きじゃくる私を抱きしめ、背中を撫でてくれる手に、今まで感じた事のない安堵を感じ、その腕の中で眠てしまった事は、今思い出しても恥ずかしい。
目覚めてからも、私を王子として扱いながらも、それと同時に子供として扱ってくれるディロス様に、私の心も惹かれてしまうのは仕方のない事だったと思う。
男でありながら、父上の側妃であるディロス様に想いを寄せるのは愚かな事だと思ったが、それでも……この方が隣に居てくれれば道を違うことなく王としてあれるのではないかと思ってしまったのだ。
だが、そんな思いも直ぐに崩れた。
書斎に案内され、そこにある本が父上の物だと告げた時、ディロス様は顔を赤くして崩れ落ちた。
その表情は、明らかに父上に想いを寄せている顔で、私の入り込める余地は一切ないのだと気づかされた。
失恋した事による悲しさと、このまま二人が結ばれてくれたらという思いと。そんな複雑な感情が入り混じるままにその日を過ごし、眠りについた。
そして、朝目覚めた時。父上が隣にいた事に驚き、二人で散歩中の対話で泣き、ディロス様の離宮に戻り、ディロス様に迎え入れられた。
その時の父上とディロス様の様子は、私を気遣う優しいもので、子供として二人に甘えられる事に幸福感を感じたのも事実だった。
それから、ディロス様の離宮で過ごす事になったのだが……二人の姿を見る度に距離が近い事に気づき、おそらく結ばれたのだろうなと察した。
私達の前では親としての顔を優先するが、互いの視線が交わった時。お互いしか見えていないような笑みを浮かべるのだから察するというものだ。
初恋はその日のうちに破れたし、子供として過ごす居心地の良さを知ってしまった今では二人が仲睦まじくしているのを見ると複雑さと同時に嬉しくなる。
一度、ディロス様が命を落としかけたから尚更。
最初は、父上に取り入ろうとする忌々しい男だと思っていたのだけど、話してみれば慎ましく優しい方だった。
いや、最初から知っていた。父上とティグレが楽しそうに話す内容はどれもその人柄を感じ取れるものだったにも関わらず、私の関わらぬ所で二人と仲を深めていくディロス様への嫉妬心からその全てを悪しき物だと捕らえていただけの事だった。
抱えていた嫉妬心と自身に課せられた責務により、精神的に限界になった私がティグレ達に八つ当たりをした時も、叱るわけでもなく、諭すだけだったのだから……。
泣きながら言葉を零す私の話を静かに聞いてくれて、優しく諭すその人柄に、父上やティグレが惹かれるのも仕方がないと思った。
泣きじゃくる私を抱きしめ、背中を撫でてくれる手に、今まで感じた事のない安堵を感じ、その腕の中で眠てしまった事は、今思い出しても恥ずかしい。
目覚めてからも、私を王子として扱いながらも、それと同時に子供として扱ってくれるディロス様に、私の心も惹かれてしまうのは仕方のない事だったと思う。
男でありながら、父上の側妃であるディロス様に想いを寄せるのは愚かな事だと思ったが、それでも……この方が隣に居てくれれば道を違うことなく王としてあれるのではないかと思ってしまったのだ。
だが、そんな思いも直ぐに崩れた。
書斎に案内され、そこにある本が父上の物だと告げた時、ディロス様は顔を赤くして崩れ落ちた。
その表情は、明らかに父上に想いを寄せている顔で、私の入り込める余地は一切ないのだと気づかされた。
失恋した事による悲しさと、このまま二人が結ばれてくれたらという思いと。そんな複雑な感情が入り混じるままにその日を過ごし、眠りについた。
そして、朝目覚めた時。父上が隣にいた事に驚き、二人で散歩中の対話で泣き、ディロス様の離宮に戻り、ディロス様に迎え入れられた。
その時の父上とディロス様の様子は、私を気遣う優しいもので、子供として二人に甘えられる事に幸福感を感じたのも事実だった。
それから、ディロス様の離宮で過ごす事になったのだが……二人の姿を見る度に距離が近い事に気づき、おそらく結ばれたのだろうなと察した。
私達の前では親としての顔を優先するが、互いの視線が交わった時。お互いしか見えていないような笑みを浮かべるのだから察するというものだ。
初恋はその日のうちに破れたし、子供として過ごす居心地の良さを知ってしまった今では二人が仲睦まじくしているのを見ると複雑さと同時に嬉しくなる。
一度、ディロス様が命を落としかけたから尚更。
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