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一部番外編
後日談1-7:お風呂タイム
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夕食を賑やかに終え、お風呂に入るというところで、ティグレが声をあげる。
「みんなでふろ入りたい!」
そんなティグレの言葉にアグノスが目を輝かせ、イデアルも期待するかのようにシュロムと僕を見上げているのにシュロムと視線を合わせて笑う。
普段は、専属の侍女達や離宮付きの従者にお願いしているのだけど、たまにはいいかと承諾して、皆で浴室へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室ではしゃぐ子供達を宥めながら、幼いアグノスとティグレの体を僕とシュロムで洗う。
「とうさまもあらってあげるー!」
「じゃあ、おれはちちうえー!」
アグノスの体を洗い終わったら、そんな事をアグノスから言われ、ティグレもそれに乗る。
「ありがとうアグノス。じゃあ、背中洗ってもらってもいい?」
「はーい!」
「それじゃあ、頼もうか」
「うん!」
僕達にお願いされてやる気十分なアグノスとティグレが、僕とシュロムの背中を洗っている姿を湯船に浸かったイデアルが微笑ましくも羨ましそうに見ているのに気づく。
「シュロム」
「ん?……ああ」
僕から声をかけるよりはシュロムから声をかけてもらった方が嬉しいだろうと思って、シュロムへと声をかけ、イデアルを示せば、シュロムも察したように頷いた。
「イデアル、洗い終わったら流してもらってもいいか?」
「っ!はい!」
シュロムの言葉にいそいそと湯船から上がり、桶を手に取るイデアルが可愛くて思わず笑みが浮かんでしまう。
「ディロス様も流して差し上げますね!」
「うん、お願い」
ニコニコと嬉しそうにお湯の入った桶を持つイデアルからの申し出を断る理由もなく、そのままお願いする。
シュロムの次にイデアルからお湯をかけてもらって、皆で湯船に浸かる。
浴室自体もそうだけど、大人二人と子供三人入っても余裕があるから僕のいた離宮よりずっと広いのは、さすが王様の離宮だよね。
そこに僕が居候させてもらっているのもなんだか不思議な話だけど。
「とうさまー!」
「なんだいアグノス」
湯船でティグレと遊んでいたアグノスが僕のところへと向かってくるのを腕を広げて迎え入れる。
「ぎゅー!」
どうやら甘えたかったらしいアグノスがそのまま抱きついてきたのを抱き締め返す。
あの日痛めた肩は、ある程度よくなっているけど、念のためしばらく重いものを持つのは禁止されているから、アグノスを抱き上げる事もなくなった。
だからか、こうやって座っている時にくっついてくる事が増えたのだけど……久しぶりに一緒に入浴したのもあって僕に抱えられながらお湯に浸かりたかったのかもしれない。
「アグノスいいなー!」
「……ティグレ俺のところにくるか?」
「いいの!あっ……いいんですか!」
羨ましそうに声を上げたティグレにシュロムが声をかけると、嬉しさから一度敬語が飛んだティグレに僕もシュロムもイデアルも笑う。
アグノスはなんで僕達が笑っているかわからなかったみたいだけど、ティグレ以外が笑っているからか嬉しそうな表情をしていた。
「っ……!」
ティグレはちょっと恥ずかしそうにしてたけど、おずおずとシュロムの膝に座って、満足そうに頬を緩める。
素直すぎる反応にまた笑みが溢れてしまったのは仕方ないと思うんだ。
そうして、和やかに入浴を楽しんでいたのだけど……。
「とうさまぁああああっ!」
「ディロスぅううううっ!」
「ディロス様ぁあああっ!」
未だ療養中の自分の体力を見誤ってのぼせた僕に子供達の悲鳴が浴室どころか離宮中に響き渡るのは、割りとすぐだった。
「みんなでふろ入りたい!」
そんなティグレの言葉にアグノスが目を輝かせ、イデアルも期待するかのようにシュロムと僕を見上げているのにシュロムと視線を合わせて笑う。
普段は、専属の侍女達や離宮付きの従者にお願いしているのだけど、たまにはいいかと承諾して、皆で浴室へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室ではしゃぐ子供達を宥めながら、幼いアグノスとティグレの体を僕とシュロムで洗う。
「とうさまもあらってあげるー!」
「じゃあ、おれはちちうえー!」
アグノスの体を洗い終わったら、そんな事をアグノスから言われ、ティグレもそれに乗る。
「ありがとうアグノス。じゃあ、背中洗ってもらってもいい?」
「はーい!」
「それじゃあ、頼もうか」
「うん!」
僕達にお願いされてやる気十分なアグノスとティグレが、僕とシュロムの背中を洗っている姿を湯船に浸かったイデアルが微笑ましくも羨ましそうに見ているのに気づく。
「シュロム」
「ん?……ああ」
僕から声をかけるよりはシュロムから声をかけてもらった方が嬉しいだろうと思って、シュロムへと声をかけ、イデアルを示せば、シュロムも察したように頷いた。
「イデアル、洗い終わったら流してもらってもいいか?」
「っ!はい!」
シュロムの言葉にいそいそと湯船から上がり、桶を手に取るイデアルが可愛くて思わず笑みが浮かんでしまう。
「ディロス様も流して差し上げますね!」
「うん、お願い」
ニコニコと嬉しそうにお湯の入った桶を持つイデアルからの申し出を断る理由もなく、そのままお願いする。
シュロムの次にイデアルからお湯をかけてもらって、皆で湯船に浸かる。
浴室自体もそうだけど、大人二人と子供三人入っても余裕があるから僕のいた離宮よりずっと広いのは、さすが王様の離宮だよね。
そこに僕が居候させてもらっているのもなんだか不思議な話だけど。
「とうさまー!」
「なんだいアグノス」
湯船でティグレと遊んでいたアグノスが僕のところへと向かってくるのを腕を広げて迎え入れる。
「ぎゅー!」
どうやら甘えたかったらしいアグノスがそのまま抱きついてきたのを抱き締め返す。
あの日痛めた肩は、ある程度よくなっているけど、念のためしばらく重いものを持つのは禁止されているから、アグノスを抱き上げる事もなくなった。
だからか、こうやって座っている時にくっついてくる事が増えたのだけど……久しぶりに一緒に入浴したのもあって僕に抱えられながらお湯に浸かりたかったのかもしれない。
「アグノスいいなー!」
「……ティグレ俺のところにくるか?」
「いいの!あっ……いいんですか!」
羨ましそうに声を上げたティグレにシュロムが声をかけると、嬉しさから一度敬語が飛んだティグレに僕もシュロムもイデアルも笑う。
アグノスはなんで僕達が笑っているかわからなかったみたいだけど、ティグレ以外が笑っているからか嬉しそうな表情をしていた。
「っ……!」
ティグレはちょっと恥ずかしそうにしてたけど、おずおずとシュロムの膝に座って、満足そうに頬を緩める。
素直すぎる反応にまた笑みが溢れてしまったのは仕方ないと思うんだ。
そうして、和やかに入浴を楽しんでいたのだけど……。
「とうさまぁああああっ!」
「ディロスぅううううっ!」
「ディロス様ぁあああっ!」
未だ療養中の自分の体力を見誤ってのぼせた僕に子供達の悲鳴が浴室どころか離宮中に響き渡るのは、割りとすぐだった。
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