122 / 180
第122話 お世話になります
しおりを挟む
城から用意された馬車に乗っておよそ一週間。色んな町を経由してアルパルタの首都であるサウザールに着く。
俺達五人は城の前で止まった馬車から下りて、軽く背伸びをする。
「ふう、やっと着いたな。ここが国王の住んでるサウザール城か」
「見て! あそこの塔に風車が付いてあるわよ! オシャレなお城ね」
リネットが城の両隣に建てられた細長い塔を指差す。
「へえ、あそこに登れるんだったら敵がどこから攻めて来るか分かるかもしれないな。まあ、とにかく中に入れてもらおうか」
俺達は城の門番にサルブレムから来たことを伝えて、クリケットさんを呼んでもらう。
少し待たされた後城の中に通され、兵士にある部屋へと案内される。
兵士がノックをすると、部屋の中からクリケットさんが出てくる。
「みんな久しぶりだな。ダルカデルから無事に帰って来れたようでなによりだ」
「お久しぶりですクリケットさん。先にこっちに来てたんですね」
「ああ、そろそろアークの連中が動き出すだろうから、こっちで軍備の強化していたんだ」
「なんでもグラヴェールの軍勢がこっちに向かってるらしいですけど、それはもう聞きましたか?」
「伝令兵にその話は聞いたよ。奴等の目的は知らぬが私もすぐに出るつもりだ」
「俺達はエクシエルさんからオーブを守るように言われたので、後でそれがある場所だけ教えて下さい」
「了解だ。時間もあまりないので、今から案内しよう」
そう言ってクリケットさんは歩き出し、俺達に花の模様が入った腕章を配る。
「その腕章は我々がサルブレムからの援軍であるということの証だから後で着けておいてくれ」
「サルブレムからアルパルタに結構な人達が援軍に来てるらしいですね」
「サルブレムだけではなく色んな国からも援軍が来ている。いかにグラヴェールといえど、この国を攻め落とすことは出来ないさ」
「突然仕掛けてきましたもんね。クリケットさんも前線に出るんですか?」
「ああ、後二、三日もすればこの国に入ってくるだろうから急がないとな。もっとも、サルブレムからの情報がなければこんなに早く動けなかっただろう」
「この国に入って来る前に止めたいですし、グラヴェールにいる謎の兵士達はアークを追い返すくらいの力がありますからね」
「すでに国境付近に兵を出発させてるから、もし攻めてきたとしてもそこで食い止められるはずだ。こちらの数も多いから君達は安心してここで待っているといい」
城を出てから二十分ほど歩いていくと、サルブレムと同じような神殿が見えてくる。
神殿に近づくにしたがって兵士の数が増えていってるところをみると、かなり厳重な警備態勢を取っているのが分かる。
神殿の前に到着し、クリケットさんが足を止める。
「見たら分かると思うがこの神殿の中にSSランクのギフトがある。結界を強化してあるので不用意に近づかないようにな」
「ここに最後のオーブが……。神殿はサルブレムと同じような作りなんですね」
「いつ建てられたものかは不明らしいが、グラヴェールとムングスルドにも同じ神殿がある」
この世界の歴史ってのは教えてもらってないけど、このオーブってのは一体誰が作ったんだろうなあ。
「これを使わせてはなりません……」
少し遠くから神殿を眺めていたら、突然背後から聞き覚えのない声が聞こえてきたので、慌てて振り向く。
振り向くと、白いドレスを着た金髪の女性が物憂げな表情をして立っていて、クリケットさんがその女性に声を掛ける。
「フレール様! どうしてこのような場所に?」
「こんにちはクリケットさん。城にいても窮屈だったので気晴らしに散歩をしてたのです。そちらの方達は?」
「彼等は異世界から来た人間で……まあ、勇者みたいなものです。今回の作戦ではここにあるオーブを守ってもらう予定です」
「随分と若い勇者の方々なんですね。初めまして私はアルパルタを治めているフレールと申します」
フレールさんは微笑みながら俺達に深々とお辞儀をする。
俺達もそれにつられて深くお辞儀をする。
「こちらこそお世話になります。まさか、この国の国王様が女性の方とは思いませんでした」
「数年前に父が亡くなったので私が後を継いだんです。色んな人の助けを借りながらではありますけど、一応この国を担わせていただいてます」
多分エクシエルさんより少し年上くらいだろうけど、この人がアルパルタの女王様ってことか。
「というわけだから、君達もフレール様に失礼のないように頼むぞ」
「ええ、しばらくこの国に滞在させてもらいますからね。よろしくお願いしますフレール様」
「いえいえ、皆さんは異世界から来たお人達ですし、助けてもらってるのはこちらなのであまり気を使わないで下さい。様付けなんてしないでいいですからね」
「それはそうとフレール様。お付きの者はどこにいったのです? ここも安全とは言えませんから早く城に戻られた方が良いかと」
クリケットさんがフレールさんにそう聞いたそのとき、黒い服を着た高齢の男が何かを叫びながら走ってくる。
「姫さ……フレール様!」
「そんなに急いでどうしたのです? セバス」
「どうしたもこうしたもありません! さっきからフレール様を探してたんです!」
「そうだったのですか。散歩をしていたらオーブが気になったものですから少し様子を見に来たのです」
「それならば私に一言言ってから出掛けて下さい。どこに行ったのか城中の者に聞き回ったんですから」
「ふふっ、それは悪いことをしたわね」
「昔とは違うのですから勝手に動かれては困ります。ご自身のお立場をお考え下さい」
「セバス殿の言う通りですぞ。今やあなたはこの国の女王なのですからな」
セバスの後ろから髪を肩まで伸ばした年配の男と、マントを羽織った青年が姿を現す。
二人の登場にフレールの顔が険しくなり、やや厳しい口調になる。
「あなたに言われずとも解っておりますデメル大臣。すぐに城へ戻りますので心配は無用です」
「ならばよろしい。これから戦になりますから、あまり出歩かないようにお願いしますよ。クリケット殿もご一緒のようですが、何かあったのですか?」
「サルブレムから来た勇者様達が、この神殿を守ってくれるということで、少し話をしていただけです」
「ほう……。では、そちらの少年達がサルブレムの勇者達ですか。勇者の皆さんよろしく頼みますぞ」
デメル大臣は俺達に軽く頭を下げ、マントを着た青年を紹介してくれる。
「彼は我がサウザールの勇者でアサクラといいます。他の者はまた後日紹介しましょう」
紹介されたアサクラは手を差し出して俺に
握手を求めてくる。
「俺はアサクラ。よろしくね。えーと……」
「俺はソウタです。こちらこそお願いします」
俺はアサクラさんと握手をする。
「僕達は城の警護に付くからオーブの方はソウタ君達に任せるよ。お互い頑張ろう!」
「はい! どうにかこの国を守りきりましょう」
なんだ、アルパルタの勇者は良い人じゃないか。これなら他の人達ともうまくやっていけるかもしれないな。
俺達五人は城の前で止まった馬車から下りて、軽く背伸びをする。
「ふう、やっと着いたな。ここが国王の住んでるサウザール城か」
「見て! あそこの塔に風車が付いてあるわよ! オシャレなお城ね」
リネットが城の両隣に建てられた細長い塔を指差す。
「へえ、あそこに登れるんだったら敵がどこから攻めて来るか分かるかもしれないな。まあ、とにかく中に入れてもらおうか」
俺達は城の門番にサルブレムから来たことを伝えて、クリケットさんを呼んでもらう。
少し待たされた後城の中に通され、兵士にある部屋へと案内される。
兵士がノックをすると、部屋の中からクリケットさんが出てくる。
「みんな久しぶりだな。ダルカデルから無事に帰って来れたようでなによりだ」
「お久しぶりですクリケットさん。先にこっちに来てたんですね」
「ああ、そろそろアークの連中が動き出すだろうから、こっちで軍備の強化していたんだ」
「なんでもグラヴェールの軍勢がこっちに向かってるらしいですけど、それはもう聞きましたか?」
「伝令兵にその話は聞いたよ。奴等の目的は知らぬが私もすぐに出るつもりだ」
「俺達はエクシエルさんからオーブを守るように言われたので、後でそれがある場所だけ教えて下さい」
「了解だ。時間もあまりないので、今から案内しよう」
そう言ってクリケットさんは歩き出し、俺達に花の模様が入った腕章を配る。
「その腕章は我々がサルブレムからの援軍であるということの証だから後で着けておいてくれ」
「サルブレムからアルパルタに結構な人達が援軍に来てるらしいですね」
「サルブレムだけではなく色んな国からも援軍が来ている。いかにグラヴェールといえど、この国を攻め落とすことは出来ないさ」
「突然仕掛けてきましたもんね。クリケットさんも前線に出るんですか?」
「ああ、後二、三日もすればこの国に入ってくるだろうから急がないとな。もっとも、サルブレムからの情報がなければこんなに早く動けなかっただろう」
「この国に入って来る前に止めたいですし、グラヴェールにいる謎の兵士達はアークを追い返すくらいの力がありますからね」
「すでに国境付近に兵を出発させてるから、もし攻めてきたとしてもそこで食い止められるはずだ。こちらの数も多いから君達は安心してここで待っているといい」
城を出てから二十分ほど歩いていくと、サルブレムと同じような神殿が見えてくる。
神殿に近づくにしたがって兵士の数が増えていってるところをみると、かなり厳重な警備態勢を取っているのが分かる。
神殿の前に到着し、クリケットさんが足を止める。
「見たら分かると思うがこの神殿の中にSSランクのギフトがある。結界を強化してあるので不用意に近づかないようにな」
「ここに最後のオーブが……。神殿はサルブレムと同じような作りなんですね」
「いつ建てられたものかは不明らしいが、グラヴェールとムングスルドにも同じ神殿がある」
この世界の歴史ってのは教えてもらってないけど、このオーブってのは一体誰が作ったんだろうなあ。
「これを使わせてはなりません……」
少し遠くから神殿を眺めていたら、突然背後から聞き覚えのない声が聞こえてきたので、慌てて振り向く。
振り向くと、白いドレスを着た金髪の女性が物憂げな表情をして立っていて、クリケットさんがその女性に声を掛ける。
「フレール様! どうしてこのような場所に?」
「こんにちはクリケットさん。城にいても窮屈だったので気晴らしに散歩をしてたのです。そちらの方達は?」
「彼等は異世界から来た人間で……まあ、勇者みたいなものです。今回の作戦ではここにあるオーブを守ってもらう予定です」
「随分と若い勇者の方々なんですね。初めまして私はアルパルタを治めているフレールと申します」
フレールさんは微笑みながら俺達に深々とお辞儀をする。
俺達もそれにつられて深くお辞儀をする。
「こちらこそお世話になります。まさか、この国の国王様が女性の方とは思いませんでした」
「数年前に父が亡くなったので私が後を継いだんです。色んな人の助けを借りながらではありますけど、一応この国を担わせていただいてます」
多分エクシエルさんより少し年上くらいだろうけど、この人がアルパルタの女王様ってことか。
「というわけだから、君達もフレール様に失礼のないように頼むぞ」
「ええ、しばらくこの国に滞在させてもらいますからね。よろしくお願いしますフレール様」
「いえいえ、皆さんは異世界から来たお人達ですし、助けてもらってるのはこちらなのであまり気を使わないで下さい。様付けなんてしないでいいですからね」
「それはそうとフレール様。お付きの者はどこにいったのです? ここも安全とは言えませんから早く城に戻られた方が良いかと」
クリケットさんがフレールさんにそう聞いたそのとき、黒い服を着た高齢の男が何かを叫びながら走ってくる。
「姫さ……フレール様!」
「そんなに急いでどうしたのです? セバス」
「どうしたもこうしたもありません! さっきからフレール様を探してたんです!」
「そうだったのですか。散歩をしていたらオーブが気になったものですから少し様子を見に来たのです」
「それならば私に一言言ってから出掛けて下さい。どこに行ったのか城中の者に聞き回ったんですから」
「ふふっ、それは悪いことをしたわね」
「昔とは違うのですから勝手に動かれては困ります。ご自身のお立場をお考え下さい」
「セバス殿の言う通りですぞ。今やあなたはこの国の女王なのですからな」
セバスの後ろから髪を肩まで伸ばした年配の男と、マントを羽織った青年が姿を現す。
二人の登場にフレールの顔が険しくなり、やや厳しい口調になる。
「あなたに言われずとも解っておりますデメル大臣。すぐに城へ戻りますので心配は無用です」
「ならばよろしい。これから戦になりますから、あまり出歩かないようにお願いしますよ。クリケット殿もご一緒のようですが、何かあったのですか?」
「サルブレムから来た勇者様達が、この神殿を守ってくれるということで、少し話をしていただけです」
「ほう……。では、そちらの少年達がサルブレムの勇者達ですか。勇者の皆さんよろしく頼みますぞ」
デメル大臣は俺達に軽く頭を下げ、マントを着た青年を紹介してくれる。
「彼は我がサウザールの勇者でアサクラといいます。他の者はまた後日紹介しましょう」
紹介されたアサクラは手を差し出して俺に
握手を求めてくる。
「俺はアサクラ。よろしくね。えーと……」
「俺はソウタです。こちらこそお願いします」
俺はアサクラさんと握手をする。
「僕達は城の警護に付くからオーブの方はソウタ君達に任せるよ。お互い頑張ろう!」
「はい! どうにかこの国を守りきりましょう」
なんだ、アルパルタの勇者は良い人じゃないか。これなら他の人達ともうまくやっていけるかもしれないな。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる