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第122話 お世話になります

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 城から用意された馬車に乗っておよそ一週間。色んな町を経由してアルパルタの首都であるサウザールに着く。

 俺達五人は城の前で止まった馬車から下りて、軽く背伸びをする。

 「ふう、やっと着いたな。ここが国王の住んでるサウザール城か」

 「見て! あそこの塔に風車が付いてあるわよ! オシャレなお城ね」

 リネットが城の両隣に建てられた細長い塔を指差す。

 「へえ、あそこに登れるんだったら敵がどこから攻めて来るか分かるかもしれないな。まあ、とにかく中に入れてもらおうか」

 俺達は城の門番にサルブレムから来たことを伝えて、クリケットさんを呼んでもらう。

 少し待たされた後城の中に通され、兵士にある部屋へと案内される。

 兵士がノックをすると、部屋の中からクリケットさんが出てくる。

 「みんな久しぶりだな。ダルカデルから無事に帰って来れたようでなによりだ」

 「お久しぶりですクリケットさん。先にこっちに来てたんですね」

 「ああ、そろそろアークの連中が動き出すだろうから、こっちで軍備の強化していたんだ」

 「なんでもグラヴェールの軍勢がこっちに向かってるらしいですけど、それはもう聞きましたか?」

 「伝令兵にその話は聞いたよ。奴等の目的は知らぬが私もすぐに出るつもりだ」

 「俺達はエクシエルさんからオーブを守るように言われたので、後でそれがある場所だけ教えて下さい」

 「了解だ。時間もあまりないので、今から案内しよう」

 そう言ってクリケットさんは歩き出し、俺達に花の模様が入った腕章を配る。
 
 「その腕章は我々がサルブレムからの援軍であるということの証だから後で着けておいてくれ」

 「サルブレムからアルパルタに結構な人達が援軍に来てるらしいですね」

 「サルブレムだけではなく色んな国からも援軍が来ている。いかにグラヴェールといえど、この国を攻め落とすことは出来ないさ」

 「突然仕掛けてきましたもんね。クリケットさんも前線に出るんですか?」

 「ああ、後二、三日もすればこの国に入ってくるだろうから急がないとな。もっとも、サルブレムからの情報がなければこんなに早く動けなかっただろう」

 「この国に入って来る前に止めたいですし、グラヴェールにいる謎の兵士達はアークを追い返すくらいの力がありますからね」

 「すでに国境付近に兵を出発させてるから、もし攻めてきたとしてもそこで食い止められるはずだ。こちらの数も多いから君達は安心してここで待っているといい」
 
 城を出てから二十分ほど歩いていくと、サルブレムと同じような神殿が見えてくる。

 神殿に近づくにしたがって兵士の数が増えていってるところをみると、かなり厳重な警備態勢を取っているのが分かる。

 神殿の前に到着し、クリケットさんが足を止める。

 「見たら分かると思うがこの神殿の中にSSランクのギフトがある。結界を強化してあるので不用意に近づかないようにな」

 「ここに最後のオーブが……。神殿はサルブレムと同じような作りなんですね」

 「いつ建てられたものかは不明らしいが、グラヴェールとムングスルドにも同じ神殿がある」
 
 この世界の歴史ってのは教えてもらってないけど、このオーブってのは一体誰が作ったんだろうなあ。

 「これを使わせてはなりません……」

 少し遠くから神殿を眺めていたら、突然背後から聞き覚えのない声が聞こえてきたので、慌てて振り向く。

 振り向くと、白いドレスを着た金髪の女性が物憂げな表情をして立っていて、クリケットさんがその女性に声を掛ける。

 「フレール様! どうしてこのような場所に?」

 「こんにちはクリケットさん。城にいても窮屈だったので気晴らしに散歩をしてたのです。そちらの方達は?」

 「彼等は異世界から来た人間で……まあ、勇者みたいなものです。今回の作戦ではここにあるオーブを守ってもらう予定です」

 「随分と若い勇者の方々なんですね。初めまして私はアルパルタを治めているフレールと申します」

 フレールさんは微笑みながら俺達に深々とお辞儀をする。
 
 俺達もそれにつられて深くお辞儀をする。

 「こちらこそお世話になります。まさか、この国の国王様が女性の方とは思いませんでした」
 
 「数年前に父が亡くなったので私が後を継いだんです。色んな人の助けを借りながらではありますけど、一応この国を担わせていただいてます」

 多分エクシエルさんより少し年上くらいだろうけど、この人がアルパルタの女王様ってことか。

 「というわけだから、君達もフレール様に失礼のないように頼むぞ」

 「ええ、しばらくこの国に滞在させてもらいますからね。よろしくお願いしますフレール様」

 「いえいえ、皆さんは異世界から来たお人達ですし、助けてもらってるのはこちらなのであまり気を使わないで下さい。様付けなんてしないでいいですからね」

 「それはそうとフレール様。お付きの者はどこにいったのです? ここも安全とは言えませんから早く城に戻られた方が良いかと」
 
 クリケットさんがフレールさんにそう聞いたそのとき、黒い服を着た高齢の男が何かを叫びながら走ってくる。

 「姫さ……フレール様!」

 「そんなに急いでどうしたのです? セバス」

 「どうしたもこうしたもありません! さっきからフレール様を探してたんです!」

 「そうだったのですか。散歩をしていたらオーブが気になったものですから少し様子を見に来たのです」

 「それならば私に一言言ってから出掛けて下さい。どこに行ったのか城中の者に聞き回ったんですから」

 「ふふっ、それは悪いことをしたわね」
 
 「昔とは違うのですから勝手に動かれては困ります。ご自身のお立場をお考え下さい」
 
 「セバス殿の言う通りですぞ。今やあなたはこの国の女王なのですからな」

 セバスの後ろから髪を肩まで伸ばした年配の男と、マントを羽織った青年が姿を現す。

 二人の登場にフレールの顔が険しくなり、やや厳しい口調になる。

 「あなたに言われずとも解っておりますデメル大臣。すぐに城へ戻りますので心配は無用です」

 「ならばよろしい。これから戦になりますから、あまり出歩かないようにお願いしますよ。クリケット殿もご一緒のようですが、何かあったのですか?」

 「サルブレムから来た勇者様達が、この神殿を守ってくれるということで、少し話をしていただけです」

 「ほう……。では、そちらの少年達がサルブレムの勇者達ですか。勇者の皆さんよろしく頼みますぞ」

 デメル大臣は俺達に軽く頭を下げ、マントを着た青年を紹介してくれる。

 「彼は我がサウザールの勇者でアサクラといいます。他の者はまた後日紹介しましょう」

 紹介されたアサクラは手を差し出して俺に
握手を求めてくる。

 「俺はアサクラ。よろしくね。えーと……」

 「俺はソウタです。こちらこそお願いします」

 俺はアサクラさんと握手をする。

 「僕達は城の警護に付くからオーブの方はソウタ君達に任せるよ。お互い頑張ろう!」

 「はい! どうにかこの国を守りきりましょう」

 なんだ、アルパルタの勇者は良い人じゃないか。これなら他の人達ともうまくやっていけるかもしれないな。
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