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第1話 始まりの島
しおりを挟む「よーし、まさか父ちゃんは俺が船に忍び込んだなんて思ってもないだろー!!」
大きなバックから飛び出した俺は、故郷の島から脱出することが出来た。
ちなみにこの事は母ちゃんには言ってあるし、了承済みだ。
俺達家族が住む島には他に誰も住人がいない。
人に会うとすれば、たまに来る旅行客に海でばったり会うくらいだ。
所謂無人島ってやつに俺達は住んでいるんだ。
でも、父ちゃんは仕事でたまにしか島に帰って来ない。帰って来ても2、3日したらまたすぐ船に乗って仕事へ行ってしまう。
だから俺は父ちゃんが船に乗るタイミングでバレないように忍び込んだんだ。
「やっと外の世界へ行けるんだ……」
不安よりも嬉しさが込み上げてくる。
ずっと昔から俺は父ちゃんに仕事について行ってみたいと言ってたけど、頑なに断られ続けてきた。
その理由は教えてはくれなかったが、今はそんな事どうでもいい。
船はしばらくすると港に到着して、停船した。
「ふんふんふん~♪」
父ちゃんはなぜかご機嫌で荷物をいくつか持ってどこかへ行ってしまった。
よし、俺も街を探索しよう。
母ちゃんには次に父ちゃんが帰って来る時に一緒に帰るからと伝えてある。
港に着いたら急に現れて飛び出して驚かせるって母ちゃんには言ったけど、本当はそんなことせずに一人で色々外の世界を見てみたいって思ってるんだ。
父ちゃんの姿が見えなくなったのを確認すると、とりあえず父ちゃんとは反対の方向を目指して歩き始めた。
次に父ちゃんが島に戻るのは2週間後だから、それまでにこの場所に戻って来ればいい。
「よーし、まずは腹ごしらえだ。母ちゃんが作ってくれた弁当を食おうっと」
港近くの公園のベンチで俺はリュックから母ちゃんが作ってくれた弁当箱を取り出した。
「やっぱ母ちゃんの作る弁当は世界一美味い。って、他の人が作った料理なんて食べた事ないけど」
好物のハンバーグや唐揚げが山盛り詰め込まれた弁当の半分の量を食べ終えた所である事に気が付いた。
「何かじっと見てくる奴がいるな……」
少し離れた所から俺と同い年くらいの男が、俺の弁当を羨ましそうに見ている。
「おーい!! お前も食いたいのか?」
そう呼びかけると男はハッとして木の裏に隠れてこっちの様子を伺っている。
「いらないなら全部食っちまうぞー」
残り少ない唐揚げを口に入れようとした瞬間、木の裏に隠れていた男が猛ダッシュで走ってきた。
「く、くれるのか!?」
何なんだコイツ……。
俺が返事をする前に、男は俺から箸を奪って唐揚げを口に頬張った。
「う……美味い……!!」
「あのなー、俺はまだ食っていいなんて一言も……」
「もっと食わせてくれ!!」
俺の言葉を遮って男は残りの弁当を全て食べてしまった。
「お前なー、俺はあと2週間もここで過ごすんだぞ!? 少しは食糧を残しとかないと島に戻る前に餓死しちまうだろ!! お金だって少ししか持ってきてないのにコノヤロー!!」
母ちゃんからは、弁当は量が多いから2日に分けて食べるようにって言われてたっけ。
父ちゃんと一緒にいるだろうと思ってお金も少ししかくれなかったし。
「ん!? お前は街の人間じゃないのか?」
男は驚いた様子で俺を見つめてきた。
「あぁ、俺は島からここまで船で来たんだ。お前はこの街に住んでんのか?」
「いいや、違うぜ。俺は今日任務でこの街に来たんだ。ソウルセイバーって知ってるか?」
任務だのソウルセイバーだのよく分からない事ばっかり言うな。
「聞いたこと無いけど、怪しい勧誘をしてくる奴は悪い奴だって母ちゃん言ってたぞ!!」
「馬鹿野郎!! ソウルセイバーは怪しいもんじゃねぇよ、母ちゃんに言っとけ!!」
男は口を尖らせてポケットから何かを取り出した。
「これがセイバーライセンスっていうソウルセイバーの身分証だ。まぁ、まだ俺はひょっこだけどな」
そう言えば、この身分証は見たことある。
「確かそれなら父ちゃん持ってたぞ!! 何か1番上のランクになったって母ちゃんと俺に自慢してたなぁ」
俺がそう言うと男は目を丸くして持っていたライセンスを落としてしまった。
「い、1番上だって!?」
「そうそう。まぁ、俺はよく分かんないけどな」
「お前の父ちゃんSランクのセイバーってことだよな……。あのな、ソウルセイバーには1番下のDから1番上のSまで5段階のランクがあるんだ。Sランクなんて世界に数人しかいないって噂だぞ!?」
そんなに凄い事だったのか。
いつの間にか男は目を輝かせて俺を見ている。
「それで、ソウルセイバーって何すんの? さっき任務とか言ってたけど」
「ソウルセイバーはな、ソウルイーターっていう人間の魂を食う化け物から民間人を守る人達のことをいうんだ。っていうか、ソウルイーターはさすがに知ってるよな?」
正直なところソウルイーターなんて今まで聞いたことが無かった。
そんな危険な化け物がいるのに、何で父ちゃんは教えてくれなかったんだろう。
俺は首を横に振って、さっき男がいた木の裏に潜む見たことの無い生物を指差した。
「もしかしてあれ?」
「そうそう、あれ!! っておい、マジで出てきてんじゃねーかよ……。よりによって俺一人の時に出て来るんじゃねーよ」
男は嫌そうにゆっくりと化け物に近づいて行った。
「俺も一緒に戦おうか?」
武器さえあれば、俺も多少は力になれるはずだ。父ちゃんに散々特訓してもらったんだ。
「いや、いいよ。どうせすぐ終わるしな」
男は武器も何も持たずに化け物との距離を詰めていく。
改めて化け物を見ると何とも言えないような風貌をしていた。顔は犬のようで体は筋肉質の人間のような体格だ。
どす黒く変色した皮膚がより一層不気味さを掻き立てている。
「まぁ、見とけよ。見えるならな」
化け物が威嚇して襲い掛かろうとしたその時だった。
「じゃあ、行くぜ?」
男が手を翳すと、化け物は一瞬で氷塊に覆われてしまった。
「す……すげぇ。コイツ……こ、凍ってんの?」
こんなことを人間が出来るのか……?
「まぁ、俺はセイバーランクBだけど俺くらいの能力者なら沢山いるぜ? お前の父ちゃんはもっと化け物染みた強さだってことだな。俺は室谷隼人。宜しくなー!!」
隼人は手を差し出してきた。
「俺は、結城月霞。月霞でいいぜ!!」
隼人の差し出した手を握ると、能力とは正反対に温かみを感じた。
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