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第一章 決戦ソウルトーナメント
第27話 引際
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ーー丈一郎sideーー
とにかく無差別に斬れ。
東雲様からはそう命じられた。
私は命令のまま殺傷を繰り返し続けた。
響き渡る悲鳴と断末魔。
「ふぅふぅふぅ……」
先ほど紹介された亜門という男は、理性を失って人を喰らい続けている。
その体は人間とは遠く駆け離れた風貌をしていた。
私達、執事は現在では10名で構成されている。
それぞれ顔を合わせた事は無かったが、この会場で初めて顔を合わせる事となった。
横目で観察していたが東雲様を含めて、全員が化け物級の戦闘力を持っているようだ。
ある者は自由に銃火器を出現させたり、ある者は触れた物を爆発物へと変化させたり、またある者は掌からレーザーの様なものを放っていた。
全員がソウルを駆使する能力者なのだろう。
その中でも異彩を放っていた人物がいた。
何せずにただニッコリと笑って立っているだけの青年。
少し前から感じていた寒気が彼の視線だと理解した瞬間、全身から血の気が引いていくのが分かった。
「どうかしました?」
青年はゆっくりと私の方へ歩み寄ってきた。
「いや、何も……。君は誰一人も手にかけていないように見えてね」
「あぁ、そんなことですか……」
そんなこと……!?
彼が一瞬目を細めたのを私は見逃さなかった。
「僕は司馬伊吹。宜しくお願いしますよ先輩」
何かドス黒いオーラを纏ったようにも見える右手を差し出してきた。
「先輩なんて何も君達と変わらないよ。こちらこそ宜しく司馬君」
右手を掴み、私達は握手を交わした。
「それより、本気でここにいる全員を殺すつもりなんでしょうかね?」
ニッコリと笑いながら司馬君は血塗れの観客席に腰掛けた。
「もう殆どの人が死んでしまったんじゃないかな? 悲鳴も聞こえなくなってしまったよ」
「丈一郎、目的も果たしたし撤収しようか」
いつの間にか隣に座っていた東雲様は返り血を浴びたのか、黒いスーツを脱ぎ捨ててシャツになっていた。
「分かりました。では、皆に伝えてきましょう」
東雲様にそう言い残して執事達に伝えに向かった。
東雲様の目的とは一体何だったろうか。
わざわざ観客を集めて大量殺戮なんてメディアや警察に目をつけられるのは当然だろう。
もしかしたら、国の軍が動くかもしれない。
黒いハットを被った同僚がゲート付近に居たので近寄ると、その男は負傷しているようだった。
「出血しているようだけど大丈夫かい?」
「問題ない。気をつけろ、俺達の他にも能力者がいる。キセルを振り回してふざけた能力を使うやつだった」
ほう。私達の他にも能力者がこの会場にもいたのか。
さっきのホスト達といい、何か大きく歴史が動き始めそうな展開だ。
遠くの方からサイレンが聞こえる。
あと数分で警察が来そうだ。
「東雲様が撤退を命じられた。本部に集合だ」
そう言って次の執事の所に向かおうとした時だった。
巨大な壁が目の前に出現し、会場が四分割された。
「な、何だこれは……」
黒いハットを被った男は動揺している様子だ。
私も一瞬、目を疑ったがこれは我々ではない別の誰かの能力だと感じた。
「東雲様!!」
壁を越えようと試みたが、壁は天井を突き破りどんどん上空へと伸びていく。
完全に隔離されてしまった。
「まずいな……」
刀を握った瞬間、視界が何もない白い空間へと切り替わった。
とにかく無差別に斬れ。
東雲様からはそう命じられた。
私は命令のまま殺傷を繰り返し続けた。
響き渡る悲鳴と断末魔。
「ふぅふぅふぅ……」
先ほど紹介された亜門という男は、理性を失って人を喰らい続けている。
その体は人間とは遠く駆け離れた風貌をしていた。
私達、執事は現在では10名で構成されている。
それぞれ顔を合わせた事は無かったが、この会場で初めて顔を合わせる事となった。
横目で観察していたが東雲様を含めて、全員が化け物級の戦闘力を持っているようだ。
ある者は自由に銃火器を出現させたり、ある者は触れた物を爆発物へと変化させたり、またある者は掌からレーザーの様なものを放っていた。
全員がソウルを駆使する能力者なのだろう。
その中でも異彩を放っていた人物がいた。
何せずにただニッコリと笑って立っているだけの青年。
少し前から感じていた寒気が彼の視線だと理解した瞬間、全身から血の気が引いていくのが分かった。
「どうかしました?」
青年はゆっくりと私の方へ歩み寄ってきた。
「いや、何も……。君は誰一人も手にかけていないように見えてね」
「あぁ、そんなことですか……」
そんなこと……!?
彼が一瞬目を細めたのを私は見逃さなかった。
「僕は司馬伊吹。宜しくお願いしますよ先輩」
何かドス黒いオーラを纏ったようにも見える右手を差し出してきた。
「先輩なんて何も君達と変わらないよ。こちらこそ宜しく司馬君」
右手を掴み、私達は握手を交わした。
「それより、本気でここにいる全員を殺すつもりなんでしょうかね?」
ニッコリと笑いながら司馬君は血塗れの観客席に腰掛けた。
「もう殆どの人が死んでしまったんじゃないかな? 悲鳴も聞こえなくなってしまったよ」
「丈一郎、目的も果たしたし撤収しようか」
いつの間にか隣に座っていた東雲様は返り血を浴びたのか、黒いスーツを脱ぎ捨ててシャツになっていた。
「分かりました。では、皆に伝えてきましょう」
東雲様にそう言い残して執事達に伝えに向かった。
東雲様の目的とは一体何だったろうか。
わざわざ観客を集めて大量殺戮なんてメディアや警察に目をつけられるのは当然だろう。
もしかしたら、国の軍が動くかもしれない。
黒いハットを被った同僚がゲート付近に居たので近寄ると、その男は負傷しているようだった。
「出血しているようだけど大丈夫かい?」
「問題ない。気をつけろ、俺達の他にも能力者がいる。キセルを振り回してふざけた能力を使うやつだった」
ほう。私達の他にも能力者がこの会場にもいたのか。
さっきのホスト達といい、何か大きく歴史が動き始めそうな展開だ。
遠くの方からサイレンが聞こえる。
あと数分で警察が来そうだ。
「東雲様が撤退を命じられた。本部に集合だ」
そう言って次の執事の所に向かおうとした時だった。
巨大な壁が目の前に出現し、会場が四分割された。
「な、何だこれは……」
黒いハットを被った男は動揺している様子だ。
私も一瞬、目を疑ったがこれは我々ではない別の誰かの能力だと感じた。
「東雲様!!」
壁を越えようと試みたが、壁は天井を突き破りどんどん上空へと伸びていく。
完全に隔離されてしまった。
「まずいな……」
刀を握った瞬間、視界が何もない白い空間へと切り替わった。
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