上 下
1 / 10

1話 おれの邪魔、すんじゃねぇ!

しおりを挟む

おれは山田 律(やまだ りつ)。

おれには好きな奴がいる。
それは…幼なじみの寺田 竜(てらだ りゅう)。
竜は美形だし、スポーツができていつも女の子からの告白が耐えない。用はめちゃくちゃモテるということだ。
なんと憎たらしい…。
ムカつく…。

おれは男だから、竜に告白なんか出来ねぇ。見てることしか…。
けど、これでいいと思ってる。

なんでって…──おれと竜は一番の友達だからだ。

「ねぇ、竜君、一緒に帰ろっ!」
「私が竜と帰るの!!」

がやがやと女の子たちの騒ぎが聞こえる。あー、またやってますね、はい。

おれは遠目で見ていると竜がこちらへ近づいてくるのが見てる。

ちょ、おい。やめろ…。

そう思ったときにはすでに遅く…竜はおれの手を掴んでいた。

「ごめん、

────おれ、律と遊ぶから無理。律といたいから。」

─────っ、くそ!!

竜はそう言葉を残すとおれの手を引っ張っていく。

あー、ムカつく。こんな一言一言に一喜一憂してる自分がムカつく!

あー、まじで、竜が…好きだ。


「あー、よかったぁ。律がいてぇ。あー、まじ律律律っ…!
おれの神様っ!」
「うっせぇ!神なんかじゃねぇよ、ボケ!おれを巻き込むんじゃねぇよ!」
けっと舌打ちをすると竜は笑って答える。

「んなこというなよぉ。おれと律の仲だろぉ?
律様っ!!」

そういっておれの肩に腕をのせてきた。

まじ、うぜぇっ!

けど、好きだ、くそ!!

「しつけぇ!このっ…!」

おれが竜の腕を振りほどこうとしたとき───…

声がした。

「…竜、ここにいたんだ。探した。」

その声と共に竜が体を向ける。

「おー!龍(たつ)!」

そして、そのまま龍の元に行ってしまう。

…は?龍?誰それ?

困惑したおれを置いて二人で話し始めてしまう。

「龍、どした?おれに会いたくなった?」
「…違う。これ。…。」
「え、それって限定品のゲームじゃん!?はっ、す、すげぇ!!
まじ、龍、神っ…!!」

竜は興奮のあまり龍を抱き締めていた。
そんな光景を見ておれは龍と呼ばれる男を目で殺していた。

なに、なんなの?こいつ。
竜に近づくんじゃねぇよ。
いや、まぁ、近づいてんのは竜だけどよ。

「ちょ、ち、近い。離れて。」

龍はそういっていたが顔は真っ赤になっていた。
ん?なにこいつ、満更じゃない感じなの?なに、きしょ!男の癖にきしょ!!


「もー、龍!今日一緒にゲームしねぇ?俺んちで!どう?」
「…うん。いいけど。」
「まじ!?やった!!」

…は?

なに、こいつら遊ぶの?
おれと遊ぶっていってたじゃん!

…てか、竜がこんなにテンション高いのって珍しくね?
普段眠そうな感じなのに…。

「あ、ちょっ、竜!」
「あー、ごめん、今日龍と遊ぶぅ。また、埋め合わせすっからよっ。」
「はっ、ちょ…。」

まじかよ。

おれのなかで焦りが勝っていた。
いや、焦る必要はないんだ。
ただ、遊ぶだけ、じゃん。

別に…なんかする訳じゃねぇのに…なんか、嫌な予感が…。

だめ、だ。二人っきりにしちゃいけない気がした。

「ちょ、おれも…」

「おーい、律ぅ。」

おれが二人のあとをついていこうとしたとき…声が聞こえた。
びっくりして声の方を見ると…クラスメートの田中 優(たなか ゆう)が立っていた。

…おれのこと、呼んだ?

「な、?」

「律ぅ、おせぇよ!おれと遊ぶ約束してただろ?ゲーセンいこぉぜ。」

は?約束?初耳なんですけど!?

「な、約束って…」
「あー、じゃあな、律。また明日。龍行くぞ。」
「…うん。」

…え?

竜はそういうと龍と共にその場から離れて行ってしまう。
ちょ、待って!?

「えっ、竜!」
「ん?なに?」
「えっ、えっと…。」

呼び止めたはいいが言葉がなかなか出なかった。

「おーい、律。なにしてんの?
早く行くぞぉ。」

それと共に優がおれに話しかけてくる。は?意味わかんねぇ!!

「律、おれ、行くわぁ。」

優に気を取られてるうちに竜と龍はそのまま歩いて行ってしまった。

…ちょ、えっ!?

呆然としていると…隣で体を震わせている優が目についた。

「おい、てめぇなに笑ってんだよ?」
「えっ、いや…可哀想だなぁって。」
「おい、殺すぞ。」

優はにこにこ笑っておれを見ていた。

「律君、面白いからついつい。
面白いからゲーセン行こっか。」
「なんでだよ、いかねぇよ。」

優はえっーと唸っていたがおれには関係ない。

「そんなことより…」
「あの二人が気になる?」
「そーだよ!てめぇどっかいけ!」
「…おれは君が気になるから離せないな。」

優はそういっておれの腕を掴んでいた。

「…は?」
「いや、こっちの話?」
「うっぜ、離せ。」
「…。」
「離せってしつこい!」

思いっきり振り上げると案外あっさりと手を離してくれた。

「…まぁ、いいや。」

優はそういうとにこっと笑ってどっかに行ってしまった。

それはそんな優に目もくれず二人の姿を探す。走って学校を出て…、探すが…。


「くそ、どこにいんだよぉ!」

結局、見つからないという酷いオチだ。

しおりを挟む

処理中です...