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黎編

27話 監禁③

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体が熱くてじんじんする。

頭の中が何も考えられなくなる。

考えられるのは───正兄の言葉。

わかっていた。自分がここから逃げられる筈がない。おれは…ずっとずっとここにいる。
逃げても意味がない。
おれは、いきる価値すらない。なのに、いつから望んでしまったのだろう。
おれは───ずっとずっと、1人だったじゃないか。

「っ…うわぁっ…。」

体があつくてあつくて…おかしくなりそうだ。気持ちが悪い。心が痛い。
助けて────欲しい。
ここから出して欲しい。Aに会いたい。

ても…そんなの意味ない。
そんな希望、持ったって…おれは。

「逃げられない…!逃げられる訳がないっ…!!」

おれの中に入ったものがずっと動いている。その音、感覚がおれを襲う。

「っ…あっ──!」

少しでも意識を高めると感じてしまう。
おれは…こんな敏感な体に鳴ってしまった。
おれは────おれの体は…。

「あっ…っ♡」

声を出そうとすると声が勝手に出る。自分の声とは思えないほど甘い声。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌。

おれは誰だ?おれはどんな人間だった?おれは…何者だ?おれは何のために生きているんだ?おれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはおれはっ…。

Aっ…おれっ…。

「どうなっちゃうっ…んだよっ…!」

体がヒクヒクと勝手に動く。どんどん熱を帯びていく身体。収まらない身体。助けて助けてと体を動かしても鎖が邪魔して動かない。

「うっ…あっ♡」

助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてっ…。おれの身体じゃない。
こんなの…知らないっ!!

「あっ…♡あっんっ…♡」

声、やめろ、出るなっ!!
助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてっ──────!!


「…B、いる?Aだよ。」

そのとき、声がした。Aの声だ。おれの好きな人の声。大切な、初めて好きになった人の────。

「あっ…♡」

声を出そうとするとバカみたいに甘い声が零れる。やめろっ…!声、出るな!

「B?いないの?」

Aの声におれの体は強く反応した。好きな声が今日は恐怖に思える。

今日、だっておれは───Aを突き放さないといけない。
でないと正兄が何をするかわからない。おれは正兄の指示に従わなければならない。だって…正兄が怖い。それだけじゃない。Aにもしものことがあったら──おれはもう生きられない。
大切なAが傷つけられるなんて耐えられない。

正兄は何をするかわからない。

だから────正兄に被害を与えられる前におれはAと離れなければならない。

嫌だっ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!

Aは…おれにとって自分の命と同じぐらい大切な人だ。

手放したくない、傷つけたくない。
離れなくない。
好きだ、好きだ大好きだっ…!!

「Aっ…いるっ…んっ♡」

声を出すとバカみたいに甘ったるい声が出る。やめろ、出るなと体を震えながらそう唱える。

「B、いるの?そっか。いないかと思った…。」

Aの優しい声がおれの身体を刺激する。好きだ好き。好きな声。

お願い、声、出ないでくれ───!!

そして、もう、おれのこと、

───────なくしてくれ。

「──────もう…おれに…っ話しかけるなっ…!」

はぁはぁする息の中おれはそう言葉を出した。

そこからおれは言葉を重ねなければならない。

嘘を並べなければ───でなければ、

────おれの好きな人が傷ついてしまう。

「なんで…?そんなっ…」

Aのかすれた声が聞こえる。
訂正したい。本当は嘘だといいたい。けど…!

「最初っ…から、お前と話すのはっ…苦痛だったんだっ…!
おれはここから出る気はないのにっ…お前はおれに話しかけてっ…!
そんなお前が───おれはっ…!」

そこで言葉が止まる。
言葉が出なくなる。

「…B。」
「おれはお前がいつも呑気に話しかけてすごくうざかったし、嫌だった!
ずっとずっと…苦しかったっ…!

だからっ─────」

さっきから言葉が、肝心な言葉が、出ない。おれは嘘をついてAを突き放さないといけないのにっ…。
うまく言葉が────出ない。

「…そっか。Bは…そう、思ってたんだ…。」
「そうだっ…!」

傷つけろっ、Aをっ…!思いっきり傷つけて、そして────おれの元から離れさせないと────!! 

「おれは生きている意味がない。けどAだって生きている意味ないよな。」
「…え?」
「だって───お前は弟が好きなんだろう?

───────気持ち悪いっ。」

そのことを口に出したとき──Aの声が変わった。

「────やめろっ。」

今まで聞いたことのない声だった。

そこから───おれは言葉を重ねた。

「弟が好きだってそう言われておれは気持ち悪いと心底思った。だって実の弟に恋をしているんだぞ?
なんだ、それは──バカじゃないのか?」

この言葉は────Aに向けての言葉ではない。

─────すべて正兄への。怒り。

「弟もかわいそうだろうな!兄に好意をもたれて…そんな理由で守られてっ…!!Aは本当に勝手だっ…!」
「っ…おれは、そんな理由で弟を守った訳でもそばにいたわけでもないよ。」 
「…でも、弟が好きなことは本当だろう?馬鹿じゃないのか? 
おれに弟が好きなんだとか話して…!気持ち悪かった、嫌だったっ…!吐き気がしたっ…!!
意味がわからなかった…!!」
「…B。」
「だって…」

正兄は優秀で完璧で…おれじゃなくてももっと違うひとがいたはずなのに…。なんでおれに執着してしまったんだ?
正兄が…おれに執着をしたのはおれのせい。けど、おれだって…正兄のこと大切だったんだ。その気持ちが…今もう、全部消えて憎しみに変わっている。
そう思うことでおれは───いきる意味が出来たんだ。

正兄を嫌うことが─…おれの生きる意味になってしまった。

「気持ち悪いっ、気持ち悪い気持ち悪いっ…!!Aが気持ち悪いっ…!もう、おれに話しかけるなっ!ここにも来るなっ…!! 

二度と───その声をおれに向けるなっ!!」

おれがそう言い放つとAの声が消えた。
いなくなってしまったのかと…そう察した。

「…っ。」
「B。」

消えてしまったと思ったらAの優しい声が聞こえた。

「B…はずっと…おれのことそう思ってたんだね。
知らなかった…。」
「っ…!」
「…今まで一緒に話してくれてありがとう。

おれは────Bに救われた。
 けど、Bは違ったんだね。」

Aの声がだんだん遠くなる。
Aの声が─────かすれていく。

「…おれはBと話せてとても嬉しかったよ。それは…今も変わらない。

ありがとう。そして────さようなら。」

Aはそういって音を消していった。遠さがっていくAの足音。

そして────最後に声が微かに聞こえた。

「──────おれに生きる意味をくれてありがとう。」

Aの声がその言葉で消えていった。
そのAの言葉でおれははっと意志を持ち始める。

「うっ…。」

今までのAとの思い出が蘇る。Aとの会話。すべてがいきなりおれの心の中に残る。
大切で好きなAが…もう、いなくなる。
どうすればいい?おれはこれからっ…。
Aを突き放しておいて…なんて勝手なんだと思う。本当に馬鹿なのはおれだ。

A のことを必要としていたのは…おれだ。なのに…そんなAを傷つけておれは離してしまった。
正兄が怖かった?正兄に傷つけられるAが心配だった?

いろんな思いがぐちゃぐちゃになる。
どうすればよかっただなんてわからない。

「っ…。Aっ…。」

声を出しても…意味なんてない。
だって───Aは。

そう考えていると────おれの中に入っているものが動き出した。

「うっ…!?」

おれの中に入っていた玩具の振動がどんどん高まっていった。

「あっ───!」

さっきの穏やかな振動から一変して激しい振動がおれを襲う。頭がクラクラして機能しなくなる。

「やめっ…!」

そんなおれの声とは違いそのおれの中に入ったものはおれの中をめちゃくちゃにかき乱した。

「あっ…!!あっ…♡やっ…♡」

おれの身体がどんどん熱を帯びていく。鋭敏になっていた体がびくりと跳ねる。それとともにおれのが硬くなり反応して芯を持って立ち上がる。

おれの体が徐々に変になっていくのがわかった。
玩具を入れられて勃起してしまうなんて…。考えられなかったのに…

「あっ…♡んっ♡っ…───。」

勃起した性器を触りたい衝動にかられるが両手両足手錠をかけられては触れる訳もなかった。

「んっ…あっ…♡はぁっ…!やっ…だっ…!!」

いきたいのにいけない衝動が増していく。それとともに中のものがどんどんおれの中に入っていく。

刺激が強すぎて…Aのことを考えられなくなる。
正兄は…この様子をもしかしてみているのかっ…?ずっとおれは…監視され続けるのかっ…?
正兄の言うとおりの人生を進んでいかなければいけないのかっ…!?
そんなの、いやだっ…!!

やだ、やだやだっ………───!!!

「ああっ…あっんっ…♡♡んっ♡」

あらわになった昂ぶりは熱く脈を打っておりひくりと震える。

「あっ…あっ…!!」

ずんずんとおれの中に入った玩具がおれの中をかき乱す。
助けてっ…取りたいっ…!これ以上…、奥にいかないでっ───!!

「あっ─…………あっ───!!」

おれの中に入っていた玩具が刺激の強いところへ入っていく。
取りたい取りたいっ───!!
体を動かせば動かすほど…どんどん空回りしていく。 

「あっ…、あっ♡♡あっ───!!」

ずんずんと入っていく玩具におれは涙目になった。これを…取るためにおれは何をしなければならないのだろう。
正兄に取ってとおねだりをしなくてはならない。正兄に奉仕をしなければならない。

「あっ…あっ…やっんっ…♡」

そうやって───おれは生きなければならない。これからずっと──一人で。

「やっ…♡だっぁっ…──!!」

その熱を認めてしまえば楽になる。気持ちいいと、快楽を得てしまえば…正兄の指示に従えばいい。

『ちんぽが好きです。正兄のが好きです。おれの中に入っていかせてください。おれは正兄の奴隷です。』

そう言葉を掛ければいい。
正兄の────思い通りになれば…!

簡単なこと────!!

でも、

「あっ…っ♡んっ!」

───────おれは。
おれはっ───

──────おれの人生があるのに。
Aが…本当の生きる意味を教えてくれたのにっ─────!

「あっ…うっ…あっん♡」

おれは体に強い刺激を受けながら泣いていた。

「あっっ─…──!」

おれの中に確実に奥へ入っていく。 
嫌なのに入ったものを見てしまう。あんな大きなものがおれの中に入っている。…おれの身体は心は…どんどん作り替えられている。

「ぁあ…っ、あっ…♡」

激しく与えられる振動に頭の中が空っぽになって訳が分からなくなる。確かなのはおれの身体が変わってしまっていることと身体の奥で感じる中の感触の強さ。

「あっ…♡んっ♡♡♡」

 めちゃくちゃにおれの中がかき乱されておれの身体がぐちゃぐちゃに溶けてしまいそうだ。

「っあっ────あっ!!!!」

おれの溜まった欲望が吐き出される。なにも…手を触れてないのに…勝手にだっ。
そして──その欲望は止まらない。

「あっ…あんっ…!」

いったのにいっていない衝動にかられる。

「うっ…んっ♡」

─────助けて。
そう叫んでしまいたかった。ここから逃げたい。おれはずっとこのままなのか?ずっとここにいる運命なのか?ここから逃げられないのか?

「あっ─♡んっ!!」

この熱はずっとこのまま帯びたままなのか?
どうすればよかったんだ?おれは、このままっ───

「あっ──♡っ…っ!!」

びくびくと身体は動くのに快楽がイマイチでずっと熱を帯び続けている。

助けて─────なんて叫んでも遅い。
おれはすべて───捨ててしまった。
正兄の言うとおりに動いてしまった。
おれは…もう、誰にも相談出来なければ逃げることも出来ない。
この小さな小さな部屋の中で正兄の命令を受けながら生きていく。

それはおれにとって絶望、それ以外なにもなかった。

怖かった…。ここから逃げることもここから離れることも。

けど────今は。
もう、なにも考えられない。

「あっ…うっ…!」

────おれはこれまで人生を考えた。おれは…いつもいつも正兄の後を追っていた。憧れの正兄になりたかったから…けど、それは間違いだった。
どんなに正兄を追ったって意味がないのだ。自分は自分。正兄は正兄だ。

おれはその間違いに気づかなかった。おれはその日々を苦しみは正兄のせいであるとそう考え正兄を恨んだ。
けど…それは違う。
おれがいけなかった。正兄に嘘をついたから、正兄になることが楽であることを知ったから。

正兄が憧れだと───正兄に言い続けたから。すぐに憧れを消してしまえば正兄もこんなにおれに執着することなどなかった。

おれが───変えてしまった。

悪いのはいつだって自分。この小さな部屋から出るチャンスはいくらでもあった。Aが居てくれたのに…そのチャンスを逃したのも自分。
これは自業自得。
自分の過ち。

怖かったんだ…。ここから逃げても出口がないってことを知っていたから。
だから…逃げてしまった。意味がないと思ったんだ。

「あっ…あっ…♡」

───……ポタポタと涙がこぼれ落ちる。これまで───おれの意志で動いたことはあっただろうか?
正兄に友達を作るなといわれ、おれはそのまま従った。自分のしたいように生きなかった。

だから────その罰がここにきてきたんだ。

「…亮っ…」

声に出したのは亮のことだった。
昔の亮の姿を思い出す。亮は叔父さんに暴力を振られ小さな家に閉じこめられていた。けど、亮は…守る人があって人に希望を与える力があった。

おれは───その力に輝きに…勇気を希望があることを知った。
だからここまで生きてきた。でも…亮がどこにもいないということがわかり…つらかった。

けど…おれにはAがいた。
俺の話を聞いてくれおれに希望を与えてくれた────A。

熱を帯びた身体に脳に意識が遠くなっていく。



「…ごめん。」

おれは─────逃げなかった。自分の意志を持たなかった。だから──

もう─────逃げることすらできない。

「うっ…。ごめんっ…。っ…。」

おれは泣いていた。わかっていたはずだった。Aがいないおれは希望がないことを、つらい人生が休むことなく現れることを。

──────知っていたはずなのに。

直面したとき───やっとその意味を知る。なくなって…やっと知れることがある。

「っ…お願いっ…!」

意味もなくそう心が助けを求める。助けって…誰に?なにを?どうしてほしい?
そんなのは──わからない。でも、助けを意味がなく求め続ける。

─────1人のおれには意味がないこと。でも…がむしゃらに…ただひたすらに…。助けを求め続ける。

両手両足の手錠。おれの中に入れられた玩具。なのに、おれの体はいやらしく熱を帯びている。おれのが芯を持って立ち上がっている。

────バカみたいに醜い姿。

─────けど、それでも。

「お願いっ…。」

おれは─────助けを求めた。


「助けてっ──────亮っ。」
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