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飛鳥告白編

25話 お兄ちゃん、逃げても無駄だよ

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「おれはあいつに勝ったんだっ…!って思える!!おれは、もうあいつの言うとおりにならなくてもいい…!!おれは自由なんだっ…!!そうやって、思える─────!!

だから刺してよかったって!
思えるんだっ…!!

おれの選択はあってたんだって…!

あいつを刺せてよかった…!!

あいつを─────消せてよかった…!!」

黎がうっとりとした顔でナイフを見つめていた。それだけを見ていると…病んでるようにしか見えないのだが…。

「だから、亮。」

黎は血のついたナイフを持ちながら俺に、言う。

「もし、邪魔な奴がいたら言ってくれ。
もし、殺したいほど憎んでいる奴がいたらおれが、なんとかしてやる。

だって、それは自己防衛だから。

相手が自分に被害を与えたんだ。
そのぐらい…していいんだ。

もし、亮が邪魔だと思う奴がいたら──

おれが───────

このナイフでぶっ刺してやるから。」

黎の表情はただただ穏やかだった。

だから、普通のことを言っているように思える。

けど…違う、違うっ…!

「れ、黎…!」

「…なんだ?」

黎のこと、おれは大切だ。
だから、間違った道に言ってほしくないと思ってる。

今、どうみても、黎は間違ってる。







「黎、あのさ───『プルプル』」

おれが黎に声を駆けようとするとブーブーと携帯電話がなった。
電話の主は…勇太だった。

「…勇太っ…!」

「出たほうがいいんじゃないか?」

「…え?」

「多分、今無視しても何回もかかってくるはずだ。」

「…そ、そうだね。」


黎のことも気になったが
後で怒られても困るため、おれは勇太の電話を出た。

「え、勇太「どこ?」え、?」

「今、どこにいるかっていってんの。」

苛立ったような勇太の声が聞こえる。ヤバい…今、勇太に会うべきではないと思った。

「いや、えーと、今は勇太もイライラしてるだろ?だから、一旦落ち着いてから話しても」
「ムカついてるよ。」

弟の鋭く低い声が聞こえる。やっぱりイラついてるんだ…。やっぱ飛鳥君と会ったからなのかな…?

「ご、ごめん。でもね、飛鳥君の告白は断ってさ、もう、大丈夫だから!」
「何が大丈夫なの?」
「もう、勇太の邪魔しないから──」

がんっ!!そのとき、携帯電話からそんな音がした。

「ゆ、勇太…?」
「あ、ごめん、携帯電話落としただけだから。」

…怒ってんじゃん!絶対!!

「お兄ちゃん、それだけじゃないでしょ?」
「え?」
「飛鳥君に何をされたのか、言ってみてよ。」

そう聞かれ、おれは身体が震えた。飛鳥君に、何をされたのか…。身体を触られて…耳を、舐められた。
他にも色々された。
「ねぇ、なにされたの?」
「何にもされてねぇよ。」

勇太に言えることじゃないと思いおれは黙った。

「…僕に言えないこと、したんだ。」
「そんな、ことは…!」
「大丈夫だよ。知ってるから。」

─────え?知ってる?勇太は知ってると言ったのか?

「ちなみに、お兄ちゃんが今どこにいるのかもちゃんとわかってるからね。」

あはっと勇太の笑い声がする。その声が…耳の中に残る。






「お兄ちゃん、逃げても無駄だよ。」
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