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53.王子様
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なに……なんなの?
一体なにが起きたというの!?
私が混乱していると、
「白馬の王子様のお出ましだ」
ポツリと、私の腕を掴んでいたサハラ様が呟いて。
「え……?」
私がポカンとしたまま、サハラ様を見上げると……目が合った。
……優しい、目。
いつも私を気遣ってくれた、サハラ様のいつもの目だわ……。
胸がキュウ、と締め付けられるのを感じる……。
「サハラ様……?」
サハラ様が私の頭を、軽く撫でると--船が、大きく揺れた。
じ、地震……!?
でもここは、海の上なのに……?
「う……ぎゃああああ!!」
目の前で、レティシア様を拘束していたはずの頭の突然の叫び声に、ハッとする。
視線を移す私の目に移ったのは……。
「なんだこれ! クソッ、クソが!!」
なぜか床から勢いよく生える、大木。
まるで生き物のように頭の体中に絡みつきながら急成長する、無数の枝やツル。
……目を疑うような光景。
「な……」
頭に拘束されていたレティシア様は、何故か無事で。
呆然とした表情で、頭を見上げていた。
それは、ルドルフも同じだったみたい。
ザクッと、音がした。
と同時に、後ろで拘束されていた手が解放された事に気がついた。
「今のうちに逃げるぞ!」
サハラ様がそう言いながら、レティシア様とルドルフの手首の縄もナイフで切っていて。
「……どういう事なの?」
レティシア様が、サハラ様に問いかける。
木に、半身は飲み込まれながらもナイフを片手に暴れている頭を見上げながら。
「言ったろ、王子様のお出ましだって」
王子様……。
その言葉を聞いた瞬間。
……レティシア様の目が潤んでいく。
そして、
「レティシア……。あんたは、自分一人で抱え込みすぎだ」
そう言いながら、サハラ様が船から港町へと視線を移す。
つられて私たちも、そちらへと視線をやると。
「……シオン様!」
大勢の兵士へと指示を出す、シオン様の姿。
兵士たちが船へ次々と乗り込む中、シオン様がこちらの視線に気づいたらしい。
「……レティシア! エルマも、無事だな!?」
私たちの姿を確認すると、ホッと安堵の表情を、浮かべていて。
チラッとレティシア様を見てみると……。
涙が一筋、流れていた。
……綺麗だわ。
とても綺麗で……女の私でも見惚れてしまうくらい。
「行こうぜ。話は降りてからだ」
「サハラ様……私……」
なんて酷いことを口にしてしまったの?
……サハラ様のことを、どうして信じられなかったの?
俯く私に、サハラ様は苦笑する。
「エルマ、オレは……」
「--ふざけんな!!」
頭の声が、頭上から降ってきた。
思わず見上げると、
「てめーら全員、ぶっ殺してやる!!」
持っていたナイフを、こちらに向けて投げてきた。
一体なにが起きたというの!?
私が混乱していると、
「白馬の王子様のお出ましだ」
ポツリと、私の腕を掴んでいたサハラ様が呟いて。
「え……?」
私がポカンとしたまま、サハラ様を見上げると……目が合った。
……優しい、目。
いつも私を気遣ってくれた、サハラ様のいつもの目だわ……。
胸がキュウ、と締め付けられるのを感じる……。
「サハラ様……?」
サハラ様が私の頭を、軽く撫でると--船が、大きく揺れた。
じ、地震……!?
でもここは、海の上なのに……?
「う……ぎゃああああ!!」
目の前で、レティシア様を拘束していたはずの頭の突然の叫び声に、ハッとする。
視線を移す私の目に移ったのは……。
「なんだこれ! クソッ、クソが!!」
なぜか床から勢いよく生える、大木。
まるで生き物のように頭の体中に絡みつきながら急成長する、無数の枝やツル。
……目を疑うような光景。
「な……」
頭に拘束されていたレティシア様は、何故か無事で。
呆然とした表情で、頭を見上げていた。
それは、ルドルフも同じだったみたい。
ザクッと、音がした。
と同時に、後ろで拘束されていた手が解放された事に気がついた。
「今のうちに逃げるぞ!」
サハラ様がそう言いながら、レティシア様とルドルフの手首の縄もナイフで切っていて。
「……どういう事なの?」
レティシア様が、サハラ様に問いかける。
木に、半身は飲み込まれながらもナイフを片手に暴れている頭を見上げながら。
「言ったろ、王子様のお出ましだって」
王子様……。
その言葉を聞いた瞬間。
……レティシア様の目が潤んでいく。
そして、
「レティシア……。あんたは、自分一人で抱え込みすぎだ」
そう言いながら、サハラ様が船から港町へと視線を移す。
つられて私たちも、そちらへと視線をやると。
「……シオン様!」
大勢の兵士へと指示を出す、シオン様の姿。
兵士たちが船へ次々と乗り込む中、シオン様がこちらの視線に気づいたらしい。
「……レティシア! エルマも、無事だな!?」
私たちの姿を確認すると、ホッと安堵の表情を、浮かべていて。
チラッとレティシア様を見てみると……。
涙が一筋、流れていた。
……綺麗だわ。
とても綺麗で……女の私でも見惚れてしまうくらい。
「行こうぜ。話は降りてからだ」
「サハラ様……私……」
なんて酷いことを口にしてしまったの?
……サハラ様のことを、どうして信じられなかったの?
俯く私に、サハラ様は苦笑する。
「エルマ、オレは……」
「--ふざけんな!!」
頭の声が、頭上から降ってきた。
思わず見上げると、
「てめーら全員、ぶっ殺してやる!!」
持っていたナイフを、こちらに向けて投げてきた。
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