ティアラの花嫁

rui

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49.どうして

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……そうだわ。

やっと、気づいた。
この男の子が誰に似てるのかと思ったら……レティシア様に似てるのよ。

薄茶色の髪も。
青の瞳も。
……どこか人形のように整った、美しい顔立ちも。

待って……。
お姉ちゃん?
お姉ちゃんって、この男の子はレティシア様の弟?

「遅くなってごめんね……」
「大丈夫だよ。それよりお姉ちゃん、ひどい目に合ってない? 大丈夫?」
「私は大丈夫」

そんな二人の会話に。
私の頭の中は……ただ、混乱してた。

……どういうことなの?
なぜ、空賊団の仲間であるレティシア様の弟が、こんな扱いを……。

これじゃあ、まるで--。

……私が状況を整理するよりも先に。

「--サハラ! 遅かったじゃねぇか!」

男たちのいる部屋から、耳を疑うような言葉が聞こえてきた。

……サハラ?
サハラ、様……?

カタカタと、体が震えだした。

そんな私の耳に更に聞こえてくるのは、

「……すいません、頭。色々とありまして」

……まぎれもない、サハラ様の声。
 
『サハラ様……私に、隠してる事がありますよね?』
『隠し事? なんだそれ? エルマに隠し事なんてないって! するわけないだろ??』

どうして。

『なぜ……私を襲った男たちの事を、報告されなかったのです?』
『……おかしいな? ちゃんと報告したはずなんだけど、』
『ッ、あの男たちと、何か関係があるのではないですか!?』

どうして。

『……ごめん、エルマ』

どうして……!!?

「なぁ、あの女は関係ないだろ? 王子のお気に入りだし、騒ぎになる前に解放した方がよくないか?」

サハラ様の、聞いた事のないような冷たい声を。
泣くのを必死にこらえながら、私はただ、聞くことしかできなかった。
顔を見ることが、できなかった。

「お前のお気に入り、の間違いだろ?」
「まさか! あの女に近づいたのは、情報収集のためだけだ」
「へぇ? じゃあ、杞憂だったな」

……情報収集のため?
それだけの理由なの……?

脳裏に浮かぶのは、サハラ様と過ごした時間。
優しかった。
それに、辛い時にそばにいてくれた。
大切にしてくれた……。

それらが全部。
全部、嘘だったなんて……。

そんな……!

「……で? レティシアにサハラ。噂の宝は手に入れたんだろうな?」

レティシア様が、ギュッと弟を抱きしめる姿が目に映った。
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