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44.冷たい声
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「--何か話す気になったか?」
守備兵から鍵を受け取って。
ガチャリ、と鍵を開けて中に入るなり、窓から外を眺めていたレティシアに問いかけた。
ここは、城の最上階に位置する部屋だ。
外から鍵をかける事ができ、食事なんかはドアの小窓から手渡せるようになっている。
つまりは--軟禁部屋だ。
振り向くレティシアの顔色は悪い。
「……私はなにもしていません。なのになぜ、急に軟禁なんて……」
まだ、しらを切るのか。
「空賊団」
「…………」
オレの一言に、ピクリと反応した。
「君はその一員だ」
「……違います。一体だれがそんな出まかせを?」
「ルイズ」
オレがルイズの名を呼べば、フワリと目の前に精霊ルイズが現れる。
「……その黒猫は、」
レティシアが、驚いたように呟いた。
きっと、ルイズがただの黒猫としてレティシアに近づき、情報を仕入れたからだろう。
「こいつはルイズ。オレと契約している精霊だ」
「精霊……? ただの言い伝えでは……」
ルイズはふわふわと飛びながら、
「我々は、滅多なことでは姿を見せない」
レティシアにそう、話しかける。
そして続けて、
「手紙の内容は一言一句覚えている。
『引き続き秘宝のありかを探る事。金目のものを集めて持ち帰る事。期限は残り二週間』だった。つまり、期限は明日ということになる」
「…………」
ルイズの言葉に、レティシアはうつむいて黙ってしまった。
反論しないという事は、認めたも同然だ。
……心のどこかで。
本当は何かの間違いじゃないのかと、思っていたのかもしれない。
知らなかった。
愛する女に裏切られるというのは……こんなに胸が痛むのか。
「……空賊団は、世界的に危険な組織だ。国を襲って盗みを働き、女子供をさらって人身売買もすると聞く。見過ごすわけにはいかない」
……ふと。
自分の言葉に、何がひっかかった。
そういえば、前にも……。
「……処刑でもされますか?」
ポツリと、レティシアが感情のこもらない声でつぶやくように問いかけて、ハッと我にかえる。
「そんなこと、するわけない」
「……なぜ?」
即答するオレに、レティシアはさらに質問をする。
まあ、無理もない。
普通は、そうなってもおかしくない。
空賊団の一員であること。
それだけでも極刑ものだ。
それでも--。
「言ったはずだ。君と死ぬまで一緒にいたいと」
レティシアが、驚いた表情を浮かべた。
そして、ギュッと、拳を強く握りしめるのが目に映る。
そして……
にじんだ涙を、見逃さなかった。
思わずその涙を拭おうと、手を伸ばすと。
「……あーあ。あともう少しだったのに」
レティシアは、避けるようにクルリとオレに背を向けた。
その声は今までに聞いた事がない、冷たい声だった。
守備兵から鍵を受け取って。
ガチャリ、と鍵を開けて中に入るなり、窓から外を眺めていたレティシアに問いかけた。
ここは、城の最上階に位置する部屋だ。
外から鍵をかける事ができ、食事なんかはドアの小窓から手渡せるようになっている。
つまりは--軟禁部屋だ。
振り向くレティシアの顔色は悪い。
「……私はなにもしていません。なのになぜ、急に軟禁なんて……」
まだ、しらを切るのか。
「空賊団」
「…………」
オレの一言に、ピクリと反応した。
「君はその一員だ」
「……違います。一体だれがそんな出まかせを?」
「ルイズ」
オレがルイズの名を呼べば、フワリと目の前に精霊ルイズが現れる。
「……その黒猫は、」
レティシアが、驚いたように呟いた。
きっと、ルイズがただの黒猫としてレティシアに近づき、情報を仕入れたからだろう。
「こいつはルイズ。オレと契約している精霊だ」
「精霊……? ただの言い伝えでは……」
ルイズはふわふわと飛びながら、
「我々は、滅多なことでは姿を見せない」
レティシアにそう、話しかける。
そして続けて、
「手紙の内容は一言一句覚えている。
『引き続き秘宝のありかを探る事。金目のものを集めて持ち帰る事。期限は残り二週間』だった。つまり、期限は明日ということになる」
「…………」
ルイズの言葉に、レティシアはうつむいて黙ってしまった。
反論しないという事は、認めたも同然だ。
……心のどこかで。
本当は何かの間違いじゃないのかと、思っていたのかもしれない。
知らなかった。
愛する女に裏切られるというのは……こんなに胸が痛むのか。
「……空賊団は、世界的に危険な組織だ。国を襲って盗みを働き、女子供をさらって人身売買もすると聞く。見過ごすわけにはいかない」
……ふと。
自分の言葉に、何がひっかかった。
そういえば、前にも……。
「……処刑でもされますか?」
ポツリと、レティシアが感情のこもらない声でつぶやくように問いかけて、ハッと我にかえる。
「そんなこと、するわけない」
「……なぜ?」
即答するオレに、レティシアはさらに質問をする。
まあ、無理もない。
普通は、そうなってもおかしくない。
空賊団の一員であること。
それだけでも極刑ものだ。
それでも--。
「言ったはずだ。君と死ぬまで一緒にいたいと」
レティシアが、驚いた表情を浮かべた。
そして、ギュッと、拳を強く握りしめるのが目に映る。
そして……
にじんだ涙を、見逃さなかった。
思わずその涙を拭おうと、手を伸ばすと。
「……あーあ。あともう少しだったのに」
レティシアは、避けるようにクルリとオレに背を向けた。
その声は今までに聞いた事がない、冷たい声だった。
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