ティアラの花嫁

rui

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4.アドバイス

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父との話を終えて廊下を歩いていると、エルマの後ろ姿が目にうつる。
今日はよく会うな。

「--えっ、縁談ですか!?」

廊下の壁にもたれながら、ああ、と父に渡された写真をエルマに手渡した。

彼女の意見を聞いてみたい、と思ったんだ。

エルマは写真の女を目にすると、

「とても綺麗な方じゃないですか……! シオン様にはもったいないくらい」

クスクスと冗談混じりにそう言いながら、写真を返してきた。

「でも……綺麗すぎて、なんだか人形みたい。というか、シオン様にはまだ……早いのでは?」

……?

早いことはない。
少なくとも、この国での21歳は適齢期だ。
じきに22にもなる。

エルマはいつまで、オレを弟扱いするつもりだ?
たしかに、オレの方が年下だが……。

写真をもう一度、自分でも見てみる。
人形のようだ、という感想は全く同じだ。

「父も母も、早く孫の顔が見たいらしい」
「……なら、うまくいくといいですね。縁談」

ニッコリと笑みを浮かべると、エルマはペコリと頭を下げて再び仕事に戻って行った。
が、一度立ち止まって、くるりと振り返ると、

「あっ、そうだわ。いくつか忠告しておきます。シオン様は縁談の時、もう少し相手の方に興味を持った方がいいです。居眠りなんてもってのほかです。それと、エスコートもしっかりなさってください。会話も男性がリードしなければなりませんよ。とにかくドレスでも仕草でも何でもいいので褒めてあげてください。……きっとうまくいきますから」

一気にそんなアドバイスをまくし立てると、今度こそ行ってしまった。
一人残されたオレはというと、

「……無理だ」

そう、ポツリと呟いた。

これまでに綺麗な女、おしゃべりな女、おしとやかな女……色んな相手と見合いをしてきた。
けど、誰一人として興味を持つ女はいなかった。
過ごす時間が苦痛でしかなかった。

面倒くさい。
喋るのも億劫だ。
エスコートくらいはするが、どのお茶が好きだ、趣味はなんだ……なんて、つまらん話を聞かされれば眠くなるのも無理ない。

…………。
仕事なら、自分を偽って演技できる。
見合いで演技して気に入られても、結婚したとしても、無意味な気がするんだが。

「……そういえば」

エルマと話す時は、面倒くさくはない。
……まあ、長い付き合いだし、姉のようなものだからか。

そう納得すると、オレも部屋に向かって歩き出した。
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