33 / 40
魔法の国クラスタ
32
しおりを挟む
--夢の中で。
テスの隣に立ち、クラスタの城の屋上から雲を見下ろすように眺めている。
遠くに見えるのは、緑の大地……ジャックの住む地上だ。
「久しぶりだな」
「うん」
ここ数年、毎晩のように徹夜続きで何度体を壊しそうになったか分からない。
だから、疲れを取らなきゃダメだ、とあえてテスは夢に現れなかった。
何ヶ月ぶりだろうか。
「ジャックに会わなかった間ね。ミリアと会えたよ」
「ミリア? ふーん……」
王都に出てから、時々、忘れた頃にジーグと様子を見に来てたな、と思い出してると。
「ミリア、ジーグさんと結婚するんだって。幸せそうな笑顔で教えてくれたよ」
「……そうなのか?」
ジーグとミリアが、結婚。
それはまだ、聞いてない。
とはいえ、そんなに驚くような事でもなかった。
ここ一年ほどは、会いに来る二人の雰囲気が、なんだか甘ったるいものに見えたからだ。
「好きな人と結婚できるなんて、幸せだね」
そう、嬉しそうに話すテスの手を、ジャックは握りしめる。
すると、テスは頬を赤らめて、更に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「完成した。明日、試運転だ」
「……! おめでとう、ジャック!」
テスが、興奮気味にギューッと首に手を回して抱きついてきた。
「すごいすごい! ホントに、ホントに夢を叶えられるんだね! ジャック、おめでとう!!」
「テスのおかげだ」
「私? 私は、なにも……」
「お前がいたから、諦めずに頑張れた」
ジャックがこんな事を言うなんて、珍しい。
だからか、テスは耳まで赤くなってしまう。
「……ふふっ。実はね、このままジャックが先におじいちゃんになったらどうしよう、って考えてたの」
クスクスと笑うテスは……18歳のまま、何も変わっていない。
いや、正確には18歳になる直前だが。
とにかく、彼女の中の時間は、眠りについた時から止まっているらしい。
「じじいのオレは嫌なのか?」
ジャックである事にかわりはないのだが。
そう、少し複雑な気持ちで聞いてみると。
「一緒に歳をとりたいもん。それに……」
テスは頬を赤らめた。
「……ジャックの赤ちゃん、いつか欲しいよ……。おじいちゃんになったら、作れないでしょ?」
「…………」
思わずかたまってしまうジャックの手を、テスがギュッと握りしめてきた。
そして、
「ジャックは……子供、嫌い?」
とても、とても幸せそうな笑みで、そんな事を質問してきて。
思わずジャックは、頭を抱えた。
7つも年上になったはずなのに、いつまで経ってもテスにかなう気がしない。
「……行くぞ」
「えっ、どこに?」
どうにも我慢できそうにないと悟ったジャックは、テスの部屋に向かう。
そして、その後は……久しぶりのテスを、味わうのであった。
テスの隣に立ち、クラスタの城の屋上から雲を見下ろすように眺めている。
遠くに見えるのは、緑の大地……ジャックの住む地上だ。
「久しぶりだな」
「うん」
ここ数年、毎晩のように徹夜続きで何度体を壊しそうになったか分からない。
だから、疲れを取らなきゃダメだ、とあえてテスは夢に現れなかった。
何ヶ月ぶりだろうか。
「ジャックに会わなかった間ね。ミリアと会えたよ」
「ミリア? ふーん……」
王都に出てから、時々、忘れた頃にジーグと様子を見に来てたな、と思い出してると。
「ミリア、ジーグさんと結婚するんだって。幸せそうな笑顔で教えてくれたよ」
「……そうなのか?」
ジーグとミリアが、結婚。
それはまだ、聞いてない。
とはいえ、そんなに驚くような事でもなかった。
ここ一年ほどは、会いに来る二人の雰囲気が、なんだか甘ったるいものに見えたからだ。
「好きな人と結婚できるなんて、幸せだね」
そう、嬉しそうに話すテスの手を、ジャックは握りしめる。
すると、テスは頬を赤らめて、更に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「完成した。明日、試運転だ」
「……! おめでとう、ジャック!」
テスが、興奮気味にギューッと首に手を回して抱きついてきた。
「すごいすごい! ホントに、ホントに夢を叶えられるんだね! ジャック、おめでとう!!」
「テスのおかげだ」
「私? 私は、なにも……」
「お前がいたから、諦めずに頑張れた」
ジャックがこんな事を言うなんて、珍しい。
だからか、テスは耳まで赤くなってしまう。
「……ふふっ。実はね、このままジャックが先におじいちゃんになったらどうしよう、って考えてたの」
クスクスと笑うテスは……18歳のまま、何も変わっていない。
いや、正確には18歳になる直前だが。
とにかく、彼女の中の時間は、眠りについた時から止まっているらしい。
「じじいのオレは嫌なのか?」
ジャックである事にかわりはないのだが。
そう、少し複雑な気持ちで聞いてみると。
「一緒に歳をとりたいもん。それに……」
テスは頬を赤らめた。
「……ジャックの赤ちゃん、いつか欲しいよ……。おじいちゃんになったら、作れないでしょ?」
「…………」
思わずかたまってしまうジャックの手を、テスがギュッと握りしめてきた。
そして、
「ジャックは……子供、嫌い?」
とても、とても幸せそうな笑みで、そんな事を質問してきて。
思わずジャックは、頭を抱えた。
7つも年上になったはずなのに、いつまで経ってもテスにかなう気がしない。
「……行くぞ」
「えっ、どこに?」
どうにも我慢できそうにないと悟ったジャックは、テスの部屋に向かう。
そして、その後は……久しぶりのテスを、味わうのであった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる