眠り姫は夢の中

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眠り姫は夢の中

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「「「だ、だ、だ……誰じゃあああ! 誰が浮遊石を盗んだんじゃあああ!!?」」」

……魔法の国クラスタの城中に、長老たちの悲鳴にも似た声が響き渡った。

午後のティータイムを楽しんでいた国王夫婦は、顔を見合わせる。

「……なにごとだい?」
「なにかしら??」

二人が人だかりのところへ向かうと、そこは、浮遊石の倉庫だった。


「どうしたんだい?」

とりあえず、国王はその場にいたリリーとララに問いかけてみる。
すると、

「浮遊石が……」
「何者かに盗まれたそうです」

そんな答えが返ってきた。

そういえば、長老たちは浮遊石を使ってなんとしてでも地上へ向かう、と話していたことを思い出す。

なぜ、すっからかんになくなっているのだろうか。

「こ、こうなったら町中から浮遊石のカケラをかき集めて……」
「集めたところで微々たるものじゃぞ」
「ならば盗んだ者を探し出すんじゃ」

わいわい騒いでいる長老たちに向かって、

「あら? 浮遊石なら、テスが魔法の力であげたそうよ??」

そう、王妃がにこやかに話しかけた。
それは初耳だ。

「それは一体どういうことだい? あげたって、一体誰に??」

国王が不思議に思って問いかける。

「それはもちろん、テスの運命の相手に決まってるじゃない! 時間はかかっても、必ず来てくれるってテスは信じてるわ。……だから長老様たちも、どうか信じてあげてくれませんか?」

王妃の言葉に、長老たちは顔を見合わせた。

テスの運命の相手は、地上の人間。
地上の空を結ぶ唯一の魔法陣は、使用不可。

けれど、もし王妃の話が真実だとするのならば。

「……ならば、ならば希望はあるのじゃな?」
「お相手が必ず、迎えに来るのじゃな??」
「ならば、せめて迎えに来られるその日まで、わしらが姫様をお守りするのじゃ!」

長老たちは再び顔を見合わせると、気合いを入れてどこかへと駆け出した。
あの様子だと、おそらくテスの眠る部屋だろう。

***

「--で、1日8時間……三人で交代しながらテスを見守ってくれるのは有り難いんだけど……本当に大丈夫かな? 長老たち……倒れない??」

どうやら、長老たちは三人で24時間体制でテスを見守ることにしたらしい。
それに加えて、リリーとララも目を光らせている。

そう簡単には、部外者はテスの元へたどり着くことはできないだろう。

それはありがたいのだが、いい年をした長老たち。
体は大丈夫なのだろうか。

国王が心配そうに王妃に尋ねると、コクリと頷いた。

「すでに夜這いに忍び込んだ男性を三人も撃退したそうよ? 頼もしいわ」
「よ、夜這い!? なんだいそれは!? 僕も毎晩見張りを……」
「あらまあ」

テスが深い眠りについたという噂は国中を駆け巡り……。
こうして、時々悪い事を考える輩もいるようで。

長老たちのお陰で、テスはただただ気持ち良さそうに、眠りにつくことが出来ていた。

「ふふ、今日はどんな夢を見ているのかしらね?」
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