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眠り姫は夢の中
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「……どうなの? テスの様子は」
母親が心配そうに、診察してくれた主治医に聞いた。
ベッドには、すーすー、とテスが気持ちよさそうに寝息をたてている。
「大丈夫です。ただ眠っているだけですよ王妃様」
主治医の話にホッと胸をなでおろした。
「ただ……18の誕生日より少し早いですが、もしかしたらもう深い眠りについてしまったのかもしれませんね」
突然意識を失い、眠りについてしまったというテス。
その話を聞いて、そんな気はしていた。
さて。
後は、運命の赤い糸で結ばれた相手がキスをしに来てくれるのを待つばかり、なのだが。
夫が言うには、相手は地上の人間だという。
黒髪で、少々目つきが悪くて、なんだかとっつきにくい雰囲気だとか。
飛空船で迎えに来てくれると夢の中で約束をしてるそうだ。
テスが幼い頃から何度も、何度も話をしてくれた、あの夢の中に現れる少年……ジャックのことだと、すぐにピンときた。
彼は、やはりテスの運命の相手だったのだ。
母親は眠るテスの髪を優しくなでながら、
「待ち遠しいわね、テス」
そう、話しかけた。
すると、黙って話を聞いていた長老の一人が口を開く。
「姫様、わしらが必ずお相手を連れてきますからの」
その言葉に、母親は首をかしげる。
「あら? どうやって連れてくるの?」
確か、地上と繋がる魔法陣は使用できないと聞いた。
それに浮遊石を使うという話もあったが、地上まで生身で行くには危険すぎるとも。
「危険だろうとなんだろうと、ワシは浮遊石を使って地上へ向かうつもりじゃ」
「そうでもせんと、姫様は永遠に眠り続けてしまうしの」
「姫様のためじゃ」
長老たちの覚悟を聞いて、母親はニコニコと笑みを浮かべながら、
「そんなことしなくても大丈夫ですよ、きっと。彼の方から来てくれますから」
呑気にお茶を飲み出した。
マイペースな王妃に、長老たちは慌て出す。
「お気を確かに!」
「地上から来るなんてあり得ん!」
「諦めてはいかん!」
「こうしちゃおれん!」
「行くぞ!」
「待て待て、腰が……!」
杖をつきながらわいわいと部屋から出て行く長老たちに、母親はあっけにとられてしまった。
「あらまぁ……」
大丈夫だろうか。
「……どうなの? テスの様子は」
母親が心配そうに、診察してくれた主治医に聞いた。
ベッドには、すーすー、とテスが気持ちよさそうに寝息をたてている。
「大丈夫です。ただ眠っているだけですよ王妃様」
主治医の話にホッと胸をなでおろした。
「ただ……18の誕生日より少し早いですが、もしかしたらもう深い眠りについてしまったのかもしれませんね」
突然意識を失い、眠りについてしまったというテス。
その話を聞いて、そんな気はしていた。
さて。
後は、運命の赤い糸で結ばれた相手がキスをしに来てくれるのを待つばかり、なのだが。
夫が言うには、相手は地上の人間だという。
黒髪で、少々目つきが悪くて、なんだかとっつきにくい雰囲気だとか。
飛空船で迎えに来てくれると夢の中で約束をしてるそうだ。
テスが幼い頃から何度も、何度も話をしてくれた、あの夢の中に現れる少年……ジャックのことだと、すぐにピンときた。
彼は、やはりテスの運命の相手だったのだ。
母親は眠るテスの髪を優しくなでながら、
「待ち遠しいわね、テス」
そう、話しかけた。
すると、黙って話を聞いていた長老の一人が口を開く。
「姫様、わしらが必ずお相手を連れてきますからの」
その言葉に、母親は首をかしげる。
「あら? どうやって連れてくるの?」
確か、地上と繋がる魔法陣は使用できないと聞いた。
それに浮遊石を使うという話もあったが、地上まで生身で行くには危険すぎるとも。
「危険だろうとなんだろうと、ワシは浮遊石を使って地上へ向かうつもりじゃ」
「そうでもせんと、姫様は永遠に眠り続けてしまうしの」
「姫様のためじゃ」
長老たちの覚悟を聞いて、母親はニコニコと笑みを浮かべながら、
「そんなことしなくても大丈夫ですよ、きっと。彼の方から来てくれますから」
呑気にお茶を飲み出した。
マイペースな王妃に、長老たちは慌て出す。
「お気を確かに!」
「地上から来るなんてあり得ん!」
「諦めてはいかん!」
「こうしちゃおれん!」
「行くぞ!」
「待て待て、腰が……!」
杖をつきながらわいわいと部屋から出て行く長老たちに、母親はあっけにとられてしまった。
「あらまぁ……」
大丈夫だろうか。
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