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俺は隣国からの逃亡者だ。
隣国は魔道具の研究に熱心な国で、この国からすると驚くほど進んだ魔道具が、数多くある。人間の魔力量の差を補うための魔道具研究には、特に重点をおいていて、そこでは日常的に人体実験が繰り返されている。驚くほどの話じゃない、貧乏な大家族にはよくある話だ。もっとも発育の悪い子どもを、いくばくかの金と交換する。
国土のほとんどを険しい山脈によって埋められている国。外界と隔てられた狭く貧しい土地は、横たわる長い山脈から吹き下ろす風にさらされ、作物が育ちにくい。人々は小さな村に分かれて生活し、閉鎖的で差別的である。
俺は多少なりとも魔力があったから、という理由で早々に親に売られた。研究施設では地下の部屋に住んでいた。天井が低く、窓は天井付近に格子付き、見えるのは空と地面に生える雑草、ときおり通り過ぎる人の足。家にいたころより、食べ物はきちんと与えられる、過酷な農作業もない。たまに研究者たちが、子どもを集めて読み書きを教えてくれる日もあった。それは単に、自分で魔道具を発動させるために、一定に文字を読み書きできる必要があったからなのだが。実家よりはマシ、そんなところだった。
自由時間も自由行動もなかった。適性検査を何度も受け、薬で眠らされると体をどこかしら切られていた。傷口は何か異物を埋め込まれ、糸で縫い止めてあった。わけのわからない装置に固定され、様々な魔道具で魔力を流される。体に埋め込まれた何かに、それらは反応する。どれくらい切り刻まれ、いくつの魔道具を埋め込まれたんだろう。俺はそこまで多くの数の数え方を知らなかった。研究施設の建物の外に出ることはできなかったが、部屋の格子窓から雪が降って、草が芽吹くのだけは、ちゃんと数えていた。六つでここに来て、六度季節が巡った。
他にも子どもはたくさんいたはずだが、普段顔を合わせることは、ほとんどなかった。みんな俺と同じように無気力で、誰とも話そうとしない。あれはたぶん、食べ物か飲み物に、常習的に薬が入れられていたんだろうと思う。いつものように地下室の鍵が回り、扉を開けられ連れ出される。手を引かれて上の階にある研究室へ行き、自ら服を脱いでおかしな形をした椅子に座り、ベルトで固定されやすいように、じっとして待つ。
魔力を流されると、このあいだ切られたばかりの、下腹の傷がうずく。いつもより大きめの傷口には糸がついたままで、治りが遅い。今も異物が、下腹の中で動いているような気がした。固定された頭を動かすことはできないから、目だけで確認すると、糸のすきまからじわりと血がにじんでいた。
やめてほしい、と言える資格が子どもにはない。実験中に舌を噛む事故が起きないよう、口には布がかませてある。頭、首、二の腕、手首、膝下、足首。固定された体は、痛みがあったとしても、逃げることなどかなわない。すべての魔道具で魔力を流していく検査を、俺が最後まで確認できたことはない。その前に気を失うからだ。俺の体に埋め込まれた小さな魔道具と、俺に魔力を流す魔道具、どっちの数が多いんだろうか、そんなことを考えて少しでも気を紛らわそうとした。
いつものように実験中に気を失って、起きたら部屋で寝ているはずだった。だがその日は目覚めると、見えたのはぜんぶ空で。俺はたった一人裸で、爆発に巻き込まれたような瓦礫のなかにいた。あちこち傷だらけで痛い。命だけが、かろうじて助かったらしい。
そこは深い山のなかだった。石造りの研究施設は崩れてしまって、元の建物がどんな形だったのかすらわからない。けっこう大きな石なんかも遠くまで飛ばされていて、そのそばには、革の鞄だとか崩れた木製の箱があった。開けてみると鞄には光る石、使い方のわからない魔道具が入っている。木箱のそばには服や布、紐があった。大きすぎる服を、紐で巻いてずり落ちないよう固定した。布を足に巻き、紐で縛った。鞄の中身は重いものを取り出し、置いていくことにする。体中痛かったが、頭だけは妙にすっきりしていた。とにかくここから逃げよう、初めてそう思い、俺はすぐ実行に移した。
山のなか、齢十二の子どもに何ができる? 少なくとも、歩くことができた。食べられそうに見えるものは全部口に入れ、疲れたら眠った。はじめて魔物に襲われたときは、無我夢中だった。死ぬ気で腕を振り回していたら、なぜか攻撃魔法を放ってしまった。とにかく目的地も方角もわからず歩き続けて、魔物に襲われたら攻撃魔法で撃退した。そのうち数をこなし、攻撃魔法だけ何とか習得した。
人に会うのが怖くて、山を下りる気にはならなかった。家に戻されるか、別の研究施設に連れて行かれるか。一人の方がずっと気楽だ。そうしてずっと山のなかを歩き続け、雪が降り死にかけた。食べ物がなかったからだ。手頃な洞窟を見つけ、巣穴にいた動物から奪い取った。巣穴は枯れ葉が敷いてあったから、そこで丸くなって寝た。その頃には、散々いじり回して使い道を理解した、いくつかの魔道具を扱えるようになっていた。少しだけ魔力を流すと暖かくなる魔道具が、洞窟のなかでは本当に助かった。魔力を通せば少しの力で、上下の刃が咬みあい何でも切れる魔道具も、便利だった。
腹をすかせたまま、暖かくなる魔道具を抱き寄せて眠った。ときどき寒さで目を覚ましたら、魔力を流してまた眠る。その年の俺は、冬を雪の下で過ごす動物みたいに、冬眠したんだと思う。眠って起きて魔力を流してを繰り返し、起きたら雪がなくなっていた。洞窟の外に出て、食べられるものはすべて口に入れた。食べ過ぎて吐いた。吐いているところへ、狩りにやって来た人間と会った。
何を言っているのか、ぜんぜんわからなかった。まるで別の国の言葉みたいな。俺も一応話してみたんだが、何しろ何年もまともに話したことなんてなかったから、言葉じゃなかったかもしれない。親切な狩人だった、俺を自分の山小屋へ連れて行き、しばらく面倒をみてくれたのだ。
「モル」というのが、俺の呼び名になった、モグラという意味だ。言葉がわからず、髪は伸び放題、山のなかで体を洗ったことはなく、どんなものでも生で口に入れる俺はモグラだった。俺は生きるのに必死で、狩人が驚くほど早く言葉を話せるようになった。髪を切ってもらい、川で体を洗った。食べ物は火を通すことを覚え、塩という調味料を使う料理を教わった。狩人は俺のことをモルと呼び、狩りにも連れて行って山のことを教えてくれた。魔物を追い払うどころか、魔物ごと消滅させてしまう俺の攻撃魔法は、狩りとは相性が悪かったのだが。
狩りの季節が終わり、狩人が山を下り町へ戻る、と言うのでついていった。町での暮らし方を教わり、宿屋で住み込みの仕事を紹介してもらった。ずいぶん小さいねぇ、と宿屋のおかみは言ったが、俺は十五になると言い張った。本当は十三だったが。昼は食事を出し、夜は居酒屋兼宿屋。安くてうまい飯は大繁盛、人手はいつも足りないから、俺のような子どもでも役にたった。勘定もつけないといけないし、文字も読めなくては仕事にならない。俺はしごく真面目に働いた、文字も読めるようになり、簡単な文章くらいは書けるようになった。狩人が俺を紹介するときにモルと呼んだので、ここでもみんなからモルと呼ばれた。
多少の魔法が使えるなら、魔法使いになれるかもしれない、と都からの新聞を見た狩人が俺に教えに来てくれた。町に家があったが、独り身の狩人は俺の働く宿屋に、よく食事のために来たのだ。
「なんだ、魔法が使えるなら都へお行きよ」と送り出してくれたのは、宿屋のおかみだった。それで俺は都へ向かった、十六の年だ。
都へまっすぐ行くには、俺のいた町は遠すぎた。城壁で覆われたような、大きな町へ入るには金がいる。旅費はすぐに底をつき、町に着くと光る石をひとつ売った。途中は野宿して、少しでも金を使わないようにした。革の鞄は二重底にして、光る石や小さな魔道具を隠した。道中、魔物がいても魔法をぶっ放せば道も壊れてしまうから、人々と一緒に逃げた。なんの取り柄もない俺だが、道の途中で連れ合った人たちと、なんとなく話をしたりする。俺は十八になったが、二十歳で通した。子ども一人で旅をするのは危険で不便だ、早く一人前の大人として、扱われたかった。
旅の連れ合いになった人たちに、害にも益にもならない男、そんな風に言われた。普通が一番、それがうれしかった。名前を聞かれると、モルと答えた。六つまでいた家で名前を呼ばれた気もするが、覚えていない。他に教える名前がなかったから、それはそのまま俺の名前になった。俺はモル、ちょっとだけ魔法が使える、ごく普通の男。都を目指して旅をしている、と言うと、そんなやつは五万といると言われた。五万のなかの一人、悪くない。町から町へ、都を目指して俺は歩き続けた。
都にほど近く、城壁を有する比較的大きな町へ入ったときだった。ここでは都の新聞が、次の日の速便で届く距離なのだ。情報も新しいものが多く、町も活気があった。さして取り柄のない俺は、宿屋で住み込みの仕事を探した。大きな町なら宿屋の需要も多い、仕事はすぐに見つかった。十九だったが、二十一歳になるといつわった。簡単な調理も手伝えるし、帳簿もつける。宿屋での仕事はどこも同じ流れだから、俺にとっては慣れた仕事だった。いたって普通の男が、宿屋兼食堂で給仕するのに無愛想もなんだ、できるだけ客に話しかけ笑顔でいるように心がけていた。
ようやく普通の大人たちにまぎれても、ただの男として認識されるようになって、ほっとしていたのかもしれない。旅では気を抜くことなどなかったから、楽しそうに会話していても、警戒は怠らなかった。荷物を盗まれそうになったり、暴力を振るわれそうになったら、迷わず魔法を放った。死んだらおしまいだからだ。俺みたいな普通の男に、女を見るように欲情する男がいるなんて、思いつきもしなかった。
宿に連泊した客が、やたらと俺にかまった。距離感のない男だ、というのが俺の感想だ。食堂の常連客があいつお前に惚れてるな、などと冷やかすものだから、周りが盛り上がり一層茶化した。惚れるという感情が、そもそも理解できなかった。客だから、話しかけられたら手を止めて応対しなくてはならない。早く出立すればいいのに、面倒くさいなというのが正直なところ。いずれ都へ向かうつもりだから、この町にもそれほど長居するつもりもない。旅の資金がある程度貯まったら、旅立つ予定でいた。
宿屋の仕事にも休憩時間というのがある。それとは別に、仕事を休んでいい日まで、この町の宿屋では決められていた。休日などといわれても、何をして過ごしていいかわからない。最初のころはいつも通り仕事をしていたら、休めと怒られた。外の空気でも吸ってこい、と宿屋を出され、そのうち城壁の外を歩いたりするようになった。休日に宿屋を出ると早めに開き始めた屋台を覗き、適当に食べ物をみつくろい城壁を出た。しばらく進み道を逸れる、そこから雑草の生える場所を歩くと、小さな川が流れる木立があるのだ。人のいない静かな場所で何も考えずぼーっと過ごすのが、俺のお気に入りだった。
いつのように木の下でうたた寝をはじめたら、突然男に襲われた。手を縛られ、見れば宿屋の客だった。縄を準備し、俺のあとをつけてきたらしい。何をするんだと聞いたが、男は恐ろしい顔で、俺の服をむしっただけだった。昔切り刻まれた体は、あちこちに縫合の痕が残っている。当時埋め込まれた小さな魔道具は、体の成長とともに、肉の内側に埋まってしまい、触ってもほとんどわからない。男がやたらと傷を触るから、もしかしてあの国の研究施設を知る人間かと、怖くて動けなくなった。魔道具は高価なものだと、今の俺は理解している。俺の顔なんか知らなくても、埋め込んだ魔道具を目当てに探し当てたのか。この体には何十もの魔道具が埋め込まれている、全部売れば町で家が買えるほどの一財産だ。
撫で回されたあと、そこらじゅう舐められたり股間を揉まれたり、乳房もないのに胸をいじられ、何かおかしいと気づく。男の股間が異様に膨れ濡れている。夜の食堂でよく聞く、男と女の体の付き合い、つまりセックスをする気なのか。俺の耳にした知識では、セックスは寝台でするものだったし、男の相手は女のはずだ。気づいたはいいが、腕は拘束されている。服もむしられてしまったし、揉まれた股間は勃起してるし、俺に馬乗りになった男は、俺のズボンを脱がそうと手を掛けていた。
「セックスする気か」
俺はセックスをしたことがなかったから、興味があった。穴に突っ込むと、ものすごくきゅうっとして、自分でする何倍も気持ちがいいらしい。俺も十九歳、気持ちいいことをしてみたいお年頃だった。ただし、男同士でセックスする穴はどうするのか、検討もつかなかった。
「するよ。もしかしてセックス好きなの?」
俺がおびえるのを止め、興味を持ったのが意外そうな顔だった。
「したことない。穴に入れるときゅうってなって、ちんこが気持ちよくなるんだろ」
ただただ、好奇心だった。怖いことなんて、子どものころにすべて済ませたと思っていた。今の俺は大人で、体も大きくなったし、腕力もついている。
「君を今から犯すから。大丈夫、初めてならやさしくしてあげるからね」
犯すという言葉の意味がわからなかったが、やさしくしてくれて気持ちいいセックスなら、いいかと思った。穴に突っ込む方と、突っ込まれる方があることすら、知らなかった。受け入れる側には本来準備が必要で、大変な負担がかかることも。俺は本当に知識のない大馬鹿野郎だった。
男がズボンを脱がせるのを、俺も脱がせやすいよう腰を上げて手伝った。開いた足の間に、男が座っている。手のひらにぺっと唾をはいた男の手が、俺のちんこを握った。他人の手にちんこを触られるなんて、びっくりしてしまう。ごしごし擦られると、自分の手とは癖も力加減も違う男の手に、目からの刺激もあり、あっけなく射精してしまった。俺の出した精液を、内ももに塗りたくられて、何をするのかと顔を上げて見てしまう。そんなところに塗ったら、あとでガビガビになってしまう。男は閉じた俺の足首を持ち上げ、内ももの隙間ににゅるりと潜りこんできた。
「! 何を?」
勃起した黒っぽいちんこの先が、ぬるぬると股の間から顔を出す。規則正しく内股を擦られる感覚と、赤黒い亀頭がぴょこぴょこ出てくるのが面白くて、思わず笑ってしまう。
「初めてなのに、ずいぶん余裕があるね」
男が俺の足首をぐっと持ち上げ、腰の動きを早めた。
「? ……っう……っ?」
タマとちんこと、尻の穴の間んとこを、男の亀頭がグイグイこすっていく。押しつぶされるみたいに刺激を受けて、俺のちんこの先から液が出てぱたた、と腹を濡らす。
「な、……んこれ、きもちい………」
「ははっ、いい顔だ。もっと気持ちよくしてあげる」
空いてるほうの手に、男がつばを垂らす。その手を尻の穴に運び、唾液で濡れた指でぐるぐる回して押し開かれる。
つ、ぷ。
「んぁぅぅ」
気を抜いていた尻の穴に入り込んできたものが、ぐにぐにとその場で動かされる。ちんことタマと同じ速度で刺激を与えられ、尻の穴の出たり入ったりするものにも、快感を拾う。
「俺、またでそ……」
人が来ないとはいえ、外で全裸の男が快感に震えるのを見て、性的に興奮するには無理がなかろうか。それでも俺を犯すといった男は、ずっと勃起したままだった。
「ちょっと待ってな」
動きを止めた男が、ぺっと唾を落とした。ぺっ、ぺっ。何度か垂れた唾は、俺の内股を濡らし、尻を通って背中へ伝った。
「ほんとは脂があればいいんだけど。君とひとつになるのに、痛い重いさせたくないしね」
俺の膝を開かせ、自分の肩に掛けさせた男の指が、俺の尻を押し開く。唾を何度も足し、指を奥まで入れられ、ちんこの根元をぎゅっと掴まれた俺はやるせなかった。
「もうっ、だしたい、ちんこ放してくれよ、だしたい! もう気持ちいいの無理、やめたい」
「はははっ、かわいい。二十歳過ぎてるって聞いたけど、やっぱりもっと幼く見えるな」
でも、止めないから。男の低い声に、俺は縛られたままの腕で、隠すように閉じていた目を開く。ぎらぎらした目は、獲物を見つけた魔物と同じだ、俺はこの男に殺されると思った。
「普通の若い男が好きなんだ、どうしようもなくね。町を歩いてる君を見つけてさ、あとをつけたよ」
ズ、ク……ン、尻の穴を無理矢理広げてちんこをぶっ挿された。
「すぐ堕とせるかと思ってたのに、案外手間取ったなあ」
ググ……、出るはずの穴に入ってきたちんこが、ゴリュ、と中を通っていく。
「もうあんまり時間もないしさ、無理矢理襲って犯そうと思って、ずっと狙ってたんだ」
「はっ、ぐぅっ……や、めっ………」
奥までくるのを出そうと、腹に力をこめる。
「そう、じょうず。……そう、いいよ」
「あっ、やっ、なん、で」
出すときみたいに力を込めれば、ちんこはさらに奥にきていた。
「ほおら、ぜんぶはいった。はぁ、あったかい」
男が俺の腹を手のひらで押した。たしかにそこに異物が入っているのが、俺にもわかった。
ズ、ルルル……。男がゆっくりと抜いていった。えもいわれぬ快感が俺を襲った。
「っ! ひゃぁぁあぁっっ」
「才能あるみたいだね、感じやすいのかな」
グ、ググッ……。にゅくっ、ずりゅっ……。抜いたものが、再びはいってくる。
「んぁぁあぁ……っんっ! やぁ、だっ……って………」
「ああ、少し馴染んできた。君の雌穴は処女なのに名器だ。なんていやらしいんだろう」
ズニュッ……、にゅ、く、にゅく、にゅく……ずりゅりゅっ……。抜き差しが早まった。奥だけを攻められたり、全体を擦られたり。
「ふぁっ、あっ、ぁっ……」
うんこを出す穴なのに、ちんこが出ていくとき、とてつもなく気持ちがいい。うんこしてて、こんなに気持ちよかったことなんかない、おかしい。穴から出たちんこが入ってくるとき、ゴリュって押されるたび、まだ根元を締められたままの俺のちんこからも、何か出ていく。
好きに揺さぶられる俺は、鼻水をたらし、涙を流していた。
「ねえっ、ね、おれ、おかしくなりそ……ださせて、も、ださせておねがいっ」
「そうだね、……っもう、そろ、そろ、かなっ……」
男の腰がガンガン動いて、腰骨がガツガツ尻に当たっていた。男の汗をかいたふたつのタマが、ぱちゅぱちゅと尻を叩くのすら、気持ちがいい。
「あっ、でる、でるっはなしてっ、でるっ」
「……ん……っっく!」
突然緩んだちんこが震え、溜まっていた精液がびゅるるっと腹に出た。同時に男が抜いたちんこを自分でしごいて、俺の腹へ放ったから、俺の薄い腹の上は精液まみれになった。
「す、すご……」
今まで刺激を与えられていた尻の穴が、すうすうした。開いたままの足の間に、縛られた手を持っていく。俺の尻の穴、もう緩んで閉じないんじゃないだろうか。指を当てると、ちゅくっ、と穴が指に吸い付いてきた。
「うわっ」
そのまま第一関節をのまれそうになって、びっくりして指を引く。
「雌穴が収縮してる、いい眺めだ……まだ欲しがって、初めてなのにこんなに淫乱だなんて」
何を言ってるのか理解できないが、たった今俺を犯した男が、汗をかいて爽やかに笑っている。茶髪が額に張りついてるのを、手でかきあげる。あ、その指俺の尻の穴に入ったのに……。
「ねえ、君。名前は?」
「モル」
男がその手を俺の腹に伸ばす。二人分の精液を、俺の腹で混ぜて肌に塗り込んでいる。指が腹をなぞるのすら、ぞくりとする。汗が引いたら、今はぬるぬるしてる腹もガビガビになるだろう。涙と鼻水と汗でそこかしこがぐちゃぐちゃしている。よし、そこの小川で洗ってから帰ろう。俺は勝手に終わりだと思っていた。初めてのセックスは気持ちよかったし、犯してくれた礼を言わなきゃだ。そうと決まったら手をほどいてもらおう、俺は男に向けて縛られた手を上げた。
「なあ、これほどいてく、」
「モル、もう一回、気持ちよくなろうか」
「は? いやもういいよ」
俺はまだ寝っ転がって足を開いたまんまで、男はその間にいた。男の太くはないが長くて柔らかく反ったちんこが、また勃起していた。
「セックスは気持ちよかった、けど俺はもう帰りたい」
そんなことを言ったと思う。後ずさって逃げようとしたけど、足首を掴まれて無理だった。男を蹴ろうと暴れたら、ごろんとひっくり返されて、腰を持ち上げられて、そのままズッと挿入された。ガンガン腰を打ち付けられる。さっきまでの気遣いなんてない、ただ腰を動かして、ちんこが腹の奥の壁に、えぐるみたいに当たって痛い。強引に揺すられてるから、顔が地面にすれるのを、肘でなんとかこらえる。
「かわいい、かわいい。モル、君の初めてはぜんぶもらおう」
ナニいってんだこいつ、狂ってる。俺の喉からは、押しつぶされるたびに肺から出ていく音が漏れる。男が獣みたいに唸って尻にパァンと当たった体が、ブルブル震えた。
ズ、ズ……。異物が出ていく。つー、ぱたたっ。水音に膝の間から見れば、俺の尻から地面に水が漏れていた。違う、精液だ。尻の穴で射精しやがった。
「モル、もう一度、今度は正面から愛しあおう」
愛なんてない。力の入らない体を、ぐるりと回転され、簡単に持ち上げられてしまう。座った男の上に跨がされ、勃起したままのちんこを、両指で広げた尻の穴にあてがわれた。犯すって意味がようやくわかった。俺はやっぱり馬鹿だった。今さら自分を呪っても遅い。
「 ひ、ぃぃ、っ ぐあぁっ―――」
後ろから挿されたときより、もっと奥まで届いた。体のなかのなんか知らないけど袋かなんかが、破けそうな傷みがある。押さえられた腰を無理矢理ねじって、痛みからそらせようとひねる。自分で動いて、ゴリュってとこに当たって「ひぃんっ」て声が出る。思わず反った背中に、男のちんこの亀んとこが動いて、内側の袋の痛いとこを抜けてその奥にきた。
「ぐむぅ、うぅっっっ!」
「ぁ、やあ、や、ぬいてぬいてぬいてっ! こわい」
「ふ、ん……っっっ!」
「 ! ! !」
隣国は魔道具の研究に熱心な国で、この国からすると驚くほど進んだ魔道具が、数多くある。人間の魔力量の差を補うための魔道具研究には、特に重点をおいていて、そこでは日常的に人体実験が繰り返されている。驚くほどの話じゃない、貧乏な大家族にはよくある話だ。もっとも発育の悪い子どもを、いくばくかの金と交換する。
国土のほとんどを険しい山脈によって埋められている国。外界と隔てられた狭く貧しい土地は、横たわる長い山脈から吹き下ろす風にさらされ、作物が育ちにくい。人々は小さな村に分かれて生活し、閉鎖的で差別的である。
俺は多少なりとも魔力があったから、という理由で早々に親に売られた。研究施設では地下の部屋に住んでいた。天井が低く、窓は天井付近に格子付き、見えるのは空と地面に生える雑草、ときおり通り過ぎる人の足。家にいたころより、食べ物はきちんと与えられる、過酷な農作業もない。たまに研究者たちが、子どもを集めて読み書きを教えてくれる日もあった。それは単に、自分で魔道具を発動させるために、一定に文字を読み書きできる必要があったからなのだが。実家よりはマシ、そんなところだった。
自由時間も自由行動もなかった。適性検査を何度も受け、薬で眠らされると体をどこかしら切られていた。傷口は何か異物を埋め込まれ、糸で縫い止めてあった。わけのわからない装置に固定され、様々な魔道具で魔力を流される。体に埋め込まれた何かに、それらは反応する。どれくらい切り刻まれ、いくつの魔道具を埋め込まれたんだろう。俺はそこまで多くの数の数え方を知らなかった。研究施設の建物の外に出ることはできなかったが、部屋の格子窓から雪が降って、草が芽吹くのだけは、ちゃんと数えていた。六つでここに来て、六度季節が巡った。
他にも子どもはたくさんいたはずだが、普段顔を合わせることは、ほとんどなかった。みんな俺と同じように無気力で、誰とも話そうとしない。あれはたぶん、食べ物か飲み物に、常習的に薬が入れられていたんだろうと思う。いつものように地下室の鍵が回り、扉を開けられ連れ出される。手を引かれて上の階にある研究室へ行き、自ら服を脱いでおかしな形をした椅子に座り、ベルトで固定されやすいように、じっとして待つ。
魔力を流されると、このあいだ切られたばかりの、下腹の傷がうずく。いつもより大きめの傷口には糸がついたままで、治りが遅い。今も異物が、下腹の中で動いているような気がした。固定された頭を動かすことはできないから、目だけで確認すると、糸のすきまからじわりと血がにじんでいた。
やめてほしい、と言える資格が子どもにはない。実験中に舌を噛む事故が起きないよう、口には布がかませてある。頭、首、二の腕、手首、膝下、足首。固定された体は、痛みがあったとしても、逃げることなどかなわない。すべての魔道具で魔力を流していく検査を、俺が最後まで確認できたことはない。その前に気を失うからだ。俺の体に埋め込まれた小さな魔道具と、俺に魔力を流す魔道具、どっちの数が多いんだろうか、そんなことを考えて少しでも気を紛らわそうとした。
いつものように実験中に気を失って、起きたら部屋で寝ているはずだった。だがその日は目覚めると、見えたのはぜんぶ空で。俺はたった一人裸で、爆発に巻き込まれたような瓦礫のなかにいた。あちこち傷だらけで痛い。命だけが、かろうじて助かったらしい。
そこは深い山のなかだった。石造りの研究施設は崩れてしまって、元の建物がどんな形だったのかすらわからない。けっこう大きな石なんかも遠くまで飛ばされていて、そのそばには、革の鞄だとか崩れた木製の箱があった。開けてみると鞄には光る石、使い方のわからない魔道具が入っている。木箱のそばには服や布、紐があった。大きすぎる服を、紐で巻いてずり落ちないよう固定した。布を足に巻き、紐で縛った。鞄の中身は重いものを取り出し、置いていくことにする。体中痛かったが、頭だけは妙にすっきりしていた。とにかくここから逃げよう、初めてそう思い、俺はすぐ実行に移した。
山のなか、齢十二の子どもに何ができる? 少なくとも、歩くことができた。食べられそうに見えるものは全部口に入れ、疲れたら眠った。はじめて魔物に襲われたときは、無我夢中だった。死ぬ気で腕を振り回していたら、なぜか攻撃魔法を放ってしまった。とにかく目的地も方角もわからず歩き続けて、魔物に襲われたら攻撃魔法で撃退した。そのうち数をこなし、攻撃魔法だけ何とか習得した。
人に会うのが怖くて、山を下りる気にはならなかった。家に戻されるか、別の研究施設に連れて行かれるか。一人の方がずっと気楽だ。そうしてずっと山のなかを歩き続け、雪が降り死にかけた。食べ物がなかったからだ。手頃な洞窟を見つけ、巣穴にいた動物から奪い取った。巣穴は枯れ葉が敷いてあったから、そこで丸くなって寝た。その頃には、散々いじり回して使い道を理解した、いくつかの魔道具を扱えるようになっていた。少しだけ魔力を流すと暖かくなる魔道具が、洞窟のなかでは本当に助かった。魔力を通せば少しの力で、上下の刃が咬みあい何でも切れる魔道具も、便利だった。
腹をすかせたまま、暖かくなる魔道具を抱き寄せて眠った。ときどき寒さで目を覚ましたら、魔力を流してまた眠る。その年の俺は、冬を雪の下で過ごす動物みたいに、冬眠したんだと思う。眠って起きて魔力を流してを繰り返し、起きたら雪がなくなっていた。洞窟の外に出て、食べられるものはすべて口に入れた。食べ過ぎて吐いた。吐いているところへ、狩りにやって来た人間と会った。
何を言っているのか、ぜんぜんわからなかった。まるで別の国の言葉みたいな。俺も一応話してみたんだが、何しろ何年もまともに話したことなんてなかったから、言葉じゃなかったかもしれない。親切な狩人だった、俺を自分の山小屋へ連れて行き、しばらく面倒をみてくれたのだ。
「モル」というのが、俺の呼び名になった、モグラという意味だ。言葉がわからず、髪は伸び放題、山のなかで体を洗ったことはなく、どんなものでも生で口に入れる俺はモグラだった。俺は生きるのに必死で、狩人が驚くほど早く言葉を話せるようになった。髪を切ってもらい、川で体を洗った。食べ物は火を通すことを覚え、塩という調味料を使う料理を教わった。狩人は俺のことをモルと呼び、狩りにも連れて行って山のことを教えてくれた。魔物を追い払うどころか、魔物ごと消滅させてしまう俺の攻撃魔法は、狩りとは相性が悪かったのだが。
狩りの季節が終わり、狩人が山を下り町へ戻る、と言うのでついていった。町での暮らし方を教わり、宿屋で住み込みの仕事を紹介してもらった。ずいぶん小さいねぇ、と宿屋のおかみは言ったが、俺は十五になると言い張った。本当は十三だったが。昼は食事を出し、夜は居酒屋兼宿屋。安くてうまい飯は大繁盛、人手はいつも足りないから、俺のような子どもでも役にたった。勘定もつけないといけないし、文字も読めなくては仕事にならない。俺はしごく真面目に働いた、文字も読めるようになり、簡単な文章くらいは書けるようになった。狩人が俺を紹介するときにモルと呼んだので、ここでもみんなからモルと呼ばれた。
多少の魔法が使えるなら、魔法使いになれるかもしれない、と都からの新聞を見た狩人が俺に教えに来てくれた。町に家があったが、独り身の狩人は俺の働く宿屋に、よく食事のために来たのだ。
「なんだ、魔法が使えるなら都へお行きよ」と送り出してくれたのは、宿屋のおかみだった。それで俺は都へ向かった、十六の年だ。
都へまっすぐ行くには、俺のいた町は遠すぎた。城壁で覆われたような、大きな町へ入るには金がいる。旅費はすぐに底をつき、町に着くと光る石をひとつ売った。途中は野宿して、少しでも金を使わないようにした。革の鞄は二重底にして、光る石や小さな魔道具を隠した。道中、魔物がいても魔法をぶっ放せば道も壊れてしまうから、人々と一緒に逃げた。なんの取り柄もない俺だが、道の途中で連れ合った人たちと、なんとなく話をしたりする。俺は十八になったが、二十歳で通した。子ども一人で旅をするのは危険で不便だ、早く一人前の大人として、扱われたかった。
旅の連れ合いになった人たちに、害にも益にもならない男、そんな風に言われた。普通が一番、それがうれしかった。名前を聞かれると、モルと答えた。六つまでいた家で名前を呼ばれた気もするが、覚えていない。他に教える名前がなかったから、それはそのまま俺の名前になった。俺はモル、ちょっとだけ魔法が使える、ごく普通の男。都を目指して旅をしている、と言うと、そんなやつは五万といると言われた。五万のなかの一人、悪くない。町から町へ、都を目指して俺は歩き続けた。
都にほど近く、城壁を有する比較的大きな町へ入ったときだった。ここでは都の新聞が、次の日の速便で届く距離なのだ。情報も新しいものが多く、町も活気があった。さして取り柄のない俺は、宿屋で住み込みの仕事を探した。大きな町なら宿屋の需要も多い、仕事はすぐに見つかった。十九だったが、二十一歳になるといつわった。簡単な調理も手伝えるし、帳簿もつける。宿屋での仕事はどこも同じ流れだから、俺にとっては慣れた仕事だった。いたって普通の男が、宿屋兼食堂で給仕するのに無愛想もなんだ、できるだけ客に話しかけ笑顔でいるように心がけていた。
ようやく普通の大人たちにまぎれても、ただの男として認識されるようになって、ほっとしていたのかもしれない。旅では気を抜くことなどなかったから、楽しそうに会話していても、警戒は怠らなかった。荷物を盗まれそうになったり、暴力を振るわれそうになったら、迷わず魔法を放った。死んだらおしまいだからだ。俺みたいな普通の男に、女を見るように欲情する男がいるなんて、思いつきもしなかった。
宿に連泊した客が、やたらと俺にかまった。距離感のない男だ、というのが俺の感想だ。食堂の常連客があいつお前に惚れてるな、などと冷やかすものだから、周りが盛り上がり一層茶化した。惚れるという感情が、そもそも理解できなかった。客だから、話しかけられたら手を止めて応対しなくてはならない。早く出立すればいいのに、面倒くさいなというのが正直なところ。いずれ都へ向かうつもりだから、この町にもそれほど長居するつもりもない。旅の資金がある程度貯まったら、旅立つ予定でいた。
宿屋の仕事にも休憩時間というのがある。それとは別に、仕事を休んでいい日まで、この町の宿屋では決められていた。休日などといわれても、何をして過ごしていいかわからない。最初のころはいつも通り仕事をしていたら、休めと怒られた。外の空気でも吸ってこい、と宿屋を出され、そのうち城壁の外を歩いたりするようになった。休日に宿屋を出ると早めに開き始めた屋台を覗き、適当に食べ物をみつくろい城壁を出た。しばらく進み道を逸れる、そこから雑草の生える場所を歩くと、小さな川が流れる木立があるのだ。人のいない静かな場所で何も考えずぼーっと過ごすのが、俺のお気に入りだった。
いつのように木の下でうたた寝をはじめたら、突然男に襲われた。手を縛られ、見れば宿屋の客だった。縄を準備し、俺のあとをつけてきたらしい。何をするんだと聞いたが、男は恐ろしい顔で、俺の服をむしっただけだった。昔切り刻まれた体は、あちこちに縫合の痕が残っている。当時埋め込まれた小さな魔道具は、体の成長とともに、肉の内側に埋まってしまい、触ってもほとんどわからない。男がやたらと傷を触るから、もしかしてあの国の研究施設を知る人間かと、怖くて動けなくなった。魔道具は高価なものだと、今の俺は理解している。俺の顔なんか知らなくても、埋め込んだ魔道具を目当てに探し当てたのか。この体には何十もの魔道具が埋め込まれている、全部売れば町で家が買えるほどの一財産だ。
撫で回されたあと、そこらじゅう舐められたり股間を揉まれたり、乳房もないのに胸をいじられ、何かおかしいと気づく。男の股間が異様に膨れ濡れている。夜の食堂でよく聞く、男と女の体の付き合い、つまりセックスをする気なのか。俺の耳にした知識では、セックスは寝台でするものだったし、男の相手は女のはずだ。気づいたはいいが、腕は拘束されている。服もむしられてしまったし、揉まれた股間は勃起してるし、俺に馬乗りになった男は、俺のズボンを脱がそうと手を掛けていた。
「セックスする気か」
俺はセックスをしたことがなかったから、興味があった。穴に突っ込むと、ものすごくきゅうっとして、自分でする何倍も気持ちがいいらしい。俺も十九歳、気持ちいいことをしてみたいお年頃だった。ただし、男同士でセックスする穴はどうするのか、検討もつかなかった。
「するよ。もしかしてセックス好きなの?」
俺がおびえるのを止め、興味を持ったのが意外そうな顔だった。
「したことない。穴に入れるときゅうってなって、ちんこが気持ちよくなるんだろ」
ただただ、好奇心だった。怖いことなんて、子どものころにすべて済ませたと思っていた。今の俺は大人で、体も大きくなったし、腕力もついている。
「君を今から犯すから。大丈夫、初めてならやさしくしてあげるからね」
犯すという言葉の意味がわからなかったが、やさしくしてくれて気持ちいいセックスなら、いいかと思った。穴に突っ込む方と、突っ込まれる方があることすら、知らなかった。受け入れる側には本来準備が必要で、大変な負担がかかることも。俺は本当に知識のない大馬鹿野郎だった。
男がズボンを脱がせるのを、俺も脱がせやすいよう腰を上げて手伝った。開いた足の間に、男が座っている。手のひらにぺっと唾をはいた男の手が、俺のちんこを握った。他人の手にちんこを触られるなんて、びっくりしてしまう。ごしごし擦られると、自分の手とは癖も力加減も違う男の手に、目からの刺激もあり、あっけなく射精してしまった。俺の出した精液を、内ももに塗りたくられて、何をするのかと顔を上げて見てしまう。そんなところに塗ったら、あとでガビガビになってしまう。男は閉じた俺の足首を持ち上げ、内ももの隙間ににゅるりと潜りこんできた。
「! 何を?」
勃起した黒っぽいちんこの先が、ぬるぬると股の間から顔を出す。規則正しく内股を擦られる感覚と、赤黒い亀頭がぴょこぴょこ出てくるのが面白くて、思わず笑ってしまう。
「初めてなのに、ずいぶん余裕があるね」
男が俺の足首をぐっと持ち上げ、腰の動きを早めた。
「? ……っう……っ?」
タマとちんこと、尻の穴の間んとこを、男の亀頭がグイグイこすっていく。押しつぶされるみたいに刺激を受けて、俺のちんこの先から液が出てぱたた、と腹を濡らす。
「な、……んこれ、きもちい………」
「ははっ、いい顔だ。もっと気持ちよくしてあげる」
空いてるほうの手に、男がつばを垂らす。その手を尻の穴に運び、唾液で濡れた指でぐるぐる回して押し開かれる。
つ、ぷ。
「んぁぅぅ」
気を抜いていた尻の穴に入り込んできたものが、ぐにぐにとその場で動かされる。ちんことタマと同じ速度で刺激を与えられ、尻の穴の出たり入ったりするものにも、快感を拾う。
「俺、またでそ……」
人が来ないとはいえ、外で全裸の男が快感に震えるのを見て、性的に興奮するには無理がなかろうか。それでも俺を犯すといった男は、ずっと勃起したままだった。
「ちょっと待ってな」
動きを止めた男が、ぺっと唾を落とした。ぺっ、ぺっ。何度か垂れた唾は、俺の内股を濡らし、尻を通って背中へ伝った。
「ほんとは脂があればいいんだけど。君とひとつになるのに、痛い重いさせたくないしね」
俺の膝を開かせ、自分の肩に掛けさせた男の指が、俺の尻を押し開く。唾を何度も足し、指を奥まで入れられ、ちんこの根元をぎゅっと掴まれた俺はやるせなかった。
「もうっ、だしたい、ちんこ放してくれよ、だしたい! もう気持ちいいの無理、やめたい」
「はははっ、かわいい。二十歳過ぎてるって聞いたけど、やっぱりもっと幼く見えるな」
でも、止めないから。男の低い声に、俺は縛られたままの腕で、隠すように閉じていた目を開く。ぎらぎらした目は、獲物を見つけた魔物と同じだ、俺はこの男に殺されると思った。
「普通の若い男が好きなんだ、どうしようもなくね。町を歩いてる君を見つけてさ、あとをつけたよ」
ズ、ク……ン、尻の穴を無理矢理広げてちんこをぶっ挿された。
「すぐ堕とせるかと思ってたのに、案外手間取ったなあ」
ググ……、出るはずの穴に入ってきたちんこが、ゴリュ、と中を通っていく。
「もうあんまり時間もないしさ、無理矢理襲って犯そうと思って、ずっと狙ってたんだ」
「はっ、ぐぅっ……や、めっ………」
奥までくるのを出そうと、腹に力をこめる。
「そう、じょうず。……そう、いいよ」
「あっ、やっ、なん、で」
出すときみたいに力を込めれば、ちんこはさらに奥にきていた。
「ほおら、ぜんぶはいった。はぁ、あったかい」
男が俺の腹を手のひらで押した。たしかにそこに異物が入っているのが、俺にもわかった。
ズ、ルルル……。男がゆっくりと抜いていった。えもいわれぬ快感が俺を襲った。
「っ! ひゃぁぁあぁっっ」
「才能あるみたいだね、感じやすいのかな」
グ、ググッ……。にゅくっ、ずりゅっ……。抜いたものが、再びはいってくる。
「んぁぁあぁ……っんっ! やぁ、だっ……って………」
「ああ、少し馴染んできた。君の雌穴は処女なのに名器だ。なんていやらしいんだろう」
ズニュッ……、にゅ、く、にゅく、にゅく……ずりゅりゅっ……。抜き差しが早まった。奥だけを攻められたり、全体を擦られたり。
「ふぁっ、あっ、ぁっ……」
うんこを出す穴なのに、ちんこが出ていくとき、とてつもなく気持ちがいい。うんこしてて、こんなに気持ちよかったことなんかない、おかしい。穴から出たちんこが入ってくるとき、ゴリュって押されるたび、まだ根元を締められたままの俺のちんこからも、何か出ていく。
好きに揺さぶられる俺は、鼻水をたらし、涙を流していた。
「ねえっ、ね、おれ、おかしくなりそ……ださせて、も、ださせておねがいっ」
「そうだね、……っもう、そろ、そろ、かなっ……」
男の腰がガンガン動いて、腰骨がガツガツ尻に当たっていた。男の汗をかいたふたつのタマが、ぱちゅぱちゅと尻を叩くのすら、気持ちがいい。
「あっ、でる、でるっはなしてっ、でるっ」
「……ん……っっく!」
突然緩んだちんこが震え、溜まっていた精液がびゅるるっと腹に出た。同時に男が抜いたちんこを自分でしごいて、俺の腹へ放ったから、俺の薄い腹の上は精液まみれになった。
「す、すご……」
今まで刺激を与えられていた尻の穴が、すうすうした。開いたままの足の間に、縛られた手を持っていく。俺の尻の穴、もう緩んで閉じないんじゃないだろうか。指を当てると、ちゅくっ、と穴が指に吸い付いてきた。
「うわっ」
そのまま第一関節をのまれそうになって、びっくりして指を引く。
「雌穴が収縮してる、いい眺めだ……まだ欲しがって、初めてなのにこんなに淫乱だなんて」
何を言ってるのか理解できないが、たった今俺を犯した男が、汗をかいて爽やかに笑っている。茶髪が額に張りついてるのを、手でかきあげる。あ、その指俺の尻の穴に入ったのに……。
「ねえ、君。名前は?」
「モル」
男がその手を俺の腹に伸ばす。二人分の精液を、俺の腹で混ぜて肌に塗り込んでいる。指が腹をなぞるのすら、ぞくりとする。汗が引いたら、今はぬるぬるしてる腹もガビガビになるだろう。涙と鼻水と汗でそこかしこがぐちゃぐちゃしている。よし、そこの小川で洗ってから帰ろう。俺は勝手に終わりだと思っていた。初めてのセックスは気持ちよかったし、犯してくれた礼を言わなきゃだ。そうと決まったら手をほどいてもらおう、俺は男に向けて縛られた手を上げた。
「なあ、これほどいてく、」
「モル、もう一回、気持ちよくなろうか」
「は? いやもういいよ」
俺はまだ寝っ転がって足を開いたまんまで、男はその間にいた。男の太くはないが長くて柔らかく反ったちんこが、また勃起していた。
「セックスは気持ちよかった、けど俺はもう帰りたい」
そんなことを言ったと思う。後ずさって逃げようとしたけど、足首を掴まれて無理だった。男を蹴ろうと暴れたら、ごろんとひっくり返されて、腰を持ち上げられて、そのままズッと挿入された。ガンガン腰を打ち付けられる。さっきまでの気遣いなんてない、ただ腰を動かして、ちんこが腹の奥の壁に、えぐるみたいに当たって痛い。強引に揺すられてるから、顔が地面にすれるのを、肘でなんとかこらえる。
「かわいい、かわいい。モル、君の初めてはぜんぶもらおう」
ナニいってんだこいつ、狂ってる。俺の喉からは、押しつぶされるたびに肺から出ていく音が漏れる。男が獣みたいに唸って尻にパァンと当たった体が、ブルブル震えた。
ズ、ズ……。異物が出ていく。つー、ぱたたっ。水音に膝の間から見れば、俺の尻から地面に水が漏れていた。違う、精液だ。尻の穴で射精しやがった。
「モル、もう一度、今度は正面から愛しあおう」
愛なんてない。力の入らない体を、ぐるりと回転され、簡単に持ち上げられてしまう。座った男の上に跨がされ、勃起したままのちんこを、両指で広げた尻の穴にあてがわれた。犯すって意味がようやくわかった。俺はやっぱり馬鹿だった。今さら自分を呪っても遅い。
「 ひ、ぃぃ、っ ぐあぁっ―――」
後ろから挿されたときより、もっと奥まで届いた。体のなかのなんか知らないけど袋かなんかが、破けそうな傷みがある。押さえられた腰を無理矢理ねじって、痛みからそらせようとひねる。自分で動いて、ゴリュってとこに当たって「ひぃんっ」て声が出る。思わず反った背中に、男のちんこの亀んとこが動いて、内側の袋の痛いとこを抜けてその奥にきた。
「ぐむぅ、うぅっっっ!」
「ぁ、やあ、や、ぬいてぬいてぬいてっ! こわい」
「ふ、ん……っっっ!」
「 ! ! !」
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