嘘はいっていない

コーヤダーイ

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 燃えるようなムスタからの精気にてられたサキは、酒の酔いも相まって一気に夢魔としての能力が開花した。目の前の精気は自分ととても相性がいい、こんなにご馳走が溢れているのだから全部もらっていいだろう。妖艶に微笑んだサキは見下ろす男の顎に手を掛けると自分の唇をゆっくりと近づけていった。

 絡みついた舌の動きにムスタは違和感を感じる、シャツの裾から手が入り込み熱い手の平で官能を呼び覚ますようになぞられている。吸いつく唇を離し、ムスタは己の身体の下で壮絶な色気を放っているものを見た。

「お前は誰だ」

 尋ねても答えず妖艶に微笑んだまま、その手は腹をなぞって下へと移動する。たかぶりを包み込まれてぎょっとして身体を離す。これは不味い、これはサキではない。サキから離れどすんと尻餅をついたムスタへとサキが覆いかぶさり、ゆったりとしたパンツを寛がせて中の昂りを口に咥えた。

「……っっつ!!サキ、止せっ!」

 無論サキが止まろうはずもなく、じゅくじゅくとムスタの昂りを味わうばかりである。北の氷城では常に精気を吸われていたからそんな気にすらならなかったため、久しぶりの与えられる快感にムスタは抗う術を失う。自らを咥えているのは夢にまで見た愛するものなのである、巧みに与えられるうねるような快感にムスタは我を忘れて果てた。

 強い快感に息を荒くするムスタの腰元では、口に出された白濁を飲み干したサキがまだ唇を離してはいなかった。残りまで全て吸い出そうというように強く吸われて、ムスタは再び昂りに芯を持つ。

 昂りに手を這わせたまま一度口を離したサキの乱れた黒髪をかき上げその黒瞳を見たムスタは、あぁやはりこれはサキではないのだと思う。未だ硬い己の昂りからその手を離させて、優しくサキの口元を舐めて拭う。

「愛している、サキ。戻ってこい」

 服を脱ぎ捨てそのままぎゅうと抱き締めればサキは腕も足も絡めて、腰を擦り付けてくる。サキもこのままでは治まらぬし辛かろうと仰向けに寝かせてやり、夜着の下をずらしてつるりとした肌のその昂りをムスタが口に含めば嬌声が漏れた。
 そういえば雄のものを咥えるのは初めてである、と気づいてムスタはふっと自嘲した。するのは初めてでも長らく奉仕を受けてきた身である、どこをどうすれば良いのかは知っている。
 ムスタは淡い色に染まったサキの昂りが自らの口の中で果てるまで愛し続けた。

 一度達してサキにようやく正気が戻った。荒い息をついてひどい快感に震えながら見れば、ムスタがサキのものを咥えたままごくりと喉を鳴らすところであった。じゅじゅっと音を立てて残りも吸われ、んっと声が漏れる。

「……っあっ、ムスタししょー、なに、を、」
「ようやく戻ったか、サキ……」
「ぁん、っそこでしゃべら、ないでぇっ……」

 口元を舌で舐め、手の甲で拭いながらムスタが顔を上げた。サキのものは一旦治まったのか淡い色に染まったままくたりと腹に垂れている。上半身を起こして座りなおせば、サキの身体はシャツを羽織っているため腿まで隠れた。

「ムスタ師匠、あの、何があったんでしょうか……僕……」

 サキは自分の口の中が粘つきおかしな味がするのに気づき、眉根を寄せた。知らない味だがこの独特の匂いは、おそらく。全裸のムスタを見れば浅黒い肌の屹立は未だ腹につき先からは透明の液を流している。

(僕、お酒に酔って暴走しちゃったのか)

「水を飲むか?」

 瓶を渡されたので瓶の口からそのまま水を飲む、飲みきれなかった水が首筋を伝って羽織ったシャツを濡らした。シャツの袖で口を拭いて瓶をムスタへと渡すと、ムスタも瓶を呷るように傾けた。瓶の口から零れた水滴がムスタの肌を濡らす。

 熱を籠らせたままの身体を隠そうともせず、ムスタがサキだけを見ていた。金瞳にじっと見据えられてサキは視線を逸らすことも動くこともできなくなる。

「4年待った、と先ほどサキが言っての」
「はい……」
「わしも同じだけ待った」

 ぐっとサキの喉が鳴る。

「サキはかつて初めてはわしがいいと言っておったが、」
「はい、僕初めてはムスタ師匠がいいです」

 ムスタの金瞳が揺れて、サキの頬を指先でそっと撫でた。

「今宵お前をもらってもいいかの」
「……はいっ」

 サキはムスタの胸へと飛び込んだ。それを難なく受け止めてムスタがサキの髪を撫でる。

「ひとつ確認したいのだが……」
「はい」
「クラースはいいのか?」
「?……クラース」
「沐浴前にクラースの匂いを付けておったろう、そういう仲ではないのか」

 ムスタの腕の中でサキが悲鳴を上げて暴れた、ぎゃーとかあれは違うんですとしばらく一人で騒ぎ、ようやく落ち着いたサキが真っ赤な顔で詳細を語った。なるほど獣人にはない習慣だが、個体の弱い人間には必要な措置なのかもしれない。

(聞いて安堵はしたが、面白くはないの)

 些細な初めてもサキのことならば全部自分が最初でありたいと独占欲が湧いてくる。

「それで、サキはどこまでいっておる」
「?どこまで?」
「クラースと昨夜はどこまでいった」
「ど、どこまでって……っんんぁっ!」

 つつ、と指で背中を下からなぞればサキが背中を反らせて声を上げた。

「この足の間に挟んでやつをイかせてやったか」
「ぁあっ……そんなこと、してな……」

 腿の間に手を入れて脚の付け根までを揉み込むように撫でてやる。

「ではこの口で含んでやつのものを飲んだか」
「んんっっっ……ぅっ……」

 顎を押さえて首筋から頬まで舐め上げると、唇に噛み付く。舌を絡めて唾液を流してやればサキの喉が従順にこくりと鳴る。

「ここはどうだ、どのようにいじられた」
「……ひゃぁぅっ……や、してな…」

 シャツのボタンを外し乳首を弾いてつねれば、いい声で啼いた。

「く、クラースと僕のを一緒に擦っただけ、だからあっ……」
「ほぅ、こんな風にしたのかの」

 向き合って膝に乗せたサキと己の屹立を合わせて持つと、先端まで撫でるようにゆるりとしごいた。

「ぁぁあんんっ、やめっ、あぁっ、ム、スタししょおー……っ」

 何をしても初めての様子で、サキを煽るつもりがすべて己に返ってくる。身をよじらせて感じまくるサキが、もう愛しくてたまらない。早々に果てたサキの白濁を指に掬うと、仰向けに寝かせて開いた膝の間へとムスタが陣取った。
 己の腿の上へとサキの足を乗せ、尻を浮かせておく。後孔へと指を送り、やわやわと解していった。サキはされるがまま、時折ぶるりと震えながらムスタの指示通り身体の力を抜くに務めた。

(相変わらず狭いのう)

 成長したとはいえサキの後孔は狭く未だ指が一本しか入ってはいない。とはいえ指の付け根まで咥えたのだから成長はしているのか。
 このままでは埒があかぬと、ムスタは指を一本入れたままサキの腰を持ち上げそこへと顔を落とした。

「あ、やっ、なに、を……ああああっっやぁっ、汚いからあ、やめえ……っ」

 体勢が変わったことに目を開けたサキが自らの穴へと舌を這わすムスタに、身悶える。指よりも無遠慮に解されているのだが、痛みはまったくない。そのうちに穴を広げるようにもう一本の指が加わった。尻を持たれつつ指で穴を広げられ、間に舌で舐められている。一体どうなっているのかと再び目を開けたサキは恥ずかしさに見なければよかったと、ぎゅっと強く目を閉じた。

 持ち上げられた尻へとムスタの両手人差し指が入っていた、足の付け根にムスタの顔がありその舌が穴へと入っているのまでがしっかりと見えてしまった。指はそのままに舌だけを抜き差しするじゅぼじゅぼという音とサキの荒い息だけが灯りに照らされたテント内に響く。

「あぁっ、明るいの、やっ、ムスタししょー、やー……」
「どうした」

 舌を抜き差ししながら喋るから余計に恥ずかしさが増す。

「んんっ、お願い、明るいっ、の、恥ずかしい……」

 乞われて指をするりと抜いたムスタが灯りを眩しくない程度まで落とす、入ったままの人差し指に中指を添えてゆっくりと入れ直すとこれでいいかと聞いてやる。

「……ん、ありが、とございます」

 律儀に礼を言うから益々愛しくて、ムスタは二本の指を真っ直ぐにそっと抜き差し始めた。ほどなく二本の指の腹がサキのいいところを探り当て、よがるサキを宥めながらもう一本指を足した。
 馴染むまでそのままにじっとしていればサキの内部がぐねり、とうねってぐっと絞められた指が濡れた。サキの内部より後孔からは出るはずのない潤滑液がにじみ出てきたのである。

 指を引いて押せば、潤滑液が後孔の外へと零れる。ゆっくり同じ動作を繰り返せばやがてサキの腰が緩やかに揺れ始めた。ムスタの指の動きに合わせてサキの腰が揺れ、唇からは気持ちよいのであろう声がふっふっと漏れ出していた。

「ムスタししょ、僕変になっちゃう……」
「気持ち良くはないか、サキ」
「ん、気持ちい……すごく気持ちよく、て、こわい」
「大丈夫、サキを気持ち良くしているのはわしじゃ」
「あっ……ムスタししょ……ぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

 指を抜いて揺れるサキの腰に屹立をあてがい、ゆっくりと己の腰を差し入れた。真っ直ぐにゆっくりと進めばすっぽりと奥まで治まった。

「サキの奥が濡れておるから、痛みはないかの」

 答えの代わりにサキの内部が絞めてうねる。

「わしも気持ちが良い、こんな気分は久方ぶりじゃ」
「ん、すき、ムスタししょー、大好きぃ」
「愛している、サキ、わしのものじゃ」

 身体を屈めて鼻を擦り合わせ、ムスタはごくゆったりと腰を動かしだした。中を擦られてサキも快感を拾った。サキの身体へとなるべく負担を掛けぬようにと、緩やかに腰を動かすに留めたムスタに焦らされ、物足りないサキが自分で腰を擦り付けて揺らした。

 ムスタは一度もがっつかず、サキの欲しがるままに快楽を与えさらに上の高みへと導いてやった。サキは途切れぬ声を枯らして、ちかちかと白い視界に星が瞬くのを確かに見た。



 声の枯れたサキが気を失ってしまうと、ムスタは萎えぬ屹立をずっと抜いて自らしごいた。乱れたあとを色濃く残して力を抜いたサキに目を遣るだけで、簡単にそれは果てた。
 大きく長く息を吐いてムスタが目を閉じれば、幻影が浮かぶ。

 それは叶えられるはずのない長年の夢であった。
 ムスタにそっくりな獣耳と尻尾、だが肌の白い小さな男の子が走っている。
 走り寄った先の華奢な人影が男の子を抱き留めた。

 もう一度大きく息を吐いて、目を閉じたままムスタは静かに泣いた。いつになるかは知らないが、占星が外れることがないのはわかっている。心を乱せばサキが起きてしまう、乱れる心を必死に抑えてムスタはひたすらに涙を流した。

(サキを清めてやらねばの)

 しばらくしてムスタは動き出した。濡らした布巾でサキの身体を綺麗に清め服を着せてやる。愛しくてまた力一杯抱き締めたいのを我慢して、そっと寝かせて上掛けを掛ける。ん、と身じろぎするサキの横にムスタも身を横たえると共に眠った。
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