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第一章 逃走と合流
第30話 山賊のボス(1)
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「くそっ、俺一人じゃ無理だな」
俺は入るタイミングを逃した。ラフランがやられるようすを、ただただ見ているしかなかった不甲斐ない俺。
賊たちは倒れているラフランを捕まえるつもりで、ゆっくりと彼女にせまっていく。ラフランも彼女たちのように……そう思うと絶対に許せない。いつの間にか俺は強く唇を噛みしめていた。口の中に血が……鉄の味が充満する。
「行くしかない」
俺は自然とそう言って、天窓に手をかけた。
「動くな!!」
そう、まさに俺が飛び込もうとしたその時、扉が勢いよく開き、その勢いのまま見慣れた顔が次々と入ってくる。エリーを先頭にモモとライムが飛び込む、そして長身のアンズと、背の低いベリもそれに続いていった。
ベリは動きやすくガウチョパンツを、エリーは可愛らしいリボンが縫いつけてあるワンピースを履いている。他はみんな、麻の支給服。
そして最後に、銀髪で大人しい雰囲気のカリンが周囲を警戒しながら入ってくると、アンズの隣へと並んだ。
「手をあげろ! お前た……ラ、ラフランと……えっ?! た、隊長!!」
エリーは向こう向きに床に倒れている緑髪のエルフ、それを俺と見間違えているようだった。それを見て驚くと、目を丸くするエリー。そして、顔を歪める仲間たち。
ラフランが近くに倒れているのも紛らわしい。
「こ、殺す……」
エリーは怒りを込めて静かに言い放つ。すると皆が険しい顔になり、山賊たちを睨みつけた。
「よお、殺すってよお」
突然現れたエリー達に唖然としていた山賊たち。だが、相手が若い女エルフだと見るや、ニタニタと卑しい笑いをうかべると、余裕な態度で挑発する。
それにエリーが不快そうに眉をひそめ、一瞬で膝を折り曲げ右手を床につけた。ベリはその紫色の縦ロールを揺らしショートソードを、ライムはナイフを抜くと、賊の前におどり出でた。
「どうしよう。行くべきか……いや、何か考えがあるはずだ。考えなしに突入するエリーじゃない!」
俺は痛くなるほどぎゅっと拳を握りしめながら、彼女たちの邪魔をしないように見届けることにした。我慢だ。震える手を抑える。
武器を抜いた相手に、賊たちも手持ちの武器を抜き構える。そして、一番前の立つ男が言った。
「あまり傷つけるな。お楽しみが減るからな」
へらへらと笑う山賊たち。だが、アンズとカリンはそんな賊たちに気がつかれないように魔力を練っていた。
やはり、エリーには何か考えがある。俺は残りの賊が来た時にいち早く気がつけるよう、ここに残っている事にした。
「大地よ、我を助け給え! 森の手錠」
呪文とともに、エリーの床に置いた手から放たれた無数の小さな光玉が放たれ、床板の上を滑るように賊たちの足元に飛んでいく。そして、そこから蔦が瞬時に伸びてくると彼らを縛り上げた。
「モモ!」
「はい!」
エリーの声にモモは前へ出ると、ベリ、ライムと共に拘束された賊たちの首元を、次々に剣やナイフで刺していく。あいつら、容赦ないな……。
だが、自分が拘束されて仲間が倒されていくにもかかわらず、ボスはその冷たく鋭い目を光らせると、余裕の笑みを浮かべて言った。
「ふっ、それで勝ったつもりか」
そして「うおおおお!」と掛け声をあげながら、その幾重にも巻き付いている蔦を太い腕で引きちぎってみせる。
「アンズ! カリン!」
「はい!」
その掛け声をともに二人は両手を前に出すと、練ってあった魔法火弾をボスへと放つ。その魔法はボスへと真っすぐに飛んでいくと、その大きな体へと直撃したのだった。
俺は入るタイミングを逃した。ラフランがやられるようすを、ただただ見ているしかなかった不甲斐ない俺。
賊たちは倒れているラフランを捕まえるつもりで、ゆっくりと彼女にせまっていく。ラフランも彼女たちのように……そう思うと絶対に許せない。いつの間にか俺は強く唇を噛みしめていた。口の中に血が……鉄の味が充満する。
「行くしかない」
俺は自然とそう言って、天窓に手をかけた。
「動くな!!」
そう、まさに俺が飛び込もうとしたその時、扉が勢いよく開き、その勢いのまま見慣れた顔が次々と入ってくる。エリーを先頭にモモとライムが飛び込む、そして長身のアンズと、背の低いベリもそれに続いていった。
ベリは動きやすくガウチョパンツを、エリーは可愛らしいリボンが縫いつけてあるワンピースを履いている。他はみんな、麻の支給服。
そして最後に、銀髪で大人しい雰囲気のカリンが周囲を警戒しながら入ってくると、アンズの隣へと並んだ。
「手をあげろ! お前た……ラ、ラフランと……えっ?! た、隊長!!」
エリーは向こう向きに床に倒れている緑髪のエルフ、それを俺と見間違えているようだった。それを見て驚くと、目を丸くするエリー。そして、顔を歪める仲間たち。
ラフランが近くに倒れているのも紛らわしい。
「こ、殺す……」
エリーは怒りを込めて静かに言い放つ。すると皆が険しい顔になり、山賊たちを睨みつけた。
「よお、殺すってよお」
突然現れたエリー達に唖然としていた山賊たち。だが、相手が若い女エルフだと見るや、ニタニタと卑しい笑いをうかべると、余裕な態度で挑発する。
それにエリーが不快そうに眉をひそめ、一瞬で膝を折り曲げ右手を床につけた。ベリはその紫色の縦ロールを揺らしショートソードを、ライムはナイフを抜くと、賊の前におどり出でた。
「どうしよう。行くべきか……いや、何か考えがあるはずだ。考えなしに突入するエリーじゃない!」
俺は痛くなるほどぎゅっと拳を握りしめながら、彼女たちの邪魔をしないように見届けることにした。我慢だ。震える手を抑える。
武器を抜いた相手に、賊たちも手持ちの武器を抜き構える。そして、一番前の立つ男が言った。
「あまり傷つけるな。お楽しみが減るからな」
へらへらと笑う山賊たち。だが、アンズとカリンはそんな賊たちに気がつかれないように魔力を練っていた。
やはり、エリーには何か考えがある。俺は残りの賊が来た時にいち早く気がつけるよう、ここに残っている事にした。
「大地よ、我を助け給え! 森の手錠」
呪文とともに、エリーの床に置いた手から放たれた無数の小さな光玉が放たれ、床板の上を滑るように賊たちの足元に飛んでいく。そして、そこから蔦が瞬時に伸びてくると彼らを縛り上げた。
「モモ!」
「はい!」
エリーの声にモモは前へ出ると、ベリ、ライムと共に拘束された賊たちの首元を、次々に剣やナイフで刺していく。あいつら、容赦ないな……。
だが、自分が拘束されて仲間が倒されていくにもかかわらず、ボスはその冷たく鋭い目を光らせると、余裕の笑みを浮かべて言った。
「ふっ、それで勝ったつもりか」
そして「うおおおお!」と掛け声をあげながら、その幾重にも巻き付いている蔦を太い腕で引きちぎってみせる。
「アンズ! カリン!」
「はい!」
その掛け声をともに二人は両手を前に出すと、練ってあった魔法火弾をボスへと放つ。その魔法はボスへと真っすぐに飛んでいくと、その大きな体へと直撃したのだった。
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