Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
1,049 / 1,055
- 28章 -

-憎悪と情愛-

しおりを挟む


素直に感謝する事が出来ない自分に呆れて居るのだろうか?

兄にそういう目で見られるのは辛いけれど、それでも、母へ素直に感謝するのは難しそうで、母のどこに感謝出来るのかも正直分からない…


「確かに祐子さんの選択は、せいが望んでた事とは違う物だったから、感謝出来ないって気持ちは分かるよ。腹が立ったり、憎く思ったりもするかもしれないね。せいの為にって言っておきながら、せいを縛り付けるなんて、本末転倒だって、思うかもしれない」

「……母さんにも色々思うところがあったのは分かったけど、でも結局、自分の事しか考えられてなかったんだよ。あの人」

「………」


弟から発せられた、弟らしからぬ、他人行儀な母への呼び方に、思わず言葉が飲み込まれる。

誰に対しても優しく接し、欠点を否定する事もなく、良い所を見つけ肯定していく。そんな弟から発せられたその言葉には、初めて感じる程の憎しみや怒りが含まれている様に感じた。

誰だって、誰かにそういった感情を持つことはある。当たり前の事だ。でも、出来る限り弟にはそういう感情を持って欲しくない。

それが、唯一無二の自分の母親になら、尚更。
そんな悲しいことにはならないで欲しい。
本当の家族が居てくれるというのは、当たり前の事ではないのだから。


せいが、祐子さんの選択が間違ってるって思うのはしょうがないと思う。望んでない祐子さんの選択に感謝出来なくても、それもしょうがないとは思う。でも、 裕子さんの“ 子供の為に ” っていう思いには、感謝出来るようになれれば良いなって思うよ」

「…どうして?」

「その方が、せいが楽になるから」

「楽にって…よく、分からないよ」


誰かを憎んだり、誰かに怒りを覚えたり、誰かを否定したり、そういったマイナスの感情を抱え続けていくのは、精神を削り、すり減らしていくものだ。疲弊し、様々なものをどんどんと後ろ向きにしか取れなくなっていってしまう。

歯止めが効かなくなってしまう時だってある。

そんな辛く悲しい結末になってしまう可能性は、出来る限り潰しておきたい。どんな助言をしたところで、受け取り方も、自分の物に出来るかも本人次第であり、そう出来ない事もあり得る。

でも、沢山ある考え方の1つとして吸収し、視野を広げるだけでも、いつか役立つ時が来るかもしれないし、そうなって欲しいと思う。

それに、元々人を悪く言うことのない弟だ。
誰かに対しマイナスに感じてしまう自分自身にも、もしかしたら苦しんでしまうかもしれない。

説教くさくなって恐縮させてしまわないように、でも出来る限り伝わるようにと言葉を探していく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...