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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「……ごめん。寝転び湯行ってくる」
「えぇっ!?ちょっ、ちょっと待ってよ聖っ!俺も行くっ!!」
決して温泉が悪いわけではない。タイミングが悪かっただけで、しょうがない事なのも分かっている。しかし、期待が外れ気分が落ち込むのは致し方ないだろう。
仕事の疲労に拍車をかけた無色透明な湯船に秒でさよならした月影は、少し横になろうと仕切りの向こう側にある寝転び湯へと向う。
遅れて追い付いて来た弟と並んで横になり、体温と近しい温度のお湯に体を預けると、大きく息を吸い込み、その全てを吐き出すと同時に、全身の力を抜く。
瞼を開けているのも億劫な中、うっすら開けた目に写るのは、木の板で作られたなんの変哲もない、至ってオーソドックスな天井だ。
周辺を囲む衝立も同じく質素なもので、だからこそ、気持ちに波風立つ事なく、安らぎが訪れる。
こう言ったリラクゼーション施設しかり、アミューズメント施設しかり、設置されている物のデザインや配置には、その目的や立地にあったある程度のセオリーがある。
分かりやすい所で言えば、アミューズメント施設では、まず最初に来園者の心を掴む為、入口をきらびやかに演出したり、停滞せず自然と誘導されるよう、人気アトラクションを奥に配置したりする。
敢えて奥に配置することで、その道中にある人気のないアトラクションにも、必然的に目を向けやすくなる。
人気アトラクションを奥側にバラけさせ配置するのは、混雑の緩和と、滞在時間を増やす事で、1人あたりの利用単価が上がりやすくなるというメリットも生まれる。
何かを作る際は、利用者の心を読み、利用者の行動を予測し、利益を上げる為や、勿論利益を上げられるよう、顧客の満足度をどれだけ上げる事が出来るのか、様々な思考がされ作られている。
いわば利用者との心理戦が繰り広げられているのだ。
それを考慮した最初のセオリーを作った人は凄い。でもー
時にはそれを変えてでも、更に上を目指す自分達はもっと凄い。というか、楽しい。
自画自賛と言われようが、誇りをもってやっているからこそ言いたいことである。
配置や素材、デザイン1つとっても、全ては心理戦。人の心を動かす仕事だ。やりがいしかない。
なんてー
『こんな所でこんなこと考えてるのって、作った人に失礼かも?』
リラックスさせる為にと、色々思考し作られているこの場所で、仕事の事を考えているのは、この場を作った人々の思惑とは離れてしまって居るかもしれない。
でも1つ言えることは…
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