Pop Step ☆毎日投稿中☆

慰弦

文字の大きさ
上 下
995 / 1,055
- 27章 -

- 謹賀新年-

しおりを挟む


彼の手がどんなに自分に触れようとも
自分は彼に触れてはならないのだ

辛いのも、我慢に身を焦がすのも、決意の上で望んだ結果であり、誰に何度問いかけられたとしても、後悔なんて1ミリもないと胸を張って言える。

だとしても好きという感情は直ぐに消えるものではなく、恋の傷は新たな恋がというけれど、安積以上に好きになれる人など、何処を探しても見つかる気はしない。

班乃は溢れそうになる溜め息を飲み込み横たえていた体を起こすと、組んだ両手を大きく伸ばし、深呼吸で気持ちを落ち着かせた。


「良く分かりましたね。正解です。お直しじゃなくてリメイクと言うべきでしたね」

「……どうして?…あんなに大事にしてたのに」

「大事だからですよ」


体に伝わるソファーの沈みが、安積が近距離に腰を下ろしたのだと伝えてくる。

お互い話題に出さないと、もう気にしないと、今まで通りにとすると言ったとしても、あまりに無防備すぎやしないだろうか?

『…こんな時こそ、神…神にならないと…人間くささなんてない、慈愛と慈悲の神に…』


「大事だからって、どういうこと?」

「あっ、と…それは、ですね」


班乃の葛藤などまるで分かっていない様な、純粋な心配が垣間見得る声色で問いかけられ、一気に現実へと引き戻される。

葛藤に苛まれていた頭を強制的に切り替えた班乃は、心配は無用だと伝える為、語弊のないよう慎重に言葉を探していく。


「睦月や貴方のおかげですよ」

「俺達のおかげ??」


意味がわからないと口をへの字に引き結び、首を傾げる姿がとても微笑ましい。

自分の行動が、自分の言葉が、沢山の誰かの心を救っている。安積自身にその自覚が全くないのだ。

辛い時も悲しい時も、気がつけばいつでも側にいて、迷った時には力強く引っ張り上げてくれた。厳しくも暖かな温もりを、いつだって全力で向けてくれた。迷走し傷つけてしまっても、大きな優しさで包み込み許してくれた。

ありのままを受け止め、好きだと言ってくれた。

『こんなにされて、好きにならないわけないですよね』

散々好き勝手に優しくして
好きにさせておいてー
それでも
安積からの好意の意味が変わる事はない。

憎まれ口も浮かんでくるけれど、それでもその “ 勝手 ” を嬉しいと、そんな彼が好きだと感じてしまう自分は、もっと勝手なのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

モブ男子ですが、生徒会長の一軍イケメンに捕まったもんで

天災
BL
 モブ男子なのに…

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...