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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む『嘘は言ってない、嘘は…』
実はこの越前煎、昨日から泊まりに来ていた市ノ瀬と共に作ったものだった。別に隠す必要もなかったのかも知れないが、班乃の手前言うのは少し気が引けて、適当に誤魔化した安積は、黙々と煮物を咀嚼する鈴橋を見つめた。
「…もしかしてあんま美味しくなかった?」
「いや。素朴で優しい味付けだと思っただけだ。切り方はー…まぁ、雑だけど、濃すぎないし、うまいよ」
「良かったっww」
そりゃそうだと込み上げる笑いを押し込めた安積の横では、市ノ瀬がなんとも悔しそうな顔で煮物へと視線を落としている。
実をいうと、共に作ったと言っても安積は横から教えるのみで、食材を切ったのも味付けをしたのも、料理などほぼした事ない市ノ瀬であり、こうなってしまうのも致し方ない事だった。
一緒に料理をするのはとても楽しかったし、昨日の時点で、〝切り方雑っ!!〟〝食えりゃ良いだろ食えりゃ〟という会話もしっかりと交わされていた。もちろん〝それはそうwW〟とフォローはしていたが…
こうも連続で指摘されてしまうと、やはり悔しい気持ちはあるのだろう。
「でもまぁ、多少雑でも美味しければなんの問題もないよねぇ。……本当だぁ、うまぁ。染みるわぁー…」
「ありがとっ!!俺も美味しいと思うっ!!一晩たって味も染み込んでるし、めちゃくちゃ良い感じだよねっ!」
「自画自賛ww」
植野や鈴橋の称賛に加え、安積からもそう言われたら市ノ瀬とて嬉しくないわけがない。漸く市ノ瀬の顔にも微かな綻びが浮かんだ。
のを、班乃が見逃すはずはなかった。
「良かったですね、睦月」
「なんで俺だよ…」
「僕が分からないとでも?美味しいですよ。とても」
「…そりゃどうも」
安積の気づかいはあったものの、安積と共に料理をする機会が多い班乃からすれば、安積が作ったのではないと直ぐに気がつく出来栄えであり、だとすると、様々な可能性を吟味したとしても、これを作ったのは1人しか考えられない。
密かにそんな会話が交わされつつ、誰も見ていないバラエティー番組をBGMに、限界近い空腹を満たすため急くように一同の箸は進んでいく。
沢山歩き回った後、暖かい部屋で腰を据えお腹が満たされたとなるとー
「…眠くなってきたな」
もちろん次に襲ってくるのは強烈な眠気だった。
「まぁ、そうなるよねぇーw」
「…悪い、少し横になっても良いか?」
「勿論っ! まだ時間も早いし、少し仮眠して行ってよ! あっ、そうだっ!ちょっと待ってて!」
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