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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟むなぜ安積に対しそんな感情を抱いてしまったのかは…
「なんでだろうな…」
「なにが?」
「子供の期待に応えられなかった時みたいな、罪悪感というか…なんか切ない気持ちになるんだよな…」
「それせーちゃんの事っ!?でもなんかすっごく分かるわ、その謎の気持ちっw」
「…流石に本人には言えないけど」
「「………………ふっ」」
植野と鈴橋はどちらともなく息を吹き出し、暫し小さく笑いあうと歩き出した。最後の最後まで皆の願いを叶える為に。
そしてたどり着いたその場所で、この場所が初見の3人は、小さな水飛沫を肌に感じつつ、声もあげずにその景色をただただ見上げていた。
声を上げなかったのではなく、あげられなかったのだ。高くから打ち付ける滝から発せられる体全体に伝わる振動と音、生い茂る木々の隙間から差し込む木漏れ日と、それを反射させて輝く水面が、滝壺から溢れ落ちた水によりユラユラと不規則に揺れている。
「…綺麗、ですね」
「そうですね…」
「でしょでしょ!!ちょー綺麗でしょっ!?ここ、実はパワースポットで」
「せーちゃん、しっ」
「えぇー……」
唖然とした表情で滝を見あげている3人は、ションボリと項垂れ市ノ瀬に頭を撫でられながら慰められている安積に気が付く事なく、そのままもっと近くで見ようと飛び石を渡っていく。
運動部で鍛えられた体感を発揮し、平面を歩くが如く身軽に進んでいく植野に手招きされるまま鈴橋、班乃と続いた。
「ーっと、どうしました?学くん」
「あっ、いえ…ちょっと…ゃ、なんでもないです」
「ん、どしたん? 大丈夫??」
「大丈夫」
周辺へと目を向け歩いていた為、突然足を止めた鈴橋にぶつかりそうになった班乃だったが、なんとか寸目で足を止めた。なにかを躊躇しているような鈴橋の様子に声をかけ、そんな2人に気がついた植野も心配の声をかけるが、そのどちらにも頭を振って答えた。
ただ、思ったよりも水飛沫が舞っていたので眼鏡が…と思い足を止めたが、それよりも興味が勝った。濡れたら拭けば良い。近づけるギリギリまで近寄ると、ひんやりとした空気と水場独特の香りが鼻につく。
離れていても感じていた振動が更に強くなり、五感の全てを、体全体を自然が包んだ。
「わぁー…気持ち良ぃー…」
「迫力、凄いな…」
「少し小さめだなとは思いましたけど、近くで見ると圧巻ですね」
各々感想を口にし、暫し並んでその景色を堪能すると、おもむろに携帯を取り出し数枚写真を撮った班乃は、更なる撮影スポットを求め流れるようにその場を離れた。
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