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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む「そう、だったのか。…わざわざ悪い。ありがとう」
「いやっ、そんな全然っ!! 苦手なのに来てくれたんだし、これくらいさせてよっ!」
『ざっ、罪悪感すごっ…(;´д`)』
鈴橋の謝罪と感謝を素直に受け取ることが出来ない…ボロが出てしまう前にと、安積は丁度見えてきた平和の大塔を指差した。
「そう!あそこの大塔の下に西洋花壇あるんだけど、どうする? 行ってみる??」
「西洋花壇??」
「そう。さっきお前が好きなんじゃねぇかって話してたんだけど、ほら、あんな感じだから」
「………ぁー」
小さく唸り大塔を見上げ
考える様に視線を落とし
悩ましげに眉を寄せ再び大塔を見上げ
鈴橋は苦悶の表情で目を伏せた。
「…い……や、今回は…いい。行かないで」
「やっぱお前でも流石にしんどいかw」
「気には…なるんだが……凄く…」
先程よりも人の増えた大塔付近の人々の多さに、今の状態で突撃する気力があるかといわれたらー
残念ながらない…
「今日しか来られないわけでもないですしね」
「正月以外は人少ないから、なんでもない日に来てみると良いかもねっ!春とかの方が花も綺麗に咲いてるだろうし!」
「…それも、そうだな」
「じゃぁ、大トリの滝行きますかー!!」
気を取り直し元気良く大塔前を素通りする演劇部組と共に、後ろ身引かれながら歩き出した鈴橋だったが、やはり興味がその歩みを止めさせた。
「….やっぱり、行ってみる?」
まるで誰にも譲れない定位置というように当たり前に隣を歩いていた植野が、名残惜しそうに大塔を振り返る鈴橋の耳元でひっそりと問いかけた。あわよくば、今度はトラブルなく2人でゆっくりするのも悪くはないとの思いがあったのだが…
「……いや、いい。この後滝行って、また人混み通って蜂蜜屋行かないといけないんだし…」
「良く覚えてるねw なんだかんだ付き合ってあげる優しい所、好きだなぁ」
「優しい…いや、なんか、優しさというより義務感に近い、気がする」
「なんの義務感っww」
あの日、クリスマスや正月は1人で過ごすと言った時の、らしくない安積の表情が初詣へと駆り立てた。後悔はしていない。来て良かったと思う事だってあった。
でもだからといって、安積の為だと恩着せがましい事を言うつもりはない。
1人寂しく過ごさせたくないと思ってしまったから。安積が望んでいるであろう願いを、叶えてあげたいと感じてしまったから。
その自分の思いの為であり、なにより自分が1度決めた事を妥協する事もしたくないというのが1番大きい気がする。
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