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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟むしかし、この長く続いている様に感じられる沈黙を破ったのは、睨み合う両者でも、植野でも、傍観者達の誰かでもなかった。
「ごめんなさいっ!!」
自分の両脇を支える鈴橋の腕を震える手で掴み、ギュッと目をつぶり、出し得る限りの声量で叫び声を上げた、誰よりも小さな子供だった。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!!ぶつかってごめんなさいっ!!ごめんなさいしなくてごめんなさいっ!!怖い事してごめんなさいっ!お母さん達がごめんなさい出来なくてごめんなさいっ!!」
「………」
「だからっー」
『おっ、お母さん達がって…w』
余程の恐怖なのだろう。指が白くなるほど力を込め、声も震えている。親の行動も含め謝る子供に思わず笑いそうになる植野とは違い、鈴橋は眉1つ動かす事なく、その顔に冷ややかさを張り付けたまま、そっと体を持ち上げると浮御堂の上へと降ろした。
降ろされた安堵からか恐怖に引きつった子供の表情は直ぐに緩み、大粒の涙を流しながらごめんなさいと繰り返す。そんな子供の肩に手を乗せ自分の方へと向かせた鈴橋は、その両頬に手を当て顔を上げさせると、しっかりと目線を合わせた。
「違う。君が謝らないといけないのは俺じゃないだろ」
「………」
その言葉に瞬きを繰り返し、ボヤける視界をなんとかなんとかクリアにすると、植野へと顔を向け、言葉を詰まらせながらごめんなさいと小さく呟いた。
「うん、良いよ!大丈夫大丈夫っ!ちゃんとごめんなさい出来て偉いな! 次からはちゃんと気を付けるんだよ?」
完全蚊帳の外になっており、もはや傍観者気分で居た所で急に向けられた話題に少し驚いた植野だったが、直ぐに笑顔を作り子供の側にしゃがみ込むと頭を優しく撫でた。
すると涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔に微かながら笑みを浮かべた子供は、再び鈴橋へと顔を向ける。どうやらこの子は、まだ素直に話を聞き入れられる心はあるようだと一安心するも、問題は親の方だ。
今だに口を開かず、不貞腐れた顔で成り行きをただただ見ている両親に、鈴橋は内心溜め息をつきつつ子供の両肩に手を添え再び視線を合わると、わざと印象つける様に間を開け、聞き取りやすいようハキハキとした声で口を開く。
「いいか? 駄目な事した時は、ちゃんとごめんなさいするんだ。じゃないと誰も優しくしてくれないし、友達も居なくなる。嫌だろ、そんなの」
「うん」
「じゃぁ、次からは大丈夫だな?」
「うんっ!」
肯定の言葉を聞くと、鈴橋は冷ややかだったその顔に漸く笑みを作った。
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