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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む子供の腕を掴み引き寄せると、静止する間もなくその両脇に手を滑り込ませ、素早く持ち上げそのまま池へと向きなおるとー
欄干へと乗せた。
一応脇を手で支えたままではあるが危険な事には変わりない。少し常識を疑う人達ではあるが、どうやら自分の子供を大切に思う気持ちはあるらしく、慌てたように声を張り上げた。
「ちょっと、あんたなにやってんのっ!?」
「手ぇ離せよっ!!」
「良いんですか? 離して」
「そうじゃねぇだろっ!降ろせって言ってんだよ!」
「…まぁ、良いですけど。でも何をそんなに焦ってるんです?」
慌てる両親に対し、無情にも子を心配するそんな親の言葉が理解出来ないとでも言いたげに、鈴橋は首をかしげた。子供は降ろさぬまま無表情に問うてるのが余計迫力に拍車をかけている。
しかしこれは理解出来ないのではなく、わざと惚けているだけなのは誰にでも分かる程明白で、案の定両親の顔に怒りの色が浮かぶ。
そんな彼等に臆することなく何度か目をしばたかせると、見下す様に首を傾けうっすらと笑みを作った。
「はぁ。でも “ 子供のやること ” ですし、ムキになることないのでは?ただちょっと遊んでるだけですよ」
支えられているとは言えいつ落とされるかも分からない状態で、池を目の前にし怯え凍った顔をする子供と同じくらい、冷ややかな笑みで淡々と言い放つ鈴橋に両親がグッと言葉を詰まらせた。
『煽るなぁ…がっくんw 』
収集の見えないまま、当事者の筈が完全に蚊帳の外にされ、若干寂しさを感じつつ眺める植野を構うことなく両者の言い合いは続いていく。
「しっ、小学生と同じ目線で言ってんじゃねぇよ!お前頭おかしいんじゃないのかっ!?」
一瞬言葉をなくした両親ではあったが、負けじと口を開くも、しかしそこからでた言葉は謝罪ではなく、この場を納めるにはあまりにも不釣り合いな言葉だった。そして彼等とは対照的に冷静さを張り付けたままの鈴橋とのキャッチボールは続いていく。
「あぁ、それは確かに。一理ありますね」
「分かってるならさっさと降ろしなさいよっ!馬鹿なんじゃないのっ!?」
「降ろす…なぜ?」
「危ないだろーがっ!!」
「そうですね。駄目なんですか?」
「駄目に決まってんだろっ!?」
大人2人の煽るような言葉に眉1つ動かすことなく肯定の意を示した鈴橋は、少し考える素振りをしてから彼らの目を真っ直ぐと見据えた。
「決まってる、ですか。なら故意ではないにせよ、誰かにぶつかったり危険なめに合わせるのは駄目な事だと、そうしてしまった時には謝らないといけないと教えてあげないんです?ちゃんと教えないと、俺みたいな頭のおかしい馬鹿なガキになって、貴方たちみたいに謝れない大人になりますけど、それは良いんですか?」
「………っ」
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