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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟む市ノ瀬が現在進行形で聞き入っているが、次の人が来れば退くだろう。
と思ったのだが、悪戯に笑ったまま退く事なくその場にとどまり、予想外に至近距離となってしまった顔に反射的に背中を仰け反らせた。
「おまっ、譲れよ人にっ!?」
「あぁ、悪い悪い。あまりにも綺麗な音だったから、つい」
「嘘つけっ!!」
「はいはい、いちゃつくなら人の居ないところでしてくださいねー」
「どっからどー見てもからかって遊んでるだけでしょコレっ!!?あっきー目ぇ悪くないっ!?」
「おかしいですね。2.0あるんですけど」
「無駄に良いなっ!?」
慌てて市ノ瀬へ苦言を申すも楽しそうに笑うだけでまるで糠に釘だ。場所をあけ渡され音を楽しもうと耳を当てるも、心臓の方が煩すぎて楽しむどころではなくなってしまった。
『もうっ、折角来たのに台無しじゃんっ!!ホントにもうっ…ホントにもうっ!!いつもいつもっ!!』
しかしこう言う所も嫌ではなく、むしろ少し嬉しいと思っている節があるのも事実で…
『だって本当に楽しそうにしてんだもんっ!質悪すぎっ!』
「いちゃついてるとこ悪いんだが」
「がっくんまでそれ言うっ!?」
「次行かないのか?」
「あっ、行く行くっ!次はねっ…!」
帰ろうと言われなかったことに内心驚きを感じつつも、美術館前の階段を駆け降り少し進んだ所で手招きをする。招かれるままに集まった一行に笑顔を向けた安積は目的地へと指を指し示した。
「あそこっ!!」
「…分かった。じゃぁ、行こう」
そこは道中の飛び石からも見えていた所で、恐らくこの後向かうだろうと鈴橋も予想はして居たのだけれど…。
『やっぱり行くよな…あそこ…』
遠くに見えている小さな建物を視界に捉え気が重くなる。でも、折角ここまで来たのだし、なんだか少し、ほんの少しだけ楽しくなってきた。
…気がする。
来た道を少し戻り、指差された建物を目指し進んでいく。道中池を見渡せる休憩場所を発見し、腰を下ろしたくなる気持ちを押さえつつひたすら進みー
「浮島到着ーー!」
「いや、島じゃねぇだろ」
「浮御堂って言うんですよ」
漸くたどり着いた一行の目の前には小さな小屋が浮かぶ様に池の上に建てられており、公園最奥とあってか人は少ない。それでも足を運ぶ人は絶えず、緩やかに入れ替わり立ち替わりしている。
「思ったよりも狭いな」
「でもこのコンパクト感落ち着くねぇー」
「ってか柵低くね?」
「落ちないで下さいね」
「…俺より安積だろ」
「なんで俺っ!?」
「そうですよ。安積より睦月の方がよく転けるんですから。気をつけてくださいよ?危なっかしい」
「えっ、意外っ!そーなの??」
「………もう良いだろ、その話題は」
「図星か」
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