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- 27章 -
- 謹賀新年-
しおりを挟むそれでもなんとか両親が向かえに来た所で子供と別れ、今度は総門ではなく脇道を通り大本堂付近まで来ることが出来た。
死に物狂いで人混みを進み、迷子を届けるため折角進んだ人混みを逆走し、今度は班乃達と合流する為再び人混みに舞い戻り、そんなこんなで大本堂付近まで鈴橋と共に来られた事に奇跡を感じてしまう。
「お疲れがっくん!ごめんね、付き合わせて」
「…いや、いいよ別に。放ってなんて置けないだろ」
「それでも!またここまで一緒に来てくれてありがとう!疲れたでしょ?大丈夫?」
「……別にお前の為に来たわけじゃない…し、大丈夫だ。これくらい」
『全く大丈夫な顔じゃないけどっ!? …でもそっか、そうだよね。がっくんも楽しみにしてたって言ってくれてたもんね…』
今にも倒れそうな顔をしながらも気丈に大丈夫と口にする横顔がなんだか微笑ましく思えてしまう。
クレープ屋の行列でさえも渋るくらいなのに、それ以上の混雑が容易に想像できる初詣に来てくれたくらいだ。
言葉通り鈴橋自身も楽しみにしていたのには違いないのだろうし、それに…
お前の為じゃないと言いつつも、寝正月と言った自分に気を使ってくれたのも間違いじゃないと思う。
「がっくん!」
「なんだよ?」
「大好きっ!!ありがとっ!!」
「………」
その告白に返答する事はなくただただ疲労と呆れを色濃く浮かべた鈴橋は安積を一瞥し、小さく溜め息を着くと大本堂を見上げた。
「それで、どうする?」
「え? あっ、あぁ…うーん…。合流は難しそうだよね…折角皆で初詣来たのになぁ」
「……良いんじゃないか?ここからでも」
「ぅん?」
「別に信じてる訳じゃないけど神様だって良い行いは見てくれてるだろ。賽銭しなくても許してくれる…と、思う…多分。皆でって事は残念だけど」
「…ここからお参りするってこと?」
「そう」
『そんなこと、考えてもみなかったな』
鈴橋と同じように大本堂を見上げ、その神々しさに感謝も捧げずお願い事するなんてそんな図々しく罰当たりなことをしても良いのだろうかと頭を過ぎる。
「俺と2人だけになるのは申し訳ないけどな」
「なんでよっ! がっくんと一緒なのも嬉いよっ!でもさぁ…怒られないかな?神様に」
「そんな心の狭い神なら感謝するだけ無駄だろ」
少し口は悪いけれど、これは鈴橋なりの慰めの言葉なのかもしれない。申し訳なさや引け目は拭えないが、それでも、それよりも、目の前で自分を大切にしてくれる人を大切にする方が安積にとっては大事な事に思えた。
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