905 / 1,055
- 26章 -
- クリスマスおまけ① 睦×聖 -
しおりを挟む意識は完全に市ノ瀬からそれており無意識に見つめ続けてしまっていた恥ずかしさに安積はパッと視線を前に移した。
「……あの、睦月?」
「なに?」
「手…」
「あぁ、危ないと思って」
知らず知らずの内に人目も憚らず腰に回されていた手に言及すると何もなかったかのように離れていく。端から見れば、腰に手を回されジッと見つめているなどという居た堪れなさすぎる姿になっていたと思うと羞恥心で顔が赤くなるのを感じるが…
少しだけ寂しい気持ちも沸き上がってしまうのがなんとも複雑な所だ。
帰宅後そんな気持ちも吹き飛ぶ程に2人きり盛大にクリスマスを祝い、幸せムードに包まれたリビングには2人の屍が転がっていた…。
「あー…幸せ…食い過ぎた…」
「……暫く節制しないとなぁ…太る」
「見てみて、めっちゃ食ったけどあんま腹出てないw 筋肉ついたかも!」
「……ほんとだ」
「ちょー、まってまってっ、くすぐったいww」
並んで寝っ転がりながらスッと服の中へと潜り込んだ手が優しく腹筋を撫でる。一瞬焦り茶化して返したのも束の間、予想に反しその手は動きを止めじわじわと伝わってくる体温が心地良い。
しばしその温もりを堪能していたのだが一向に動きを見せない手にどうしたのかとソロソロと市ノ瀬へと視線を移すと…
『…あれ、もしかして』
薄い目蓋が眼球を覆い隠し、綺麗な睫が行儀良くお辞儀をしていた。
「…睦月?」
「………」
「ぉーぃ?」
「ぁっ、ぁあ……一瞬落ちたわ」
自然と落ちた瞬の眠りから目覚めると、開眼1番、真隣に寝転び自分の名を呼ぶ恋人の姿が目に入る。
『…あぁ、良いな、こーいうの』
押し寄せる幸せに堪らず安積を抱き寄せギュッと力を込めた市ノ瀬は、再びその手から力を抜き肩におでこを預けると再び睫を落とした。
「眠い?」
「……お前と引っ付いてるとムラッとするんだけど」
「おい、選べ言葉」
「でもなんかホッとして眠くなる」
「……そ、そう?」
『どうしたっ!?珍しく甘えん坊だなっ!?』
向かい合うように体を横向きに起こし市ノ瀬の頭を抱き抱えると、相当眠いのか抵抗するでもなく大人しく収まり静かな呼吸を繰り返している。
「ねぇ、きょう、帰る?」
「……いや、明日帰る」
「そう、分かった。ちょっと待ってて」
すっぽりと腕の中に収まる頭を2度程撫で束の間の名残惜しさを振り切り立ち上がった安積は寝室へと向かい、敷き布団を両手に抱えると再びリビングへと戻った。
「ごめん睦月、ちょっと避けて」
「……え、なに?」
「今日はこのままごろ寝しよう!怠惰を貪ろうw」
「怠惰って…」
「脳が震えるーww」
「…黒い手に捕まるのは嫌だなぁ」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる